第21話 オカルト研究部始動

 週末しゅうまつみおの家でオカルト研究部けんきゅうぶの活動をすることになった。と言っても、澪の部屋へやである。二階に上がると、お茶やお菓子が並んでいた。スナック菓子、クッキー、一口チョコだ。凪咲なぎさとノアムは座布団ざぶとんに座る。


「アイスコーヒー、緑茶に炭酸たんさんや甘いジュースはここだよ。勝手にドリンクは飲んでね」

「ありがとう。ミオミオ、うちのお母さんが、持って行けって……これどうぞ」

 凪咲は澪にわたす。近所でひょうばんのフルーツタルトだ。


「キャー! もしかしてタルトで有名なお店じゃない! 食べてみたかったんだ。こんな風にもらったことないよ。っていうか、友達が家に来たこともなかったからこのやりとり嬉しい~」

「そう? タルト好きでよかった!」


「ただいま」


 部活を終え、学校から帰ってきた澪の兄の快斗を部屋に呼んだ。快斗はおなかが空いていたので、タルトよりインスタントラーメンをすする。


 凪咲は、偶然、読み取りスキャンしたら、真奈美が化蛇かだかれていることを赤坂兄妹に報告した。


「ええっ意外いがい‼ 大山川真奈美おおやまかわまなみさんが化蛇かだ支配しはいされているんだ! あたし同じ組なのに全然気がつかなかったわ。息をひそめて教室きょうしつにいたからな。ああ……まだまだ修業しゅぎょうが足りませんね」

 澪はひたいに手をおき、落ち込んだ。


霊力れいりょくが高いとその能力を隠す能力もけています。わたくしも凪咲さんにスマホを見せられるまで分かりませんでした」

 ノアムも同じようにショックを受けていた。


「霊感強いミオミオでもそうなんだ。どうしようね……」

 凪咲は顔を曇らせる。澪はすぐに立ち直り打開策を考え、凪咲に訊く。

「このことは、妖国の王様は知っているの?」


「うん、化蛇のことは、もう報告したよ。実はね、『AYA🐾NEKOアヤネコ』アプリで妖国の幹部かんぶ通話つうわできるよ。でも、現世うつしよにいる化蛇を捕まえるのは至難しなんわざだって!」


幽世かくりよに住む幹部と会話できるなんてすげぇ。俺も『AYA🐾NEKOアヤネコ』入会しようっと。でも俺は前回、河童の言葉すら分からなかったからな。それより強い化蛇とたたかえるかな。澪がたよりだ。お前に任せたぜ!」


 快斗ははしを置き、こぶしを上げる。すると澪も拳を上げ、「承知した!」と言って、ハイタッチのように拳と拳を突き合わせた。少年漫画のような熱い雰囲気に凪咲は苦笑いする。


 澪は妖怪図鑑ようかいずかん本棚ほんだなから取り出し、化蛇のページを開いた。


「――化蛇はね、名前の通りへびが妖怪化したの。ふだんは水の中にんでいます。頭は蛇で、背中はコウモリのようなつばさ水獣妖怪すいじゅうようかいなんだけど、古代中国こだいちゅうごくでは、化蛇を見かけると洪水が起こるとわれています」


「じゃあ、霜雪そうせつさんに話しかけた時に、『大きいことをする』って言っていたみたいだけど、もしかして洪水こうずいのこと⁉ この辺は大きい川もあるし、どうしよう。止めなくちゃ」


「すみません。幽世かくりよでとらえていたのに逃がしてしまいました。責任を感じております。ただ、真奈美さんにいているので、なかなか手出しできないのです」

 ノアムはほとほと困り果てる。


「あたしは、化蛇が強ければ強いほど燃えますね。こうなったらあぶり出すしかないわね~楽しくなってきましたよ~。ああ、楽しくなってきましたよ!」

 また立ち上がって右手のこぶしを上げる澪。


「あぶり出すって、何すればいいの?」

「そこはミオミオに任せなさい! 凪咲様はもう一度、真奈美さんと話しかけることはできますか?」

「うん、この前、しゃべったから大丈夫」


「俺も手伝うぜ。なんかできることあったら言ってくれ!」


「本当に申し訳ありません。陰陽道おんみょうどうの方々にもご迷惑をおかけします」

 ノアムは頭を下げる。快斗はノアムの方を向き言った。


「かの有名な陰陽師おんみょうじ安倍晴明あべのせいめいは、半妖はんようなんだ。妖狐ようこである九尾きゅうびの狐と人間の間にできた子供だって言われている。俺らはその末裔まつえいではないが、決して妖怪がてきだと思ってはいない。ノアムのことは友達だと思ったからこそ助ける。洪水は必ず阻止そしする。みんなでな!」

 快斗は親指を突き上げる。


 ノアムは快斗の言葉に胸がジンと熱くなった。

「快斗さん、友などと恐れ多く、痛み入ります」

「なんだって? どこか痛いのか?」

「兄ちゃん、アホなの?」


 みんなできたるべき日に向けて話し合った。

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