サイドストーリー
第1章サイドストーリー 新たな風が吹く
英機は天孔市の暗魔を統べる主を捜している。
暗魔が現れたという通報を受けて、英機は廃倉庫へとやって来た。しかし廃倉庫には暗魔はおらず、代わりに少女がいた。少女はピアスをしている。
「この辺りで暗魔を見なかったか?」
英機は、少女に話しかけた。
「アタシの名は
「何故そんな事を」
「アタシは魔機使いから魔機を奪っている。次は天孔隊だ!」
絢華は、英機を指差す。
「通報は暗魔が出現した事を知らせるもの。天孔隊を呼び出すものではない!」
英機は、語気を強めて言った。
「知らねぇよ。それよりも、アンタの魔機をよこしな!」
絢華は魔機を具現化する。それを見て、英機も魔機を具現化する。
英機の魔機はレーザーをモチーフとした剣で、絢華の魔機は風をモチーフとした槍である。
絢華は槍で突くが、英機は全て剣で受け止める。
「ちょっと変える必要があるか……」
絢華は大きな箱の裏に隠れ、英機から見えなくする。そして、槍を投げる。槍は箱を貫通し、英機に当たる。
「貫通する魔機か」
「そうさ。アタシの魔機は、どんな物も貫く!」
英機はレーザーを張る。
絢華は場所を移動し、槍を投げる。レーザーは、槍を感知し音を鳴らす。その音を聞いて、英機は槍を捉え、槍をはじく。
「対策されちまったか」
絢華は物陰から出て、英機に向かって歩く。そして魔機を消す。
「流石派遣部隊だな。アンタからは魔機を奪え無さそうだ」
英機は、その言葉に反応しない。
「天孔市から立ち去れ。ここには天孔隊として、魔機使いが5人いる。これ以上魔機使いが増えると、お前が暗魔になる可能性がある」
「嫌だね」
絢華は手を両側に広げる。
「ならば、何故魔機を集めている?」
「あるウワサがあってな。魔機を12本揃えれば、どんな願いも叶う。アタシはそれを信じて、魔機を集めているんだ」
英機は少し間を置いて、口を開く。
「それはデマだ。マギアは魔機を生産している。もしそれが本当だったら、マギアの在庫の魔機で12本揃う。願いを叶えようとする者がいてもおかしくないだろう」
「でもアタシは、ウワサを信じる!」
絢華は去っていった。
英機は取り敢えず、絢華の事は放っておいた。そして通常の任務に取り組む。
天文台に、蟹座の暗魔らが現れた。その通報を受けて、英機は天文台へとやって来た。
蟹座の暗魔らを倒していくと、魔機使いの青年が現れる。青年の魔機は、ヤギをモチーフとした二本の剣だ。
英機は、顎に手を置く。
「何故魔機使いが暗魔と共にいる?」
「僕はカプリコーン。山羊座の暗魔さ」
「なるほど暗魔か。ならば倒さなければならない」
英機はうなずく。
そこに絢華が現れる。
「他の天孔隊がいるかと思ったら、またアンタか。でももう1人、魔機使いがいてラッキーだぜ」
英機は、絢華に向く。
「一時休戦だ。共にこいつを倒さないか?」
「いいぜ。その代わりコイツの魔機は、アタシがもらうけどな」
「構わない」
英機と絢華は魔機を具現化し、カプリコーンに襲いかかる。カプリコーンは、それぞれの剣で英機達を受け止める。
英機達は何度も攻撃するが、カプリコーンは全て受け止める。
英機は魔機を変形させ、銃にする。そしてレーザーを撃つ。絢華は槍を投げる。しかし全て弾かれてしまう。
カプリコーンは刀身を伸ばし、英機達をなぎ払う。英機達に当たり、英機達は地面をはいつくばる。
カプリコーンは魔機を消す。
「僕は人を襲う気は無い。蟹座の暗魔を召喚したのも、君達をおびき出す為だしね」
「何が目的だ……」
カプリコーンは英機達に近付き、英機達を覗き込む。
「話をしようか。僕は何でも知っている。何か知りたいことはあるかい?」
絢華が口を開く。
「魔機が12本揃えば、願いが叶うのは本当なのかよ」
「本当さ。ただし12本とも異なる持ち主でなければならないけどね」
「成程。確かにマギアの在庫の魔機では、条件を満たさない」
英機はうなずく。
「俺からも1つ聞きたいことがある。キマイラの暗魔が倒されたのに、何故お前達は残っている」
