正夢
@agmcanar
第1話 オープニング
う、うーん、眠いな。瞼を開くと、眼前には無機質な木目が広がっていた。ほんのりと優しい電灯の光は今の僕には眩しすぎる。どうやら寝ていたようだ。重たい体を横に向け、視線を移すと、床が姿を現した。しかし、その床は何故か黒く、柔らかさを備えていた。どういうことや。此処は僕の部屋じゃない。先ほどまで重たかった体は、違和感というリフトにより嘘のように軽くなった。テレビがある。ゴミ箱がある。ティッシュが真横にある。でも異様にこの空間が狭い。更に極狭空間を見渡すと、黒く小さなクリップボードに挟まれた紙切れを発見した。そこには入場時刻、退場時刻が印字されていた。お店に入ったようだ。紙切れを更に読み込むと、店名らしき印字を見つけた。大五郎ボックス。判明した。僕は個室ビデオに入ったんだ。記憶が一気に蘇った。昨晩、同僚と飲みに出掛けたものの、終電を逃したから止む無く大五郎ボックスに入ったんだったな。腕時計を確認すると、八時半を指していた。幸い今日は土曜日だから会社に行かないと行けない訳ではないが、少し寝過ぎたな。先程の紙切れに目を移すと、退場時刻は九時だった。丁度良いからもう出ようか。僕は素早く身の周り品をまとめると、大五郎ボックスを出た。
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