第191話

「はーい、どうも。ダンジョン解説動画が俺の想像の100倍ぐらい人気なので、皆さんの要望通り渋谷ダンジョンの深層も解説したいなって思いました。でも、今更な話なんですけど渋谷ダンジョンって最下層まで攻略されてないので撮影しても意味ないんじゃないかなって思ったので、今から渋谷ダンジョンを最下層まで攻略したいと思いまーす」


:????????

:???

:何言ってんだこいつ?

:頭大丈夫?

:ちょっと何言ってるのかイマイチ理解できないんだけど

:【¥50,000】長いから要約して

:渋谷ダンジョン攻略するよ、終わり

:ダンジョン解説する為にダンジョンを攻略する……攻略する?

:へー?

:ついに頭イカレたか


「イカレてませーん。1人で攻略すると中々大変なので、今日は助っ人にも来てもらってまーす」

「はーい。助っ人のアサガオでーす」

「何故か助っ人扱いされてる相沢亮介でーす」


:【¥4,000】草

:またEX3人旅かよ

:こいつら好きだなぁ……

:リーマン、お前それでいいのか

:流石に草生えないぞ

:いや、笑えるだろ

:色んな意味でな


 さて、よくわからん挨拶はここまでにして……さっさと攻略してしまおう。

 渋谷ダンジョンとはもう長い付き合いになる。俺が探索者になった頃からの付き合いだから、既に4年になる。その間に何回も深層まで行ったが、単純に実力不足であったり、気力が持たなかったりして最下層まで攻略していなかった。それも今日で終わらせてしまおう。


「今は朝の6時ですね……日付が変わるまでには帰って来たいですねぇ」

「帰ってこれるかな? 何階層まであるかもわかってないからね」

「そうですね……相沢さんは渋谷ダンジョンの深層は慣れたものでしょうが」

「勝手に決めつけるのは良くないね如月君。普段は砂漠までも行かないよ」


 知ってたけどね。相沢さんは基本的に深層に行く時も教導役として赴くことが多いんだから、基本的には60階層付近で止まっているだろうと思っていた。


「昔はパーティーで砂漠を超えようって挑戦してた頃もあったんだけどねぇ……結局超えられなかったよ」

「へぇ、じゃあ今回が初挑戦ですか」

「そうなるのかな?」

「私も初挑戦だよ。砂漠まで行ったことない! 火山までしか行ってない!」


 ソロで火山地帯まで行けている時点でかなり凄いんだけどね。七海さんは最近、暇があればすぐに深層に潜って遊んでいるから、もっと先まで行ってたと思ってたな。


「じゃあガンガン進みますか。どっちにしろ、74層までは大した強敵もいないですし」

「その発言が既におかしいんだよね」


:その発言だけじゃなくて全部だろ

:今に始まったことじゃないだろ

:【¥30,000】しゅっぱーつ

:如月君頑張れー

:リーマンが渋谷ダンジョンの最下層を攻略した人間になるんだね

:リーマンも人間じゃない定期


 そうだろうか? これに関しては神代さんも同意……神代さんと比べている時点で駄目ですね、はい。



 しばらくダンジョンを進んでいると、朝早くから活動している探索者たちとすれ違った。すれ違うだけならなんの問題もないんだけど、何故かすれ違う探索者たちにじろじろと見られてからひそひそと噂話をされる。まぁ、EXが3人で歩いていたら目立つのはわかるけど……なんかこそばゆいというか。


:有名人だからな

:まぁ、有名か無名かって言ったら有名だと思う

:充分に有名だろ

:【¥5,000】さっきすれ違ったわ

:何故か海外でのほうが知名度のある男、如月司

:海外の方がダンジョンの人気があるから仕方ない

:海外で活動すればもっと金が貰えるのでは?


「海外で活動って……英語喋れないので嫌です」

「勉強したら? 会社の社長やってると欲しいと思う時が来るんじゃないのかな。勉強は若いうちにしておいた方がいいよー……年取ると、勉強する気力がなくなるから」


 いやな話だな。


 中層を歩いていると、破壊音と共に大量のモンスターがバラバラにされながらこちらに飛んできた。七海さんはひょいっと避け、相沢さんは当たりそうなものだけ盾で防いでいた。


「あ、社長」


 中層の森の中から顔を出したのは、漆黒の鎧を身に纏った宮本さんだった。

 なんでこんな朝早くから配信もせずにダンジョンにいるんだろうか……不思議だ。


:普通にモンスター蹂躙してて怖い

:カナコンちゃん……怪物になっちゃったね


「これから配信ですか?」

「今からちょっと最下層まで」

「……私もついて行って、いいですか?」


 え、まぁ……宮本さんは俺がハワイで遊んでいる間にSランクになったらしいから、別についてくることに問題はないんだけど大丈夫かな。


「いいじゃん、仲間は多い方が楽しいでしょ?」

「実力から考えても、足を引っ張るとかはないと思うし」

「お、お願いします!」

「いや、頭下げるほどのことじゃないですよ。別にそれくらいなら全然いいですし」


 バリバリ近接で戦える人が入ってくれるってのは、中々心強いことなので断る理由が無い。宮本さんなら戦い方も熟知しているし、それに……EXになりたいと望んでいる彼女に、相沢さんとかなら的確なアドバイスができるかもしれない。


「じゃあ仲間も増えたことだし、しゅっぱーつ、だね!」


:かわよ

:お前の彼女可愛いな

:羨ましいな

:でもその彼女、EXなんですよ

:お前の彼女怖いな

:頑張れよ

:なんで正反対の反応になってんの?w


 意気揚々と拳を突きあげて歩き出した七海さんの姿は物凄く可愛いと思ったんだが、コメント欄は可愛いと思っている人と戦々恐々としている人で半々だった。


 それにしても……EXの探索者で実力は言うまでもない相沢さんに、EXになったばかりだけど既に怪物のような力を持っている七海さん。それにプラスで滅茶苦茶硬くて防御力だけならEX並みの宮本さんまでいるとか、とっても厳ついパーティーじゃないかな。

 長年攻略されてこなかった渋谷ダンジョンの最下層を攻略する為なら、これくらいメンバーが必要だってのはそうなんだけど……自分で集めておいてかなりの過剰戦力な気がしてきた。


「渋谷ダンジョンって何階層まであるのかな」

「100とか、あるかもしれませんね」

「あったらやだなぁ……年齢重ねると疲れが取れにくいんだよね」

「……大丈夫か!」


:あ、適当で済ませた

:とにかく問題が起きる気しかしない

:なにが起きてもダンジョンは攻略されそうだけど、途中で色々と問題を起こしそうなパーティーだなおい


 まぁ、問題起きても最終的にダンジョンが攻略されるなら大丈夫でしょ!

 

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