勇者と魔王の異世界放浪記

@etoranz

第1話 勇者vs魔王 最終決戦

『ついにここまできたな、待っていたぞ勇者よ!』

扉を開け玉座の間に辿り着くとそこには漆黒の衣装を身に纏った魔王が待ち構えていた。

『貴様と闘えるこの時を待ち侘びていたぞ!』

そう言うと魔王はより一層強いオーラを放った。

ここまで、仲間と共に数々の強敵を打ち倒してきた。だからこそ分かる。こいつの強さは本物だ。今まで出会ってきた誰よりも強い。背筋が凍るような感覚がする。

『どうした?かかって来ないのか?』

だがここで怖気付いてはいられない。ここで俺が負ければ国も、仲間もみんな滅ぼされるだろう。一呼吸し、歩を進め、剣を構える。大丈夫、俺は負けない。俺の強さは俺が一番良く知っている。

 睨み合いが続く。まるで永遠にも思える時間、静寂。耳に入るのは自分の脈だけだ。

刹那、動いたのは魔王。オーラを纏った強力な拳の一撃。だがそれを真正面から受け止め迫り合う。

『ほう。我の一撃を受け止めるとは、お主中々やるな』

『伊達に死戦は潜り抜けちゃいないぜ!』

二人の攻撃がぶつかり合った余波で魔王の被っていたフードが取れる。そこに現れたのは、金髪碧眼の綺麗な顔立ちをした…女!?いや、最初高い声だなぁとは思ったけども!ってかオーラが凄すぎて途轍も無く大きく感じていたけど良く見るとちっさいな!

『ふっふっふ!我と対等にやりあえる者が現れて嬉しいぞ!久々に昂ってきたわい!』

そう言うと魔王は飛び下がり距離を取ったあと、何かを手の中に溜める様な動作をし始める。

 俺は何を考えているんだ!相手は魔王だぞ!見た目なんかに騙されるな!

余計な考えを振り切るように、今度はこっちから攻める。魔王を中心に強大なオーラが溜まっていくのを感じる。何をする気かはわからないがあんなのを放たれたらヤバい事だけは分かる。

『させるかよ!』

魔王に向けて剣を振り下ろす。

『甘いわ!』

まだ溜まりきっていないであろうオーラをこちら側に向けて放ってきた。

そして剣とオーラが触れ合う。光の力と闇の力のぶつかり合い。その瞬間、雷でも落ちたかの様な炸裂音と光が放たれる。その衝撃に後方へと吹っ飛ばされる。

 目がチカチカと眩み、キーンと耳鳴りもする。蹲っていたのは数秒か、数十秒か、大して長い時間では無かった筈だ。意識がハッキリしたと同時にすぐ側に転がっていた剣を拾い上げ、構えを取る。だがしかし遅かった。眼前には闇が広がっていた。全てを飲み込まんとするほどの巨大な闇の塊。恐らくは魔王の攻撃だろう。終わった。死を覚悟し咄嗟に目を瞑る。

『なんじゃこれはぁ!』

素っ頓狂な声が聞こえて来る。いや、お前の攻撃じゃないんかい!だとしたら一体なんなんだ?考える間もなく闇の中に飲み込まれていく。まるで引力を持っているかの様に、逃げる事を許さない。

 そして視界も闇に覆われ、落ちていく様な感覚に襲われる。感覚がするだけなのか、本当に落ちているのか、それすらもわからない。分かるのは恐らく魔王も一緒にこの闇に飲み込まれているだろうって事だ。なぜなら魔王のものらしき叫び声が聞こえるからだ。その叫び声を聞きながら、俺は意識を手放した。

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