第6話 再会
色々あった週末から一週間。僕はいつも通り仕事に没頭していた。
一週間後に控えた新プロジェクトのプレゼン準備に追われ、プレゼンチームのメンバーと寝食を共にする毎日のため、あまり帰宅も出来ていなかった。無論、あの週末のことなど、すっかり忘れていた。しかし、今日は金曜日。今日くらいは帰宅してゆっくりしよう。
他のメンバーも同じだったため予定よりも早く仕事を切り上げ、各々解散した。
僕は西武新宿までの道を一年先輩の山本さんと帰宅することになった。
「阿部ちゃん、一週間お疲れ。しんどかったな。気晴らしにキャバクラでも行くか。奢ってやるから。」
「山本さん、めちゃくちゃ行きたいですけど、今日は流石に寝たいです。ごめんなさい。またプロジェクト終わったら連れてって下さい。」
「うーん、なら今日も泊まっていきなよ。だからキャバクラに行こう。」
山本さんは新宿住みなので、今週終電を逃した際は何度か泊めてもらっていた。流石にここまで言われたら断りづらい。渋々了承し、一週間ぶりに歌舞伎町に入って行った。
先を歩く山本さんの導線を追うと、どうやら一週間前に原口と行ったあの店が目的地であることが早々に分かった。
ここで僕はクソ女のことを思い出し、足取りが重くなった。どうしようかな。とりあえずランちゃんを指名して、アイツとは関わらないようにして乗り切ろう。頭の中でプランを組み立てて入店した。
入店すると、僕はランちゃんを指名した。
幸運にも、ランちゃんは今空いているようだ。
しかし、ここから誤算が生じた。山本さんがクソ女を指名したのだ。更に、山本さんのありがたい?計らいで同じテーブルで接客を受けることになった。
「阿部ちゃん、キャバクラってあまり来ないでしょ?行きそうなキャラじゃないもんな。一人で行くのも味気ないから付き合ってよ。」
「実は先週原口と来たばっかりなんです。」
「まじか。アイツ彼女いるのに自由な奴だな。まあ、アイツらしいけどな。」
間も無くしてランちゃんが僕の隣に、クソ女が山本さんの隣に座った。
僕はランちゃんの方を向いて、クソ女が視界に入らないようにした。
「お客さん、一週間ぶりですね。私のこと気に入ってくれたみたいですね。」
「ま、まあ、先輩が連れてきてくれたので。とりあえずシャンパンお願いしようかな。」
「分かりました。シャンパンお願いしまーす。」
「そう言えば、まだお客さんのお名前聞いてなかった。お名前教えて下さい。」
「阿部です。」
「下はー?」
「えっ翔太です。」
「翔太さんかー。じゃあこれからしょうちゃんね!」
しょうちゃんか。恥ずかしいけどランちゃんに言われるのは悪い気分じゃない。ニヤついていると、ランちゃんが僕の耳元に顔を近づけてきた。
「しょうちゃん、何であおいさんを指名しないんですか?」
「えっ、えっっと、まあ、先輩が指名されたから…」
「しょうちゃんが先に指名していたじゃないですか。あおいさん、ちょっと寂しそうでしたよ。」
「ま、まさか。ほぼ面識ないのに。」
「聞いてますよ、先週しょうちゃんがあおいさんのハンカチ拾ってくれたらしいじゃないですか。あおいさん、絶対しょうちゃんのことお気に入りですよ。」
「そうなんだ、それはありがたいな。」
ランちゃんは耳元から離れると、以降はいつも通り接客してくれた。
途中、トイレに立ち、帰り際に山本さんの方に視線を移すと、タイミングよくクソ女と目が合った。
僕は軽く会釈だけして阻塞と席に戻った。クソ女は僅かに微笑んでいるように見えた。
それから暫くランちゃんと楽しいトークを終えた頃、山本さんが帰ろうと促してきたので、急いで後ろをついて行った。
山本さんが会計をしてくれた後、僕達は山本さんの自宅方面へ歩き出した。
「阿部ちゃん、楽しそうだったな。」
「はい、前回も接客してくれた子だったので、普通に楽しめました。山本さんの方は如何だったんですか?」
「うん。楽しかったよ。付いてくれた子が元気だし可愛いから最高だったよ!」
「最高っすね!また連れて行って下さい!」
「もちろんいいよ!」
喋っているうちに山本さん宅に到着した。この一週間の疲れもあったので、僕は着くなり眠ってしまった。
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