「確かに僕達暗魔は主が倒されたら撤退するけど、それは強制ではない。だから僕達は全ての暗魔に強制的な命令を下せる、王の剣を求めているんだ」
「くっ……やはり、地道に倒すしかないか……」
英機は拳を握りしめる。
「君達は面白い。また会おう」
そう言って、カプリコーンは去った。
その後英機は絢華を天孔隊本部へ連れて来た。そして傷が癒えるまで、本部で休むことを許可した。
英機達は、本部にいる。
「さっきカプリコーンと戦った時、絢華の魔機を見た。絢華の魔機の石が黒く染まりつつある」
絢華は魔機を具現化し、魔機を見る。英機の言う通り、魔機の石はほぼ黒く染まっている。
「このまま魔法を使えば、絢華は暗魔になる。これ以上戦うな」
「嫌だね。叶えたい願いの為に、アタシは戦う。落ちぶれた真境名家を、再興するんだ」
英機はため息をつく。
「次に暗魔が現れたら、魔機を持って戦え。暗魔と魔機が触れる事で、暗魔の魔力を吸収できる。そうすれば、魔機の石も元通りになる」
「へー、優しいじゃん」
英機は、遠くを見る。
「俺にも望みがある。それは、仲間を暗魔にさせない事だ。昔仲間を暗魔にさせてしまったから、もう二度と仲間を暗魔にさせない」
「ロボットに見えたけど、アンタにも人の心があるんだな」
すると、アナウンスが流れる。
「射手座の暗魔が現れました!」
英機達は立ち上がる。
「行くぞ」
「オッケー!」
英機達は、射手座の暗魔の元へと向かう。
デバイスで射手座の暗魔の位置を確認し、英機は学校の校庭へとやって来た。絢華もついて来ている。
射手座の暗魔は、弓を持つケンタウロスの見た目をしている。大きさは人よりも大きい。
射手座の暗魔は、矢を放つ。絢華はかわし、槍で突く。射手座の暗魔もかわす。射手座の暗魔は離れ、矢を放つ。それが何度か続いた。
「キリがねぇ。投げられたら早ぇのに……」
英機は魔機を撃って援護する。
「とにかく当てろ!」
「分かってる!」
すると射手座の暗魔は攻撃を変え、矢を振り下ろす。
「しまった!」
絢華は魔機で受け止めようとする。射手座の暗魔は絢華の魔機の石を狙い、壊す。
「魔機が使えねぇ……」
「逃げろ!」
英機は魔機を剣に変形し、射手座の暗魔に斬りかかる。そして、射手座の暗魔の注意をそらす。
「サンキュー!」
絢華は逃げる。
射手座の暗魔は矢を振り下ろすが、英機ははじく。そして英機は射手座の暗魔を斬る。
射手座の暗魔は再び矢を放つようになる。英機は全てかわし、撃つ。そして倒す。
射手座の暗魔は消滅する。
英機は、絢華に駆け寄る。絢華は魔機を見つめている。
「無事のようだな」
「ああ。でも何で、アタシの魔機は使えなくなったんだ?」
「魔機使いから魔機に魔力を渡しているのが、この魔機の石だ。ここが壊されると、魔機は機能を停止する。今の絢華は、ただの人間だ」
「まじかよ……」
絢華は肩を落とす。
「流石英機だ。頼りになるね~」
拍手しながら望がやって来る。琳も後についている。
望は、絢華の方を向く。そして、英機に聞く。
「この人は?」
「魔機使い……だった者だ。魔機の石が破壊され、今はただの人間だ」
望と琳は、絢華に近付く。
「こんにちは。僕は隊長の望。そしてこっちは琳だ」
「よろしく。アタシは絢華だ」
「絢華さん、か。魔機を出してみて」
「はいよ」
絢華は魔機を差し出す。
「僕の魔機の力で、絢華の魔機を直すことができる」
望は絢華の魔機の石の上に手をかざす。すると、絢華の魔機の石が直る。石も、元の黄緑色に戻っている。
「すげー!」
絢華は魔機を振り回す。その様子を見て、望は微笑む。
「さて英機、カプリコーンが現れたらしいね」
「そうだ。しかし奴には敵わなかった……」
「彼には大きな貸しがある。前の天孔隊をだまし、窮地に陥れた。それから僕は、カプリコーンについて独自に調べた」
望は英機にデータを送る。
「これは?」
「カプリコーンに関するデータさ。カプリコーンは人間のフリをして、様々な詐欺をしていたようだね」
