第12話 騎士団長のキウロスさん

「ただいま帰りましたー」


「おお、帰ってきたかシオンよ

いきなり飛び出して行って、探させておったのだぞ」


「すいません、お父様。

ケインに新しい許嫁ができたとアミさんから聞いていても立っても居られなくなってしまって」


「な、なんじゃとー

カイルよワシはそんな事聞いてないぞ」


この世界に来て一番お父様との関わりが多かったのに名前をしりませんでした。


「いやーそれはですね。

誤って彼らが一緒にお風呂に入ってしまって…………」


「ならばこれ以上、言及はせん」


王様は話がわかる人で助かりました。


「シオンも認めてあげなさい」


ナイス王様です。


「言われなくてもしてるわ」


「なあカイルよ最近娘の態度が冷たくなっているんじゃが、ワシはどうしたら良いのじゃ」


これは冷たいというか、この年頃の女性はこういうものです。


「わかります、家のケインも最近家族に冷たくなりました。

ここにはケインやシオン様もいらっしゃいます、私の部屋で話しませんか?」


「そうしそう」


そう言うとお父様の自室へ行かれました。

私の隣ではシオンさんとエイファさんがお喋りしています。

「お話し中悪いけど、僕の部屋で話してくれるかな?

家族の前でこんなに褒められると恥ずかしいから。」


さっきからお姉様とお母様がニヤニヤした顔で見つめてくるのです。


「あんたが部屋に入ってこないなら良いわよ」


私にまで冷たくなりました?


「ではご案内しますね」

彼女等はコロンさんに連れられて部屋へと消えていきました。

私はどうしましょう。

彼女達を助ける方法を考えなければ!

うーん、彼女達を殺さずに魔神の一部を取り出す方法……破片がそのまま埋め込まれているなら私の物質変動で動かしてとれます。

体全体に広がってる場合なら体全体を物質変動で下げれば。

これでは彼女達の体にハリが無くなる可能性もあります。

まあ取り敢えずは一部分の時だけを考えて、物質変動の練習をしますか。

そう思って自室に向かいました。


「あんた何勝手に入ってきてんの?」


「えっと、僕の部屋だからだけど?」

普通、通されるのは客室とかじゃないですか?


「出て行ってくれます?」


エイファさんの顔が怖いです。

「わっわかりましたー」

えっあれホントに私の部屋ですか?

なんか飾り付けみたいなのがされていたような…

私の部屋がだめなら他の部屋に…って駄目です、ただでさえ忙しそうなメイドの方々に掃除を追加するなど、社畜心が許しません。

そうです、あの転生した牢獄なら何をしても許される気がします。

おっとその前にお父様に外出の報告をしないとまた心配されそうです。



「失礼しても良いですか?」


「入れ」

「何か用かケイン」


「外出してきます。」

これでいいですかね?


「どこに行くんだ?

それと、何時に帰ってくる」


「カイルよ、この年頃の少年は秘密にしたいこともあるのじゃ

外出を許可してやりなさい」


「許可する。

しかし、騎士団長のキウロスを連れて行け」


「分かりました」

あの牢獄がバレては厄介ですが、まずそのキウロスさんが信じられるお方か私が見定めましょう。

「失礼します。」


「「いってらっしゃい」」


「はい、いってきます」

このやり取りは懐かしいですね。

両親が亡くなる前までは毎日言っていました。

というか騎士団長のキウロスさんはどこにいるのでしょうか?

