刀鍛冶師のリスタート~落ちこぼれの英雄譚~
みなみなと
第1話花咲く死地
真っ赤な花が咲き誇る幻想的な場所。そこで青年は人としての生涯をたった今、終えようとしていた。否、生き抜くのを諦めようとしていた。
これを運命と言うならば、残酷で非道で無情だろう。今まで仲間だと思っていた人達に、身勝手な天秤にかけられ見捨てられたのだ。相談もなく、悩むこともなく。当然、拒否権だってなかった。
共に戦うのを拒み、一人の犠牲で済むなら、と。コイツらの変わりは居ないが、刀鍛冶師の代わりならいくらでもいると。
大して感情も籠ってない謝罪だけを引き攣った笑顔と共に残して。
──声が聴こえる。
破れかかった鼓膜が微かに捉える醜悪でおぞましい唸り声。朦朧とした意識の中、掠れた視界に写る魔獣達は、鋭い眼光を向けている。
もう逃げる余力も青年にはなかった。十分に戦ったのだ。物語るように、辺りには魔獣の死骸が幾つも転がっている。
──だが。だが、生きる希望を持つ事さえ許さないと、魔獣はその数を増やしていった。
「はあ……はあ……」
息を整えたくても、折れた肋が肺に傷を負わせてる為に出来ない。吐血は止まらず、アドレナリンを凌駕した激痛。そして必然的に陥る酸欠が青年を正常な判断から遠ざける。
ふと視界に入ったのは地面に刺さった一本の刀。青年の固有スキル・
“ここで終わっていいのか”と。
「そう、だ……終わっていい筈が、ない」
青年には成すべき事があった。この刀を遺してくれた父の不可解な死。その真実を見つけ出す事。その為に青年は鉄を叩くのではなく刀を振るう事を決めたのだ。
「ゼェ……ゼェ……」
震えた手で刀を握り、裏切り者が落としていった布切れを使い刀と手を縛りつける。
「死ぬつもりでこい、犬っころ」
青年は、魔獣にも劣らない野生じみた鋭く黒い眼光を穿つ。宿したそれは生き抜く為の渇望ではない。紛れもなく、青年の瞳に宿るそれは、生への
刀鍛冶師のリスタート~落ちこぼれの英雄譚~ みなみなと @minaminato01
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