英機は、送られてきたデータに目を通す。
「既にカプリコーンの居場所も割り出せている。これから僕達と絢華で、カプリコーンを倒しに行こう」
「え、アタシもか?」
絢華は自分を指差す。
「カプリコーンは強敵だ。1人でも魔機使いがいた方がいい」
「任せてくれよ!」
絢華は胸を叩く。
「お前の腕を見させてもらおう」
琳は絢華の肩に手を置く。絢華はその上に手を乗せる。
「分かってるぜ」
カプリコーンは、古い事務所に住んでいる。棚には辞書がぎっしりと置かれており、カプリコーンはその中の1つを読んでいる所だった。
英機はカプリコーンに詐欺の事実を突きつける為に、1人事務所を訪れている。そして絢華達は外で待っている。
「僕に会いたいとは。何か聞きたいことでもあったのかい?」
英機は、カプリコーンをにらむ。
「お前を倒す」
「どうしたんだい?」
英機は、デバイスで新聞記事やニュースを映す。記事やニュースには、とある人物による詐欺について報道されている。
「お前は人間のフリをして、詐欺をした」
聞いた途端、カプリコーンは不敵な笑みを浮かべる。
「ああそうだ。僕は人を襲う事は興味ない。人を騙し、金を巻き上げる事が好きなんだ」
「やはり、暗魔と人間は相容れない!」
英機は魔機を具現化し、剣先をカプリコーンに向ける。
「また戦う気かい? 君の実力は知っているよ」
そう言いながらも、カプリコーンは魔機を具現化する。そしてキャンバスを展開する。キャンバスは、パーティ会場だ。
英機に、絢華達も合流する。英機とカプリコーンの様子を見て、絢華達も魔機を具現化する。
英機と絢華が攻撃し、カプリコーンは受け止める。その隙に琳がカプリコーンを斬る。
「ならば!」
カプリコーンはグラスやお皿を飛ばす。英機は全て撃ち落とす。
次にカプリコーンはヤギを沢山召喚する。ヤギは英機達に向けて突進する。突進によって、パーティのテーブルがひっくり返される。
「お、多すぎるぞ! アイツら!」
「問題無い」
うろたえる絢華を後目に、琳は剣を床に突き刺す。すると氷の壁が出来て、ヤギを止める。
望は、絢華に呼びかける。
「絢華! 僕の力で、君は魔法を無制限に使える。君の力を見せるんだ!」
「オッケー!」
絢華は無数の槍を召喚し、ヤギに向けて放つ。槍は氷の壁を突き破り、ヤギに当たり、ヤギを消滅させる。
「素晴らしい、素晴らしいよ! 天孔隊は!」
望はカプリコーンの後ろに回り込み、カプリコーンの魔機の石を破壊する。そして、琳はカプリコーンを斬る。
「君達には、沢山の事を教えたい。また会おう」
そう言って、カプリコーンは消滅していった。キャンバスも解ける。
英機は、ヤギの魔機を絢華に差し出す。ヤギの魔機は望によって直されている。
「約束の魔機だ」
しかし絢華は魔機を受け取らない。
「いらねぇ。それよりも、アタシを天孔隊に入れてくれないか?」
驚く英機達。
「さっきも言ったが、天孔隊は既に5人いる。それに、願いはどうしたんだ?」
「どうでもいいさ。奪った魔機も返す。天孔隊に入れるなら、アタシは何でもする」
英機は顎に手を当てる。
「そこまでして、何故天孔隊にこだわる?」
「べ、別にいいだろ!」
絢華は頬を赤くする。
「一目惚れ、かな」
望は琳に話しかける。
「どうでもいい。ただこれで、私の相手が増えた。私はもっと強くなる」
「ああ……琳はいつもそうだったね」
望は苦笑いする。そして絢華の方を向く。
「僕は隊長として、絢華が天孔隊に入る事を認めるよ」
絢華は望を親指で指す。
「だってさ。隊長もこう言っているんだぜ」
「勝手にしろ」
英機はそっぽを向く。
「アタシはアンタの仲間みたいに、簡単に死なねぇからなー!」
絢華は叫ぶ。
「さて、天孔市は未だに十二星座の暗魔群に襲われている。主を倒し、天孔市を守ろう」
英機達はうなずく。
絢華を入れた天孔隊は、本部へと向かった。
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