第2話 運動会

【涼、行くよ、急いで!】


【解ったよ、鍵は?何処だ?】


【先に行ってる、後から走ってきて!】


もう、何でこんな時に何処にしまったんだよー、

楽しみなのは俺もだからなー、もう!


玲奈は先に行ってしまった。ユキを抱っこして。

俺が抱っこしたかったのにー。


【涼ちゃん、何やってんの!】


あっ、るい。ちょーどいい、頼もう。


【鍵探していてさ、悪いダンス終わったら戻るからちょっと部屋にいて。頼む!】


【えー、玲奈に誘われて楽しみにしてたのにー】


玲奈のやつ、るいも誘ったな。まぁ、妹って

とりあえずなってるしな、このウソよくバレないな。主演男優賞ものだな。


【ごめんね…るいちゃん、ありがと】


【キモい、ちゃんつけるな!】


るいに留守番任せても、玲奈とユキに追いついた。

相変わらず速いな、さすが玲奈だ。


【鍵見つかったの?】


【るいに留守番頼んだ、ダンス終わったら戻る】


【サイテ〜!るいちゃん誘ったのは私だよ、可哀想だよ、ユキもるいちゃん来るの楽しみにしてたのに!】


そう言われても、鍵無くしたの俺なの?

玲奈、相当てきとうに置くからな。

それ言うと逆ギレされるから言えない…


【ダンス終わったらさ、戻って探す。るいにはすぐに来てもらう】


【必ず見つけて戻ってきてよ、涼!】


【解ったよ、怒った玲奈も可愛いー♥】


と、近づいて頭撫でようとしたら、


【ユキ見てる!】


すかさず、俺の手を振り払われた!玲奈子供の前では母親になってる。実の子では無いけど…立派!


実は玲奈、妹がいてその子を引き取ることに。

残念なことに、その妹は亡くなって…

ユキを託されたってこと。


玲奈も気丈に振る舞っていたいたけど、そうとう辛いはず。倒れたこともあるから。


【ほら、始まるよ。行ってきて】


ユキを送り出した。いよいよ始まる。


おっ、流行りの曲、思わず踊りたくなるリズム。


【ほら、動画!】


俺も直接見たいのにな。するとアナウンスで、


※保護者及びご来場の皆様、是非直接頑張ってる子供達を直接見てあげてください※


ほらな、そうだろ。貴重なんだよ、この瞬間。


【じゃ、涼も見て】


玲奈は渋々だけど、俺は見るよ、ユキを。


【あの子、凄く上手いね、それにとっても可愛い!】


それ、うちの娘です。どんどん褒めて褒めて!


【可愛いな、あの子。表情が豊かだね】


そうでしょ、そうでしょ、なんか嬉しすぎ!


【ユキってさ、なんか大人っぽいよね、そう思わない?涼どう思う?あんな小さいのに不思議!】


ユキのダンスに見惚れていたよ、もう終わっちゃった。すげーなー、完璧だった。


玲奈、そりゃ、昔からねーユキは。

おっと、これは間違っても言えない。秘密!秘密!


子供だけどね。ユキは。生まれ変わりだからさ。

それはそれは可愛い、おしとやか、素敵な女性だったからね。そうだったよなー、るい。って?

あれ、何でここに?


【るい、お前何でいるんだよ?部屋は?】


【ほら、鍵!何処にあったか解る?馬鹿兄貴!】


【見つけてくれたのか。ありがと、るいちゃん】


【だから、キモいって、ちゃんやめろ!】


とりあえずこれで運動会が終わるまで見てられる!


玲奈がじーと見てる。こっちに来て、


【るいちゃん。ありがとうね、涼に留守番たのまれたんでしょ?ごめんね…鍵見つけてくれて本当に、ありがとう】


【玲奈、これどこにあったか解る?】


【何処にあったの?】


【玄関の外、ドアのすぐ下】


【あっぶなー、涼、馬鹿なの?!】


玲奈…俺が無くしたことになってる。

俺なの?ほんとに?


【玲奈、兄貴だらし無いから、気をつけてね、トイレとかも鍵かけないし、穴あき靴下とか…】


【もう、うるさい!黙れ、るい!】


俺がるいの口を手で塞ごうとすると、スルッと

逃げられ、


【相変わらずトロいなー、トロ兄ー】


くそ、相変わらず素早い!


それを見ていた玲奈が、不思議そうに…


【仲良いよねー、なんか本当に恋人みたい、るいにちゃんも凄く楽しそう、なんか妬けるー】


【玲奈、ないない、こんな兄貴なんか、もし血が繋がってなくてもあり得ない!るいの好みはねー、もっとカッコよく、強くて、優しくて…】


【もういい、黙れ!るい、もう怒った!】


るいを腰をくすぐってコチョコチョと、どうだー


【ワー、駄目だ!やめろって、馬鹿兄貴ー、ごめん、ほんとごめん、もう無理無理!限界、息がー、】


るいはフラフラっと、あっ!危ない!後ろ、池だ!


とっさに、るいを抱きかかえ、間一髪!

間に合ったー、危なかった。ここで落ちたら…


るいを抱きかかえて、るいはじっと俺を見て、


【ありがと…】


駄目だ!ドキッとしてしまった。兄妹演じるの無理あるなー、この先不安だ。


るいも急に大人しくなって。そんな俺達を見て、

玲奈が、


【兄妹って、不思議。結局異性だもんね、私は知らないから羨ましい。お兄ちゃん欲しかったー】


【こんな兄貴出良ければどーぞ、どーぞ持っていって、こんなでも良ければ】


ユキが戻ってきた。


【どうだった~、ダンス?】 


俺はユキを抱きかかえ、肩車して、


【凄く上手かったよ、誰よりも、頑張ったね!】


【ありがと!お父さん!】


ユキは喜んでる。玲奈は、


【るいちゃん、涼って凄いね。ほんとの子供のようにユキに接してくれる。ユキも凄い懐いてる、ユキに彼氏が出来たら大変だ、あれは。ん?るいちゃん、どうしたの?】


【あっ、彼氏…うん、大変だ、きっと】


あれ?るいの様子がおかしいな。














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