水の継ぎ目

なべとびすこ

水の継ぎ目

完璧な乗り換えをする 行き先が海ならもっと完璧だった


吠えられた側の私が吠えさせた私としてすみませんと言った


沈黙の職場で自分の唇に湯気をあてても冷めていく喉


間違って懐中電灯つけちゃってるスマホ 昼間も明るい街だ


寒暖差で歪んだ自律神経の整えかたがまだわからない


メルカリで買った魔法のランプでは役に立たずにヤフオクで売る


雨どうせ止むってことはわかってる傘盗まれたことにキレてんの


相変わらず睡眠スコアは低いけど行き先が海なんで1000点


畳まれた歩道が歩道になっていくよそ行きの私も私だよ


船のある時代で晴れて島の土踏んでる奈良で買ったスニーカー


筆名を何度も聞き返されている電車じゃ届かない島に来た


雑誌とかの表紙で死ぬほど見たかぼちゃ自分の目で見てちゃんとうれしい


閉まってる店を離れて開いている店で売ってる定食を食う


ハンカチを忘れてシャツで手を拭いて乾くまで風の真ん中にいた


タイトルを読んでも意味はわからないモニュメント 島の空より青い


欲しかったジュース売り切れちゃってんな代わりの塩サイダー飲み干して


乗り換えのために一瞬降り立った岡山駅で買うきびだんご


家まではひとりの帰路だ いつだって新幹線の椅子はやさしい


平日は簡単に来て浮き足を地上につけた暮らしを進む


大丈夫、これくらいの雨じゃ消えない火 もっと降ったら傘をください

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

水の継ぎ目 なべとびすこ @nabelab00

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