第47話 暗黒への扉

【涼ちゃん、逃さないよ!ちゃんと話して!】


【るい、解ったから、さきのことは責めないでよ、俺が無理言ってるんだから。頼む!】


【…状況による。さきが勝手に涼ちゃん利用してるなら話は別。涼ちゃんから言ったのなら仕方ないけどさ】


どうするかなー、納得してもらえるかな。

じゃチュ😚って、…かわすのか?るい。


避けられたよ、ショック!始めてだよ。


【あのさ、るい、避けることないじゃん…】


【そんな誤魔化しのキスなんて嫌だ!】


まぁ、そりゃそうだね。ストレートに行く!


【明日か明後日には最大級ダークホールに包まれる。それは世界の終わりかも知れない。そうでなくても過去にないほどの大災害になる】


【それ、確定なの?】


【さきの予測では間違いない…って残念だけど】


【じゃ、赤ちゃんの未来は?】


【…解らないよ、そのためにさき達は必死に】


【涼ちゃん手伝ってるの?左手は?そのために犠牲になったの?】


【これは、この前に出現したダークホールを】


【涼ちゃん、あれほど約束したよね!なんでダークホール封じ込めることになっちゃったの?】


解らないんだよな、左手から光がって…

信じてもらうための説明、もう面倒だな…


【ごめん、俺が悪い】


【…責めても仕方ないけど、ユキに直してもらう気は無いんでしょ?】


【うん】


【TAは?今も続いてるの?さきは何で私に言ってこないんだろ?】


【残された時間を俺と使ってほしいって】


【そっか…ごめんね、こんな時代に赤ちゃん…ごめんね、涼ちゃん。ごめんね、赤ちゃん…😭】


【るい、終わったわけではない。まだ可能性がある。さき達はブラックホールで対抗しようとしてる。俺が移動中に見た時空の狭間にダークホールが次々に吸い込まれていく話しをして、さきがその可能性にかけたんだ】


【涼ちゃん、移動中って?】


【時空の狭間で次の時代に着くまでのあいだのこと。省略して俺達は移動中って呼んでる】


【あっ、そうか。そうだったね。忘れちゃった!】


るい、TAの職員だったのに忘れたの?


【あのさ、るい、明日一緒に行く?ユキには内緒だよ。俺とるいだけで】


【うん、涼ちゃん頑張ってるのに私だけ…そういえばさきから連絡ってもしかしてTAの関係かな?私のモデルって話…嘘だったんだんだね】


【いや、それは…そうです。ごめんね】


【おかしいと思った。背がこんなに小さいのに、

モデルって】


【それは、忘れてよ。とにかく封じ込めることを考えようね。赤ちゃんもそうだけど、みんなのため】


…………………………翌朝…………………………


今日が最後かも知れない。この風景、この時をしっかり記憶しておこう。


【るい、行くよ】


【トイレ…先行ってて追いかけるから】


【待つよ…どうせなら一緒に行こうよ】


【解った!じゃ待ってて】


………………………………………………遅い!


【るい、どうしたの?】


【…だから…先行っててよ!うっさいな、もう!】


【もしかして、💩?】


【………………】


そうか、💩なんだ!

それならそうと言ってくれたらいいのに。


とても、最後の日とは思えない、緊張感の無さ…


【お待たせー!】


【るい、遅いよ。遅刻しちゃうよ】


【先行ってって、行ったよね!】


【そりゃ、そうだけどさ…どうせなら】


【一緒に歩きたかった?】


【うん…………………………こ】


【今、何?】


【気にしないで、何でもないって】


同じ景色、町並み、晴天の空。

何も変わらない朝。


今日だよな、予想される日は。

さきの予測どうか外れてくれ!頼む!


【さき、ごめん。るいにバレちゃった…】


さきは、呆れ顔、


【そんなもんでしょ、感鋭いからね、この子】


【あのさ〜子供扱いしないでくれる?涼ちゃん巻き込んだくせに】


もう、ここに来て揉めるのかよ、この二人…


【るい、久しぶりだな】


【所長、元気だった?久しぶりだね】


おいおい、所長に向かってなんて話し方…

そういえば、丁寧語使ってるの見たことない。

るいって、そういう人で許されるんだね。


【さき、これ、食べていいの?いただきます!】


るい、今日最後の日かも知れないよ。

何でそんなに食欲あるの?


