巫女トラップ
リトルアームサークル
第1話 プロローグ
「しっかし、この中等部で過ごして2年以上になったけど、周りの景色は全く変わらないな~」
部室の窓に肘をついて外を眺めていた、ミステリー研究部部長の
「ハイハイ、パイセンおじいさん、後でお散歩連れてってあげますからね~」
と、1個下の後輩女子、
「なんで15歳でデイケア呼ばなきゃならんのよ!」
「あれ?パイセン、それなんかの歌詞で聞いた事があるようなフレーズですね」
「2人とも、夫婦漫才はそれぐらいにしておいて下さい。ここら辺一帯は昔から
みことと同級生の男子、
出藍学院は蒼未一族が経営する幼稚園から大学院までの一貫教育施設である。
「ヤベチー、それが聞きたかったんだよ。ぶれない真面目さ、惚れちゃうぜ!」
「ちょっ、パイセン。惚れるんだったら女子の私でしょ~よ!」
みことが、頬を膨らませて抗議する。
「みこと~、現代は多様性の時代なんだよ。LGBTQにも表れているだろ」
「え!優吾先輩ってG(ゲイ)だったんすか?…なら、みことは僕のもの。…あれ?その前に僕が優吾先輩のもの…?」
真面目な矢部が、妄想トライアングルにハマりそうなので、優吾はミステリー研究部の部長として話を上手くまとめる事にした。
「俺はまだQ(クエスチョナー)かな?でも、これからミステリーの要素にLGBTQ が組み込まれるのは必然だと思うよ」
「パイセンにまたしてもやられたよ!縁側で黄昏てるおじいちゃん発言からどうして、ミステリーの多様性の考察に持って行くかな~」
みことは、かなり不満そうだ。
「助手だったら、俺がどうして変わらぬ景色の話題を持ち出したか推察しないとな、ワトソンみこと君」
「助手!そうですよね。パイセンの第1助手は私ですよね。へへへ。ワトソンみこと、了解しました」
みことの機嫌はすっかり直ったようだ。チョロいチョロ過ぎる!『チョロみこ』と優吾は心の中で呟いた。
ミステリー研究部は、優吾が中等部1年生の時に立ち上げた部活動だ。
少数精鋭がモットーの
代わりに生徒会が、生徒の学院生活に関して絶大な決定権を握っている。
生徒の権利を守護するが、管理もすると言ったところであろうか。
新しい部活動が承認されたのは、優吾の母親の仕事に依るところが大きい。
優吾の母親は今、日本だけでなく世界的にも有名なミステリー小説家なのだ。
ペンネームは
学校側や生徒会としてもそれだけ著名な作家の息子となると、何かと
当の優吾は、体育系の部活で汗を流すのも嫌だし、先輩・後輩の関係もウザかったから作った部活なので、真面目に活動する気などさらさらなかった。
だが、部活動として認められるには最低5人の部員が必要だった。生徒数が少ないため兼部もオッケーだったので、幽霊部員を4人確保してなんとかスタート出来たのであった。
そして去年、1年生で入ってきた榊みことと矢部樹の2人が、正式部員として入部して今に至っている。
「今年こそ新1年生2名をゲットして、生徒会の紐付きを解消しないといかん」
優吾は部長として、なんとも頼りない目標を口にした。
「幽霊部員って言っても、生徒会長でしょ!野球部部長と副部長で2人、料理部の部長さん。いつ見ても、パイセンの人脈理解出来ないわ」
「あれ、みことは知らないの?優吾部長のあだ名『誘爆誤爆の優吾』の由来」
「え、知らないよ!なに、ヤベチー知ってるの?なんで教えてくれないのさ!」
「いや、ごめんごめん。てっきり知ってるもんだと勘違いしてた」
「おい!まさか本人のいる前でその話をするつもりじゃないよな?」
優吾が精一杯の怖い顔でにらむが、今さらそんな事でビビる程、可愛げのある後輩達ではなかった。
「俺も又聞きなんで、そんな詳しくはないんだけどね」
「無視かい!」
「パイセンは少し黙ってて下さい」
「はい、すいませんでした」
「それは、優吾先輩がまだ初々しい中等部1年生の頃のお話です…」
「………」
春から夏に向かう季節の太陽はまだ高く、放課後の部室には暖かい陽射しが差し込んでいる。
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