第26話 モンキャット城へご招待します

 大山川真奈美おおやまかわまなみ体調たいちょうが戻ってから、母と向き合った。


「わたしが、お母さんに私立しりつに行きたいって言いだしたのは、みんなと離れてみたかっただけだよ。大山川家一族としてじゃなくて、誰もわたしを知らない。ただの真奈美として、プレッシャーを感じない場所で中学生活をおくりたかったの。だから、まわりの友達をまき込んで、受験をすすめないでほしかった……」


「真奈美……。真奈美はいい子なのに……。お母さんが悪いのよ。エリートばかりの大山川家に嫁いできたら、誰も味方のいないところで、自分の居場所いばしょを見つけなくてはいけないと思って、あせってしまって……。弱いお母さんでごめんね……」

「うん、いいよ」


――しばらくして、大山川の母親は中学受験反対派はんたいはの井口光莉ひかりの母親と和解わかいした。受験は個人の自由で決めることになった。


 産業廃棄物さんぎょうはいきぶつ汚染おせんされた池も再生されることになった。



 ***



「――ところで、凪咲なぎさ様は中学受験どうします?」

 図書館としょかんから帰る途中、みおはたずねる。


「わたしは、受験やめるね」

「どうしてですか? 私立しりつっていいと思いますよ。いろんな体験ができて、可能性も広がるし。ま、あたしは地元の中学校ですが……」


「ミオミオの夢は?」

「んー。ふつうに会社で仕事をして、ときどき除霊じょれいのお手伝い、かなぁ……」


「わたしは、運動神経が良くてオリンピック選手になりたいとか、ひいでたものがこれといってないんだよね~。それにまだやりたいことがわからないのに私立はお金がかかるし、なにより、光莉ひかりと同じ中学行きたい。もちろんミオミオもいるから安心して楽しく中学生活送りたいよ。そんな単純たんじゅんな理由じゃダメ?」

「くぅう。全然ダメじゃないですよー。凪咲様ー! あたしついて行きます!」

 澪が凪咲に抱きついた。


「ミオミオ、もう親友だから、様呼びはやめてよぅ」



 ***



 夏休みが終わり、少しずつ暑さがやわらぐ頃、ノアム留学生はモンキャット王国に帰国した(そういうことにした)。小学校の女子たちのなげき、悲しみ。らくたんの色がかくせない。ノアムロスのため、しばらく勉強に身が入らない女子が続出ぞくしゅつした。


 事件が解決しても、ベッド下の扉をふさがない猫騎士ノアム。時々遊びに来て、クローゼットに隠れ、優雅ゆうがにお茶を飲んでいる。


 ちょうど赤坂兄妹が凪咲の家に遊びにきていたので、ノアムは人の姿に変化へんげした。


「王様から伝言です。凪咲さん、ならびに赤坂兄妹殿。あやかし世界のよう国にご招待いたします」


「マジか! よろこんで行かせていただくぜ」

「ありがとうございます」

 三人は素直に喜んだ。



 ――数日後の夜。


 四人はいつものように凪咲のベッド下に作った階段から扉を開けて、あやかし世界へ入った。


「あやかし世界も治安ちあんが安定しましたので、本日は新たに建てた商業施設しょうぎょうしせつにご案内あんないいたします」

「商業施設を建てたの! どこですか?」

「こちらにどうぞ」


 ホーウ……ホーウ……

 遠くの方でフクロウの鳴き声が聞こえる。あやしげな薄暗うすぐらい森の小道こみちを歩くと、突然、道が開けた場所に現れたのは、猫をおもわせる丸いフォルムで猫耳の城。猫をかたどった入り口門には猫の兵隊が並んで立っていた。


「わー猫のお城だ」


 ノアムが恥ずかしそうに言う。

「ゴホンッ。この施設、猫のテーマパークなんです。あれからわたくし、昇進しょうしんしたので、王様から正式に爵位しゃくいを授かりました。それで、実はわたくしが管理かんりを任されております」

「……てことは、ただの騎士が大出世だいしゅっせ。すげーじゃん」

 快斗は興奮して叫ぶ。


「でもノアム、しょっちゅう家に来ているけど」

 凪咲はけげんな顔でノアムを見る。


「休日だからです。また、あやかしが現世うつしよで迷惑かけた時の窓口にして……。それに、会いたいじゃないですか……なぎさ……に……」


 ノアムが頬を赤らめ、もごもごと声が小さくなって最後まで聞き取れなかった。

「?」


「すべては皆さまのおかげです。お城の名前を決めてよいとのことで、わたしくノアムが名前を決めさせていただきました」

「どんな名前?」

「モンキャット城です」

「でた! 本当にモンキャット王国作ったな」


 三人は猫のテーマパーク施設に入っていきました。




 ※次で最終回です(=^・^=)ありがとうございました✨

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る