イマダナオ
未田猶
靴下は割と消耗品らしい
私が一人暮らしを始めたのは、1年前ぐらいの事だ。
半ば家を強制的に追い出され、一年が過ぎようとしている。幸い学生の頃の貯金が幾らかあるが現実はそう甘くない。
下着と洋服を一式詰めたボストンバックと口座の数万円が私の全財産である。これから一人で生きて行かなければならない。来月には、二十歳になる私には有り余るだけの時間しかない。周りの友人たちは恋人や将来の夢など私の現実とは、遠く離れた話をしている。
今何をしたいかと聞かれるとその時の私は何もしたく無かった。唯、現実に目を背ける事で背一杯で、『周りとは違う』という勘違いをした痛い奴だった。何も特別ではないのに。
最初にこの生活を始めて知ったことは、靴下は割と消耗品だということだ。私は日々の生活費を稼ぐためにコンビニの夜勤を始めた。
元々、夜型人間の私にとって夜働く事は苦ではなかったが、新たな場所でコミュニティを作る事がこんなにも難しいと言う事を痛感した。コンビニの夜勤では大々が外国人で、今まで私が持っている価値観や言語がここまで通用しない事に恥ずかしさすら覚えた。
ある日、私は歳の近い外国人と大喧嘩をした。喧嘩をした理由は、今はもう忘れてしまったが、大したことでは無かったのだろう。
唯、彼にも働く理由があって私にも働く理由があって、そんなどこにもブツけられない窮屈な気持ちがぶつかってしまったのだ。
その日、私は靴下に穴が空いている事に気がつく、踵の部分に五百円玉ぐらいの大きさの、履ける事はできるがひどく見窄らしい。そんな靴下の穴を見て私は、彼と喧嘩した後悔と私は何も特別ではないという事を理解し涙が溢れた。
あぁ、明日は新しい靴下を買おう。そして私は、彼に寄り添う事にしよう。そんな事を考え、6畳一間の寝床に倒れるように眠る。
明日のバイトに向かうために、
イマダナオ 未田猶 @nao_imada
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