Part 2.2:Black in White
2.2:Black in White - Epi19
辺り一面は、白、白、白。
パウダースノーだろうと、粉雪だろうと、ふわふわした雪がきらきらと反射して銀世界を作り上げていようが、辺り一面は、見渡す限り、白、白、白!
真冬に入っているとは言え、目的地であろう山の中腹付近を徘徊していたセスナは、一応、無事に着陸を終えている。
滑走路とは言わずとも、ある程度だけの雪道が除雪され、平らにならされているだけの隙間のような道路だ。
セスナのパイロットはプロなのだろう。
無事にセスナが着陸した瞬間、亜美は聞こえぬ
窓から見下ろした景色は、どこを見ても雪だらけ。とてもではないが、テロリストが徘徊しているような場所にも見えない。
家もなければ、道もなし。電柱もないので電気もない。
山の中腹辺りで着陸した亜美達の視界の前には、しっかりと積もりに積もった真雪だけしかなかったのだ。
まだ、夕方になり始めたばかりなのに、もう、周囲は暗くなってしまった。
セスナが着陸した雪道には赤色のマークが残されていて、それで、パイロットはその場所を上空から確認したのだろう。
そうなると、亜美達が着陸する前に、誰かが、わざわざ、このセスナの着陸地点を作ってくれたことになる。
そうでなければ、ちょっと雪でも降れば、すぐに雪道など雪で埋もれてなくなってしまっていたことだろうから。
除雪までして?
道を作ったの?
また、新たな質問ばかりが上がってくる。
時間も労力もかけてセスナの着陸路を作る暇があったのなら、なぜ、その労働力を兄の晃一の捜索作業に回さなかったのだろうか。
亜美がアラスカ行きを強く要請したからと言って、まさか、亜美の到着を待っていたはずもないだろう。
そんな無駄な時間を費やして、人一人の命の危険を冒すはずはない――とは、常識的に言って、亜美もそう考えたい。
だが、“組織”というアンチ・テロリストを使命とする会社が、亜美と同じ考えを持っているとは、亜美も断言できない。
一体、何に重点を置き、何を最優先するのかは、亜美も全く知らないことだ。
質問ばかりが上がって、納得いかない状況ばかりが出てきて、理解できない現状に取り残されている気分で、ストレスだけが溜まる。
鬱憤だけが、溜まりまくりだ。
セスナから降りた亜美の前で、次の支給品が手渡された。
今度は、スノージャケットの下にはくスノーパンツだった。それから、結構頑丈な長いブーツもである。
もちろん、全身黒づくめ。
真っ白な大地に、ポツン、ポツンと浮かび上がる、全身黒づくめの若い二人。
どう考えても、どう見ても、あまりに奇妙な光景だ。
“組織”という会社から支給される物資のようだから、一応、その安全性は保障されているのだろう。
テロリストと戦う会社でしょう?
まさか、不良品や役立たずのグッズを奨励なんてしないはず――とは、亜美も思いたい。
長いブーツに履き替えて、フードも被れと言いつけられたので、房がついているフードを被り、顔半分は隠れてしまうほどの立襟をチャックで閉めてみた。
手渡されたゴーグルをつけると、顔も見えない、姿も判断できない、全身黒づくめの不気味な様相に見えたことだろう。
手袋は厚めでも、5本指に分かれていて、にぎにぎしてみたら、結構、動きが自由だった。
準備が整うと、クインに指示されて、亜美達はその場を出発した。
雪の中に穴を掘って突き進む――という場面はなかったが、それでも、腰まで埋もれそうなほどの高さがあり、道もない雪の中を突き進む羽目になったことは言うまでもない。
亜美の前を進んでいくクインの残した足跡を頼りに、亜美は雪まみれになりながら、前に進んでいるような状況である。
クインと言えば、スキー用のストックのようなスティックを持っていた。でも、それで、穴を掘っているわけではないから、ただ、雪の深さを確認しているだけなのだろうか。
亜美達は、今、人里離れた山のど真ん中にいる。亜美達が移動し始めてから、セスナのエンジン音と、飛び去って行く風の音が聞こえてはきたが、亜美はセスナが飛び去った場面を確認していない。
もう、周囲には誰もいない。クインと亜美の二人だけである。
もう、助けを呼ぶこともできないだろう。
大声を張り上げようが、悲鳴を上げて泣き叫ぼうが、誰一人として、亜美達の救助にやってこられる人はいない。
ドシンと……一気に、悲惨な現実が突き付けられて、命の危機に遭うかもしれないという重みが、亜美の体に伸し掛かって来たかのようだった。
「……悪く考えちゃダメよ、アミ。ポジティブになれなくても、ネガティブに考えなければいいんだから……。お兄ちゃんを見つけるまで、絶対に、前進あるのみ!」
マントラのように繰り返す亜美は、ブツブツとジャケットの襟で隠れた口元で喋っていたが、ジャケットに覆われている顔からは、左程、その呟きだって外に漏れることはない。
フードを被っているから尚更に、前を進んでいるクインになど聞こえもしないはずだった。
道のない場所を進んで、雪に覆われた場所に阻まれ、視界の先も、一体、どこまでが陸地で、どこまでが凍ってできた場所なのかも判らない。もしかして、川の上を歩いているのかさえも、判らない。
方向感覚も頼りにならなければ、地上と空間の感覚も無くなってしまった。
クインの手に持っているスティックの先には、小さなライトついていて、その灯りだけが、今たった一つだけある
亜美だって、山登りやトランピングはした経験がある。
兄の晃一は、亜美が成長する過程で色々な経験ができるようにと、亜美が子供の時から、学校の休みになると、色々な場所に連れて行ってくれたり、旅行したり、楽しいアクティビティをさせてくれたのだ。
だから、山登りだって初めてではない。
でも、道もなく、大雪に埋もれた山のど真ん中で、ほぼ遭難状態の山登りをした経験は、亜美もなかった。
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読んでいただき、ありがとうございます。体調を崩してしまい、投稿が大分遅れてしまいました。ここから、エピソードの再開です。
ขอบคุณที่อ่านนวนิยายเรื่องนี้
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