少年よ武器を握れ
第4話 入校式
「さぁ、皆でPDSに行くたけし君を拍手でお見送りしましょう!!」
PDSのかっこいいお兄さんと手をつないで、朝礼台に一緒に乗って、手を振った。僕はすごく、なんだかかっこよくなった感じだ。
みんな笑顔で手を振ってくれた。ゆみちゃんも、りょうたくんもしょうたくんも、皆、僕がPDSに行くって言ったらすごいすごいかっこいいって言ってくれた。先生もほめてくれた。僕は凄く誇らしかった。
お父さんとお母さんには叩かれた。僕が勝手に印鑑押してポストに入れたと知ったら、普段とぜんぜん違う様子で泣いたり、叩いたりしてきた。もう、よくわかんない。
いや、よくわかんな「かった」。
みんなの前であいさつした後、バスにそのまま乗っけられた。さとくんとかあいみちゃんとかこうきくんとかすごく仲が良かった友達はバスが走っていくのにも一緒についてきて、見えなくなるまで手を振ってくれた。
友達に会えなくなるのは、なんだか寂しいけど、多分僕はこれでよかったんだって思った。そう、思うとなんだかちょっとポロポロしちゃったんだけど、ちょっとたったらポロポロしなくなってた。
お父さんとお母さんは最後の最後まで、僕とあんまり口をきいてくれなくなっちゃった。僕の顔を見るたびに、なんか変な顔をして、悲しそうな顔なのかな?だから、悲しくないよ!悲しまないでって言ってたんだけど、お父さんもお母さんもあんまり返事してくれなかった。
僕はでも喧嘩してほしくなかったからやったのに、なんかむずむずした。やっぱり、まだ喧嘩してたんだって思った。あんまり、だって二人とも話さないんだもん。なんだか、居間にいるのが嫌だったから部屋に閉じこもってた。
それで、その日から防衛幼年学校に行くってなったんだけど、その日お母さんは皆の前でそれを伝えるために学校に行く前に、なんかすごくギュッってされた。
すごく恥ずかしかった。もう子供じゃないって思ったけど、お母さんが全然離してくれないから、どうしたんだろって思って顔を見たら、なんか泣いてた。
学校は家からちょっと遠かった。なんか、毎日迎えに来てくれるけど、あっちの寮に入ったほうが楽しいって、お兄さんがにっこりして言ってた。
学校は白くて、なんか大きかった。大きい鉄棒とかうんていとか、プールとか、そこら中に草がもじゃもじゃしてるところがあって、思ってたよりすっごくたのしそうだった。
バスから降りたら、そこはいっぱい他の子もいた。みんな、男で、しかも青いスーツみたいの着ててかっこよかった。皆拍手して出迎えてくれた。
その時、なんだか、ちょっとお母さんの最後の様子を思い出したけど、お兄さんと手をつないだらあんまり気にならなくなった。
皆、なんか笑顔だったから。だから、すっごい楽しそうだと思ってた。
お兄さんもずっと笑顔だった。
広い学校の中を歩いて、歩いてやっとたどり着いた大きな教室で入学式をやった。校長先生がただ一人、書類を読み上げてなんかくれただけだった。その式の最後、なんか紙に名前を書いた。漢字がいっぱいでよくわかんなかった。
「ようこそ防衛幼年学校へたけしくん、これからよろしく」
校長先生が僕に言った。
右横にはここに来てからぴったりとお兄さんがくっついている。お兄さんは相変わらず笑顔だった。校長先生も笑ってる。
わくわくしながら、お兄さんに手を引かれて学校の中を案内された。広い教室とかきれいな食堂とかすごいいろいろあった。体育館もひろくてきれいで、なんか楽しそうにドッチボールしてた。僕もやりたかった。
「ここが寮」
お兄さんと暫くあるいて、最後はすごく広い校庭の向こうにあるすごく大きな建物の前に行った。
寮?寮ってなんだっけ?
お兄さんと一緒にそこに入った。中は、なんだか床がピカピカしていて、全然汚れてるところとかなくて凄かった。きれいだった。
「ここが部屋」
部屋はなんか、2段ベッドが4つぐらいあって、あと机とロッカーがあった。なんか、誰かの部屋なんだろうけど、物が少なくてすごいなと思った。僕の部屋はこんなにきれいじゃないなと思った。
そうやって、その建物の中を見終わった後、お兄さんと他の教室に入った。
廊下を通り過ぎていくとき、なんか授業してる子とかがいた。すごく人数が少なかった。ぼくの学校だともっといっぱいいたのになって思った。
お兄さんがなんか僕にばんざいさせたりして、メジャーではかってる。
「寮入ると楽しいよ?だからさ、試しに今日、お泊りしよう?」
ちょうど、時間も遅かったし、僕もなんだか楽しそうだなって思ったからうなずいた。
寮のある部屋に案内された。うえだくん、なかむらくん、ゆうたくん。このへやにはこの3人がいて、なんかつくえで勉強してた。宿題とかあるらしい。
みんなで楽しく話した。何話したかは忘れちゃったけど、すごい面白かった。
ごはんを食堂で食べて、お風呂にみんなで入った。サッカー部の合宿みたいですごく楽しかった。
「うん、そろそろ2100だから寝ないとだよ」
2100って言われてよくわかんなかったけど、なんか明かりを消すってことだけは分かった。だから、僕は空いてるベッドに入った。
なんだか、背中が痛くてかたいベッドだなって思った。電気が消えて、真っ暗になった。
楽しい。楽しかった。1日楽しかった。その時は、1日楽しかった。
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