蛙の歌が

山川陽実子

第1話

「どこ行くの? 探検?」と笑う愛し子の指まだ温しあと数十分


ありがとうカラスが咥えて飛んでゆく私の悪事は消化器の中


「ねえ、あなた。浮気してない?」「してないよ」大丈夫だよもう殺したよ


「この扉開けてはならぬ」と言ったから開けずにいたのにその目はなんだ


かわいい子にごはんをたくさん用意したウツボカズラを買ってきたから


「この動画拡散されたくなかったら」わかった消せばいいのかお前を


「こんにちは。暑いですね」と声かける殺したはずの隣の奥さん


「虫けらめ」貴方はあたしに言いましたそうねあたしはカマキリだもの


懐かしいバケツの匂い水の匂い庭中の蟻を沈めた匂い


手伝ってくれてありがと。え? 帰る? なんで帰れるつもりでいるの


迷い子を探していますその昔トイレに流れていった我が子を


将来の夢は政治家立法府性犯罪者は宮刑に処す


遠くからピーポーピーポー救急車なんで我が家の前で停まるの


「また明日」無邪気に貴女はわらうのねそんな明日が来ると思うの?


かわいいねいないいないばあしてあげるいないいないばあいないいないいない


召し上がれ貴方のために作ったの貴方の好きな彼女の肉で


「ブレーキとアクセルを踏み間違った」そんな齢に早くなりたい


もしあの日出会わなかったら良かったのに父の精子と母の卵子が


大丈夫母さんも昔そうだった悪いお友達一緒に埋めよう


あの頃の田んぼは消えた帰省先蛙の歌が聞こえてくるよ


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蛙の歌が 山川陽実子 @kamesanpo

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