【じゃ、私もいただこうかな?みんな、食事まだの人達はしっかり食べてくれ】


そんな、悠長な…所長もるいも、さきは、


【涼さん、不思議と思うかも知れないけどね、るい達の考え正しいと思うの。最後の日はせめていつも通りに、普通でいたいの。楽しく笑顔でね】


さき…そうだよな。それが幸せだよな。


【さき、ユキ達には話してない。安産祈願に三人で行くって。その姿見たら言えないよ…俺】


【涼さん、それで正解!私達だけ対処しよう!】


るい、モグモグ、

所長、モグモグ、

みんな、モグモグ。


【涼さん、私達も食べよう!】


さき、モグモグ。


【俺、ちょっと、トイレ行ってくる】


るいは、俺に、


【涼ちゃん、💩?】


【違うわ!!食事中だろ!!何言ってんだ!!】


少し一人になりたい。外に出て、空を見てみよう。

快晴だね、さきの予想からするとね、今日だ。


さあ、覚悟出来たか!俺。


【涼さん…】


ん?振り向いた瞬間に、


【捕まえた!ギュ!】


ユキ!何やってんだ!離せ。使うな!力を。

やめろって。くそ、離さないつもりか…

つけられていたか…気が付かなかった。


【抱え込まないでよ…一人で…大好きな人が一人でいるのって、絶えられないよ…】


ユキからどんどんエネルギーが送られてくる!

ユキ、もう離してくれ!使うな!


頼むから…離せ…お願い…

ユキの生命が…削られていく…


【はい、完治したね。動くよね、左手】


ユキ、なんでそんなに俺のこと、

少し年齢いったかな?でも、綺麗だ!変わらず。


【ユキ、むちゃして…】


【いいの、涼さんのために使いたいの!】


言い終わると、いやそれより早くユキを抱きしめ、

俺は泣いていた。ユキの愛情が伝わってきたから。


【涼さん…るいに見られちゃうよ…】


【構うもんか…ユキ…すまない。本当に】


【だから、謝らないで、私が勝手に…】


強く強くユキを抱きしめて、ユキも手を回して、


【涼さん、あの時のセリフ覚えてる?】


【忘れないよ、パーティでもことだからね】


※【ユキ、ごめん、怒らないで】※


そう言って抱きしめたね、俺。


※【怒るわけないですよ、涙が溢れるだけです】※


そんなふうに返事してくれたね。ユキ。


【涼さん…完璧に覚えてるね…そろそろ離れないとるいに見つかっちゃう…】


【解った。ユキ、ありがとう】


ユキは、笑って、


【少し歳とって、さらに色っぽくなった?】


【素敵になったよ、惚れちゃう!】


【じゃ、キスして……………なんて嘘、ん?涼…】


俺はユキに目一杯の思いでキスをした。

数秒、数十秒、それ以上…

永遠に続くような、それほどの長さを感じた。


【涼さん、なんで?冗談なのに…】


【ユキの優しさに、思いに、それと俺の思いも…】


【涼さん、ありがとう。この世界に未練ないよ】


パンドラの箱…もしそのようなものがあったら、

今の俺は躊躇なく開けるだろう。

例え禁じ手だったとしても。


るいだけじゃない…ユキも、みんな俺にとって、

かけがえのない人達…守る!なんとしても…


さきから連絡が、


【涼さん、どこ?すぐ戻って!出現した。これ、最後のダークホール!!この規模、過去にない!急いで中に入って。すぐにブラックホール発動する】


【解った!】


【ユキ、戻ろう。説明はあとから!】


【解った。涼さん、さっきはありがとう】


るいには言わないでね。俺の感謝の気持ち…

でも、行動は間違っちゃったかな?

先走り過ぎた、感情がね。














  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る