第13話 全てを知りたい

数日過ぎて………………

あの夜のこと、俺は聞かなかったことにした。

バレてもいないからね。るいから聞くまでは。

きっと何か理由がある。


何らかの理由で別れが来るなら俺に原因がある。

そんなこと考えたくないけど。

るいが他の誰かを好きになったとか…それはない。 と思いたい。


ただ、気持ちが落ち着かない。

何事も集中できない。


【涼ちゃん、顔洗った?】


【あっ、るい、先に使っていいよ】


【間に合わなくなるよ、会社、今日早く出るって

言ってたよね?出先で何か買ってくと言ってたよ】


ヤバ、そうだった。遅刻だー。


【るい、お先に、じゃあ】


駄目だ、こんなでは。

これじゃ、何やっても失敗する。

俺の性格………………面倒だな。


電車、辛いな。暑いし、混んでるし、長い。


【おはようございます】


聞いたことある声。さきさんだ。早いな。


【おはようございます、早くない?】


【今日、早朝ミーティングなんです、るいは?】


【まだ家にいたけど、俺が出る時に】


さきさんが笑って、うなずく。うんうんと


【まぁ、よくあることなんで、るいちゃん】


るい、そうなのか?それでも許されるって、

人徳だよな。よくあるって…


【るいちゃんから、何か話ありましたか?】


【何も、普通通り。特に何かってことはないよ】


【そうですか…】


何、何?何かありそう。もしかして俺が気にしていること?


社内にアナウンス。


※車両故障のため、次の駅で暫く停車いたします。お急ぎのところご迷惑おかけいたします※


えー、完全遅刻じゃん。とりあえずメール入れて、

怒られるよな。きっと。


すぐ、返信。ほら怒られる。

※本日遅刻多数のため本日会議中止となります※

※対象者は遅延証明提示願います※


そんなにいるの?ほんとに車両故障?

その他の路線も?調べてみるか………………

うわっ、何だこれ?ほぼ全線で運行停止。

何かあったな。


【涼さんもですか?私もです。早朝ミーティング中止どころか出勤しなくていいって】


【なんか大規模な…とりあえず次の駅で降りれるなら助かるけど、出勤停止にしてくれないかな?

融通きかないよ。ほんと、うちの会社】


さきさんが笑って、


【涼さん、サボっちゃいません?どの道遅刻だし、どうですか?】


えっ、俺と?いやいや、マズイでしょ、俺にはるいが…さきさん綺麗だし。嬉しいけど…るいに申し訳ない。それに、るいの同僚っていうか友達って…


【あっ、涼さん、へんな言い方してしまってすみません。るいさんのことで話が】


あっ、そういうことね。はずかしーーーーー!

それにさきさんも彼氏いるよな。きっと。


【涼さん。次の駅で、近くに何かあれば、そこで】


【解りました、あの、こんな言い方失礼かも知れないけど、丁寧語やめにしませんか?その方が楽で】


さきさんが、微笑んだ。おっ、可愛い!

となるのが俺の悪い癖。るい、ごめん。

話を聞くだけ。それにるいのことだからね。


【涼さん、そうしよう。あー、楽でいいや】


おいっ、いきなり変わったぞ。そういう人?


駅に停車した。とにかく混んでる。すし詰め状態。

さきさんも辛そう。よし、ここは。


【鞄持つよ。足元に気をつけて】


【ありがとう、混雑苦手…】


とりあえず駅を出て、タクシー乗り場激混み。

バス停も長蛇の列。

こういう日は休みにしてくれよなー。


【あった、涼さん、あの喫茶店でいい?】


【いいよ、空いていればいいけど】


コーヒーのいい香りの喫茶店。店は古く懐かしい…

普通に来てもゆっくりできそう。


席に案内され、すぐにアイスコーヒーを頼んた。

それと、さきさんがパフェも。


【好きなの?パフェ?】


【あれば、必ず頼むことにしてるの】


なるほど、じゃ俺も追加しよ。


【ところで、るいちゃんのことだけど】


【あっ、話ね。何でも】


【TAって知ってる?】


いきなりのことで、むせた俺は咳き込んで、

ヤバ、水、気管に入った。ちょっと待って、

ゲホゲホ!涙が出てきた。


【大丈夫?慌てないで】


海で溺れて以来だ。あ〜辛かった。

とりあえず深呼吸。大丈夫だ。

俺の知ってることを話した。


【ゲホ、あの…何でTAって、時間軸調整課?】


【知ってるんだ。るいから、聞いたの?】


【ユキから、って言っても知らないよね、ごめんね、詳しく言うと…】


俺の話を遮って。さきさんは、暫く黙って…


【あの、さきさん?どうしたの?】


【さきで、呼び捨てでいいので、ちょっと掘り下げて話したい、いい?】


【じゃ、俺も涼でいいよ】


さきは深呼吸。その後、


【ユキの旦那さんなの、涼?前の世界で?】


ユキ知ってるのような、さきさん?知り合い?


【事情があってね、るいと結婚してるけど、前の世界ではユキと結婚してるって聞いたよ、記憶なくて、俺は聞いただけ、何でTAのこと知ってるの?】


【私はTAのチームリーダーだったの】


なんだって~!じゃ、るい、ユキ、さきの3人がこの世界に来てるってこと?


【涼、何もかも話しても理解できそうだね】


【だいたいはね、ユキからもかなり詳しく聞いた、もちろん、この世界に来てからだけど】


【ユキは?どこにいるの?】


【んー、ややこしいけど、前の世界からまた戻ってきて、子供になって、俺の最初の人生の妻の養子…訳解らないでしょ、こんなの】


【何とか大丈夫。じゃ、ユキも無事なんだね】


【子供だけどね、暫く会ってないけど】


さきは、少し悩んでる。どこまで話すかってこと

だろうな。俺にも解るよ。


【さき、もう全て話してくれていいよ。時間あるし、るいの前だと話せないこともあるでしょ】


【んー、じゃすべて話す。辛いかもしれないよ】


【大丈夫!!!お願い】


俺は全てを聞くことにした。



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