蝉が鳴くごとに変わる街の見え方。
@Helwi1019
蝉が鳴くごとに変わる街の見え方。
ガキの僕らは夏を待ち焦がれていた。
蝉が鳴くごとに変わる街の見え方、
溶け始めたチューペットで
ベタついた手を川で洗ったら、
チャリで川を渡って
次はどこへ行こう。
誰もいない場所
今は平気で赤渡りをしている。
日常の些細なことにも疑問を持てなくなった。
小さくなる踏切の音は、
今はもう僕には聞こえなくなった。
身体は大人になっても
心はまだガキのままでいたかった。
今すぐ泣きたくなったけど
すでに汗をかいていたからやめた。
暑い七月の昼下がり
薄い内容の生活に
濃い記憶だけが残ってる
淡い恋も枯れ残ってる
夏の花が好きな人は夏に死ぬらしい。
だったら夏に死のうよ
って僕らはエーデルワイスを好きになった。
芦屋の山でみんなで探したけど 見つからなかった。
君たちのせいで夏にしか死ねなくなったよ。
花言葉は「思い出」 また夏を逃した。
来年になったら大人になるらしい。
青春がすぎても成熟できないまま心は腐ってしまった。
人生を過ごすごとに変わる蝉の声の聞こえ方。
その 日暮らしだったガキの頃を思い出して
殺すのはやめといた。
人生は映画のようなものだって誰かが言ってた。
なら僕の映画は後半になるにつれてつまらなくなるタイプだ。
主演の僕も、このB級映画のクランクアップを 今か今かと待ち侘びている。
「転」は作れないままでいる。
将来何になりたいんだとかまだ子供だし分からないし、
人生何が楽しいのか未だに分からずただ生きている。
涼しい十月の夕暮れ
苦しい通学と靴擦れ
片付けない扇風機
首を振った登校拒否、十一歳。
不可能も可能に変わるかもしれなかった。
空っぽで埋まった日常がどうにか救われますように、なんて
またどうしようもない感情を十二音に乗せる。
ノスタルジーに浸る 夏か死んだ 冬に羽化した蝉
蝉が鳴くごとに変わる街の見え方。 @Helwi1019
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます