第19話 彼女とチントレ♂
話は十分ほど前に遡る。
***
「骨盤底筋を鍛えよう!」
VIP用個室に入ったところで麻栗が口にしたのは、そんな言葉であった。
「骨盤底筋?」
当然、俺はなんのことだかよく分からない。
そんな俺に対して、麻栗は滑らかな口調で説明をしてくれる。
「骨盤底筋――またの名をPC筋っていうんだけどね。主に膀胱や腸を支えている筋肉のことなんだよ! ここを鍛えると、男性の性機能向上に色んな効果があるんだって!」
「へ、へぇ……」
「ちなみに図解で説明すると、筋肉の場所的にはこんな感じみたい」
そう言って、麻栗が自分でスケッチしたらしい断面図をスマホで俺に見せてくる。
現役のイラストレーターだけあってめちゃくちゃ上手いイラストだが、それに対して俺は「お、おう……」としか反応が返せない。っていうか、この場合それ以外にいったいなにを言えばいいんだ? 状況に対して、あまりにも理解が追い付かないよ。
「それでね、このPC筋、腸や膀胱を支えるためにあるものではあるんだけど……役割のうちのひとつに、男性器に血液を留めておく働きもあるらしいの。だからこのPC筋をしっかり鍛えることができれば、理論的には聖くんのおち〇ちんは長時間の勃起を維持し続けられるムキムキマッチンチンになれるっていうことだよ!」
「そ、そうか……」
「それで、このPC筋を鍛えるための筋トレを調べてきたから、聖くんにはそれをしてもらおうと思います!」
「う、うん……」
「……? どうしたの聖くん? さっきからなんか元気がなさそうだけど……わたし、なにか間違ってること言ってたかな?」
「そ、そんなことはないと思うぞ」
麻栗の言っている内容が間違っているとか間違っていないとか、そういうのはこの際些細な問題であった。
間違っているのは麻栗じゃない。
状況だよ。
何が悲しくて彼女と二人でスポーツジムにやってきて、勃起力トレーニングなんぞをしなければいけないのだ。
しかもなんか麻栗はガチだし。よく分からなかったけど、多分鍛え方としての理屈もそんなに間違っているわけじゃないんだろう。
だけど状況がすべてを台無しにする。
なんでだ。
どうしてだ。
俺はなぜ! こんなところで! 彼女から『勃起力向上メソッド』の理論を聞かされているのだ!
俺は……俺はこんなことを麻栗としたくて、彼女に告白したわけじゃないのに!
「じゃあ聖くん! 一緒にチントレ、頑張ろうね!」
そう言って、麻栗がギュッと作った握りこぶしと共ににっこり笑いかけてきた。
あ、可愛い。
「おう、頑張るぜ!」
麻栗がめっちゃ可愛かったので、付き合ってやってもいいかなって思いました。まる。
しかしそんな俺の考えは、麻栗の次の発言で再び思い切りぶち壊されることとなる。
「じゃあ聖くん、ズボンとパンツ脱いで!」
「……え?」
「ズボンとパンツ脱いで!」
俺に向かってそう言いながら、麻栗がバッグから色んな道具を取り出していた。
薄手のゴム手袋に、ローション、卵っぽい形をした不思議な道具等々と……。
「ちょっと……ちょっと待って? あのね、麻栗、一つずつ確認させてってもらってもいい?」
「ん? なぁに聖くん?」
「あのね……俺は今から、そのPC筋? の筋トレをさせられるんだよね?」
「うん!」
いい返事だ。可愛い。でも、でもさ……。
「……筋トレをするのに、なんでズボンとパンツ脱がないといけないの?」
「ああ、えっとね。PC筋を鍛えるには、お尻の穴を締めたり緩めたりする運動が効果的なんだって」
「へ、へぇ……でもそれだけなら、わざわざ脱ぐ必要とかないんじゃないかなぁ……?」
「え、でもちゃんと締めたり緩めたりできてるのかどうか、直接触って確かめてあげた方が確実じゃない?」
待ってまた突っ込みどころが生えた。
「……なあ麻栗。念のため聞くけど……いやほんとは聞きたくないけど………………………………………………直接触ってってどういうこと?」
「? そんなの決まってるよ。お尻の穴に指を入れてる状態で筋トレしたら、聖くんがちゃんとできてるのかどうか分かるでしょ?」
いやそうかもしれないけどさ。
確かに言ってること間違ってないかもしれないけどさ。
なんかこう、話を聞いただけで股の間がスゥってなったんですけども。
ねぇ。ちょっと。麻栗さん。ねぇねぇねぇ?
「あ、人の目を心配してるなら大丈夫だよ! ここ個室だし、そのためにVIP会員登録だってしたわけだし!」
……そこじゃなくてさぁ。
「あとね、ちゃんと手袋とローションも用意してきたの! これなら初めてでも痔になる心配する必要ないよ?」
……そうかもしれないけどさぁ。
「あ、ちなみにこれはわたし用のやつね。ジャジャーン、膣トレボール! わたしも一緒に膣トレ頑張って、聖くんのこともっとたくさん気持ちよくしてあげるんだ♡」
……そっかぁ。
「レッツ☆チントレ!」
***
――というわけで。
俺は今、普段暮らしている街並みを窓越しに眺めながら、虚無顔で尻穴を締めたり緩めたりしている。
麻栗の指の存在を、そこにある確かな異物感を感じ取りながら、締めたり緩めたりしている。
ああ、こうして眺めていると、俺の住んでいる街はけっこうゴミゴミしていたんだな。こんな風にしてちょっと距離を取ってみなければ、案外分からないこともあるもんだ。――現実逃避気味にそんなことを考えながら、締めたり緩めたりしている。
「締めて~」
麻栗にそう言われて、締める。
「緩めて~」
麻栗にそう言われて、緩める。
「そうそう、上手上手♡ さすがだね聖くん、かっこいいよ♡」
俺の知ってるかっこいいとは違うな、と思いながら、締める。緩める。締める。緩める。締める。緩める。締める。緩める。
「たまにはこんなデートもいいね、聖くん♡」
本気で言ってそうなのがちょっと怖いなって思いました。まる。
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いつも読んでいただきありがとうございます!
実は先日、本作を読んだ友人に、「これってぶっちゃけエ〇本だよね?」と言われました。
友人のその言葉で、私はある可能性に思い至りました。読者の皆様方の中にも、もしかすると同じような感想を抱かれた方もいらっしゃるかもしれないな、と。
というわけで色々端折った、うっふ~ん♡ なシーンを今後fantia等で公開させていただく予定です!
いつ頃になるかは今のところ未定ではありますが、早ければ2,3ヶ月以内ぐらいからは稼働開始したいと考えております!
また、fantiaでの公開にあたり、コメント欄等で「読んでみたいうっふ~ん♡ シチュエーション&プレイ」を書き込んでいただければ、気まぐれで私の方でそれに応じたプレイを執筆&fantiaにて公開させていただこうかと考えております!
募集は作者Twitter(https://twitter.com/makkux)でも受け付けておりますので、直DMしていただいてもけっこうです~。
紳士(とそしてもしかしたらいるかもしれない)淑女の皆様方、色々奮わせてご応募ください~。
fantia公開したらまたあとがきで報告するね☆
(なんの募集もなければこの企画はひっそりと終了します)
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