私がキョロキョロと周りを見回していると一人の騎士が近寄ってきました。


「ケイン様どうされたのですか?」


この人に聞いてみましょうか。

「キウロスさんに用があるんです。」


「キウロスは私だよ。

ケイン様変わられましたね。」


みんな口を揃えてそういいますね。

「あれは僕の黒歴史だよ」


「それは申し訳ない」

律儀に頭を下げております。


「頭をお上げください、別に気にしていませんから。」

みんな私に頭を下げます。

少し気持ちがいいですが、頭を下げる人の気持ちがわかるので、罪悪感を感じてしまいます。



「ありがとうございます。

そういえばケイン様が私に何の用ですか?」


「お父様に外出をするならキウロスさんを連れて行けと言われてしまって

それと敬語は辞めてください、僕が偉いみたいじゃないですか、偉いのはお父様であって僕じゃありません」


「分かったよケイン君

それで、どこに行くんだい?」


彼を試すならギリギリのラインを攻めましょう。

「誰にも話しませんか?」


「わ、分かりました。」


「冒険者ギルドに行きます。」

神様に教えてもらいましたからね、しかも冒険者とは危険な仕事だと思うので十分報告の対象になるはずです。


「ケイン君はまだ12歳なのですぞ」


「とにかく、この件は内密にお願いしますよ?

例え僕の家族だとしてもです。」

「それと、敬語が抜けていませんよ」


「分かったよ、ケイン君はとんでもないことを言うね。

お兄さんがこんな事知ってて良いのかい?」


「はい、直感で信用できます。」

まあ、嘘ですけど。

嘘ついてすみません、キウロスさん。


「冒険者ギルドに行くということは冒険者登録をするのかい?」


冒険者登録とはなんでしょう。

でも重大な事のようですので、しときましょうか。

「そうするつもりです。

僕は場所が分からないので案内してもらっても良いですか?」


「もちろんだよ。

ケイン君が敬語を使わないでと言ったのにケイン君が使うのはズルくないかい?」


確かにこれはフェアではありませんね

「じゃあ僕も敬語は辞めるよ」


「じゃあ行こうか」


「うん」

あとは、お父様に報告するかしないかを監視するだけですね。

まあポセイドン様に言われて興味もありましたし、冒険者登録?をしてみましょうか。


「何故ケイン君は冒険者登録をしようとしたんだい?」


マズイです。冒険者登録が何か分からないと答えられない質問です。

ポセイドン様、説明少なすぎません。

またポセイドン様に言うことが増えましたね。

ここは想像で答えましょう。

あまり、大人が言うような理由を言うと不思議がられます。

「カッコイイから」

子供なんてこんなものでしょう。


「私の5つ下の弟もよくそう言っていました。」

過去形ということは…。

地雷を踏みましたね。

「フィンは昔から病弱でいつも床に伏せていました。

ある日フィンの体調が良くなりました。

日頃からフィンは冒険者になりたいと言っていたので冒険者ギルドに連れて行ってやりました。

それが間違いでした。

私は調子にのってフィンに『冒険者登録をしないか?』といって遠慮するフィンをなかば強引に冒険者登録を済ませました。

私はクエストを受けるつもりは無かったのですが、フィンがクエストをみつめているのを見てゴブリンのクエストを受けることにしました。

当然子供二人で勝てるはずもなく、私は助かりましたがフィンは、フィンは私を庇って死にました。

だから同い年ぐらいのケイン君にはあまりお勧めはしないよ。」


結構重い話をしますね、前世何度も旅行の幹事をしまして話を盛り上げるのは得意なはずですが言葉はでてくるのは涙だけです。

この年になると涙脆くなるのですか?


「け、ケイン君ごめんよ

怖い話はやだよな。

今度は楽しい話をしようか」


「怖いというわけでは…」ッグス

「キウロスさんの気持ちを考えると涙が…」

キウロスさんを困らせてしまっています。

このままではキウロスさんが大臣の息子を泣かせているようにしか見えません。

泣き止まなくてはと思うのですが、次から次へと涙がこぼれ落ちます。


「わ、私の気持ちを考えてだと!」

「この前のケイン様ならありえない、大臣に報告しなければ」


「それはしないでください。

お父様に何故そんな話をしたかと聞かれれば冒険者登録をしたことがバレます。」

ホントに信用できるでしょうか


「そうでした。すいません

って着きましたよ。」


敬語が気になりましたが、それよりも、いかにも年季入ってますみたいな冒険者ギルドの方が気になります。


「どうかしたの?」


「いえ」

それから無事、冒険者登録をして家に帰りました。







_________________

これから毎日0時投稿で固定します。




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