第19話 あやかし専用アプリ

 猫将軍が、あやかし用に改造かいぞうしたスマホを持ってきたので、凪咲なぎさがQRコードを読み取り、名前や生年月日などを入力して登録すると、待受画面に『AYA🐾NEKOアヤネコ』と表示されたアプリが新たに入った。そして登録完了のお知らせ音が「ミャオン」と鳴る。


 凪咲は『AYA🐾NEKOアヤネコ』を開くと、音声通話やチャットができるアプリだった。さらに猫グッズを販売するネットショップもある。


 猫足の魔法ステッキ

 猫耳カチューシャ

 猫デザインの外套マント

 猫Tシャツ

 ハロウィン用の猫仮装グッズ

 クリスマス用のオーナメント

 サンタ猫グッズ……。


 などの販売グッズが載っていた……。


「すっげー。この商品、本当は販売しないニセモノ商品かな? 何気に猫グッズが欲しいんだけど……」

 快斗は目を輝かせて猫将軍に言った。


「ゴホンッ。いえ、ニセモノではございません。ちゃんと販売しております。幽世かくりよ外貨がいかは欲しいので現世うつしよの一般の方にも販売しておりますにゃ。商品は現世うつしよに住むあやかしたちが梱包こんぽうして、一般の宅配たくはいを利用して出荷しゅっかします」

「へえ――。その宅配って……まあいいや。あやかしも人間社会に溶け込んで生活しているんだな」

 快斗は目を丸くする。


「はい。みなさん人間社会に混じって働いております。ただ霊力が弱まると人に変化へんげできなくなりますので、凪咲殿に密偵をお願いしました。あとは、密偵活動専用みっていかつどうせんように、呪具じゅぐの販売をしております」


「じゅぐ?」

「ええ、凪咲殿、一般販売とは別に、密偵用に必要なグッズを載せました。ここに入る場合は指紋を登録してください」

「はい」

 凪咲は指紋認証しもんにんしょうの登録をした。


 すると登録完了音が「ミャオン」と鳴ったので、凪咲と猫将軍と赤坂兄妹は携帯をのぞく。


「ゴホンッ。するとですね、一般の人にはたどり着けない、秘密の呪具じゅぐ商品が画面に出ました。この前、河童を捕らえました妖怪専用の縄なども販売しておりますにゃ。縄は三種類の(細・中・太)から選べます。妖怪の種類によってとらえる道具も違うものですから、こちらからご購入こうにゅうください」


「えっ⁉ でもこの縄は一万円もしてるよ‼ わたしお小遣いもらってないから買えないんだけど……」

 凪咲は困惑した。


「それは困りましたね。幽世かくりよ通貨つうかユーレもお持ちではないでしょうに……」

「通貨がユーレって……まるでEUイーユー通貨のユーロみたいな言い方」

 快斗が笑いそうになった。


 猫将軍はあやかしスマホを触ったが、肉球が邪魔をして上手く液晶画面をタップすることができず、人型に変化しているノアムに頼んだ。


「ゴホンッ。お待たせしました。呪具じゅぐの商品に関しましては、凪咲殿に百万ポイント還元かんげんしましたので、ポイントで購入してください。無料で購入できます」

「本当ですか! ありがとうございます」

 凪咲はホッとして笑顔になる。


「しかしながら、一般販売している猫グッズはご自分で買ってくださいにゃ。ただ今、『AYA🐾NEKOアヤネコ入会記念にゅうかいきねん半額はんがくセールです」

 猫将軍がひげをさわり営業スマイルをした。


「あっはっは。さすが商売上手! ちゃっかりしているぜ。俺は毎月おこづかいもらっているし、高かったらお年玉で買うぜ」

 快斗は親指を立てて、豪快ごうかいに笑った。


「では、現世うつしよに戻りましたら、またアプリを通じて連絡いたしますにゃ。本日はお気を付けてお帰りください」


 猫将軍とモブ猫又たちは一列にズラッと並んで敬礼した。

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