たとえ喋れない君でも

ウレシノハラ / 狂咲林檎

第1話

「ごめんね……またこんなことになっちゃって……けほっ」

「気にしないでくれ、君の身体のことは僕だってよく知ってるつもりだ。今は大人しく、安静にしていてくれ。」


僕は七海 ななみ わたる大学生2年生になったばかりのただの平凡な男だ。

そして僕には可愛らしい彼女がいる。

彼女の名前は山瀬 やませ はじめ

なんでお前みたいなやつに彼女がいるんだと聞かれると僕だってなんでかはわからない。

でも、僕は彼女のことを狂おしい程に愛している。


「ほんとにごめん……最近はデートもろくに出来なくて……」

「気にするなって、今は身体のことだけ考えてくれ。」


一は大きな病気をしている。今はほぼ2ヶ月周期で入退院を繰り返している。

そんな一はココ最近謝ってばかりいた。

一のお見舞いに来るのは基本的に僕しかいない。

一は僕と同じく両親が既に他界しており1人で病気と闘っている。


「……大好きだよ」


そう言って頭を撫でると一は嬉しそうに頬を緩ませて笑った。


「ありがとう、私も」


そうして僕はおよそ4時間の面会を終え、帰路に着いた。

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