第285話 時々輝いて見せるおさん狐のようなスコール女

「んっ、、寒い・・・。」モゾ、、


 朝、寒さで自然に目が覚めた由奈。いつも通り、早起きのひよりは隣に居ない。


(ああ、さっむ。ひよりがいると暑いくらいなんだけどな。。)


 ひよりが起こしに来て、布団の中に潜り込んでくれば良いのに、、と思っていると、、奴は現れた。


「ぴょこ?寝てる子いねーが??お?美味しそうな若いおなごがいるな。ちょっと痩せすぎだけど!へっへっへ。」


 どうやらなまはげバージョンのひよりが近づいてくる。添い寝してくれたら温かいけど、それ以外なら丁重にお断りしたい雰囲気だ。間違いなくだる絡みの予感だ。


 ヨジヨジ・・・モゾモゾ・・・ゴソゴソ・・・。

 どうやら、ぴより怪獣は足下から布団に潜り込んだらしい。由奈は遠慮なしに身体の上をよじ登られているが、まだ寝ていたいから寝たふりをしてみた。


(お、重い、、こいつ、、ちょっと痩せたからって、重くないわけじゃないぞ、、。いてて。お腹の上はやめて、、)


 我慢して寝たふりを続けていると、ひよりは調子に乗り始めたようだ。由奈のお腹に顔を埋めて、ぶーっと息を吹いて遊んでいる。


「あっはっはっは!ぶーーーぅ!!!すりすりすり♡温かくてやわらかい~!」


(くっ、、こいつ、、私が寝てるといつもこんな感じなのか。。ちょっと舐められてる感があるぞ、、うぉ、、触り放題かって!めちゃくちゃ揉まれてるっ、、)


 ひよりは由奈のお腹に顔を埋めながら、両手は胸へと伸ばしていた。


「ふわっふわ。ふよんふよん♡あー飛びそう。。あっ!お鍋っ!火にかけっぱなしだった!!やっべ!」ワー‼イソゲー‼ドタタタタター


 あわや、由奈がひよりを捕獲しようと両手を動かしたとき、ひよりはキッチンへと走って行ってしまった。


「くっ、、逃げられた。やられ損だ、、」


 仕方ない、、気づかなかったふりのままでいいや。そう諦めると、起き上がってひよりの元へと向かった。あとわずかで入試だ。勉強を頑張っているひよりのストレスを思うと、つい甘やかしすぎたという自覚がある由奈。勉強さえしてくれればあとは大目に見ようと割り切っていた。。


「ひより、おはよう。」

「あっ、ダーリン♡おはよ!ソファに座ってて?すぐにコーヒーを持っていくわ♡」ルンルン‼

「あ、ありがと。」

「待っててね♡うーんと美味しく作るからね♡」


 由奈はソファにもたれかかると、テレビをつけてぼーっとしていた。

「はい、お待たせ。熱すぎたから、ちょっとだけフーフーするね。」フゥーフゥー‼

「・・・・。」

「よし。まだ熱いからゆっくり飲んでね?」

「うん、ありがと。。」

「あ、由奈さん?その格好じゃ風邪引くよ?」


 そう言うと、ひよりは自分が着ているカーデガンを脱いで、由奈の肩に優しくかけた。


「うん、これでよし!あとオムレツ焼いたら出来るからね!待っててね♡」トテテテテー


 この、わずか数分の出来事が由奈に与えたダメージは、想像を超えるものだった。ダメージと言っても溺愛のスコールを浴びたダメージだ。シロップ漬けになるために半月にされた桃が、シロップひたひたに浸されただけのこと。。ダメージジーンズを作るために破かれたジーンズのようなもの。。


「お待たせしました、由奈さん。ご飯出来たよ♡」

「あ、うん。ありがと。!!!!」

「どうしたの?由奈さん??」

「お、オムレツ、、」

「うん。ひよりのオムレツはケチャップでひよこを描いてある方。由奈さんのはハートが描いてある方だよ♡」


 陥落である。由奈氏、陥落であった。激弱、、


 う、うちの子、、まじでかわいい。幸せすぎる・・・っ!!


 完璧な、、新妻じゃないか・・・。*そして嗚咽。


「さ、食べましょ?いただきます♡」

「うん、、いつもありがと。ひより、、」

「うふふ。由奈さんの朝ご飯はひよりが作るんだよ♡愛妻だかんね!」


 ニッコリ微笑むと、大きな口を開けてオムレツをパクッと行ったぴより。


「もぐぱくもぐぱく。んー、上出来♡」

「ひより、ケチャップついてるよ、口に。」

「やん、恥ずかしいから拭いて??」テヘヘ



 ぐっ、、、に、200点、ですっ!!!!!!!!


 うちの子、まじかわいい、、、、、、、


 うーわ。チョロ。。


 続く。


 

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