第114話

 俺、朝川さん、宮本さん……3人は見慣れていると言うこともあって、視聴者は特に大きな反応を示していなかった。まぁ、宮本さんが素顔を出したので、そこではかなり大きな反応が起こっていたけども。


:次からは本番だぞ

:あの合格者1%の猛者たちだ……

:書類選考を乗り越えた1割……から更に落とされなかった猛者だぞ

:とんでもない確率で草

:仕方ないね


「どうも初めましての人は始めまして! いつも俺のことを見てくれている人はありがとう! 堂々鈴々でーっす!」


:は?

:パンダじゃねーか!

:なんだパンダか……

:よぉパンダ、中国返還するぞ

:まだ日本にいたのか……パンダはレンタル料がかかるからさっさと返還しろって言っただろうが


「あっれぇ!? 如月さんにテンション高めの挨拶すればきっと盛り上がってくれるって聞いたんだけどなぁ!?」


 勿論嘘である。普段から堂林さんが配信でどういう扱いをされているのか、事前にチェックしたので、テンション高めに挨拶したら俺の視聴者層で堂林さんを知っている人は、必ずこういう反応をするだろうと思っていた。そして、堂林さんがそういう扱いをされることで持ち味を発揮することも。簡単に言えば、いじられキャラなんだろうな。


:完全にパンダ扱いで草

:企業所属おめでとう

:最近テンション高かった理由はそれだったのか

:これからは企業所属パンダか

:企業所属配信者じゃなくて企業所属パンダなのか

:パンダだし


「パンダじゃないんだよ! 俺はっ! ダンジョン配信者であってパンダではないの! パンダはあだ名なの!」


:パンダじゃん

:パンダなんじゃん

:初めて見るけどくっそ面白いなこいつ

:パンダ、お前って奴は最高の芸人だぜ

:芸人で草

:えぇ……ダンジョン配信者じゃないの?

:芸を仕込んだパンダでしょ


「如月さーん!?」

「予定調和」


:草

:流石俺たち

:知ってた

:お前騙されたんだよなぁ


 流石に視聴者は速攻で気が付いたらしい。俺がわざとそんな風に挨拶しろって誘導したのが。俺たちって言われるのは癪だけど、感性が似通っているのは認めようではないか。


「じゃあパンダさんは退いてもらって、次の自己紹介に行きましょう」

「パンダ!?」


 堂林さんには俺ではできない視聴者とのプロレスをしてもらおうと思っている。まぁ……プロレスなはずなのに堂林さんがひたすらにボコボコにされているのは目を瞑るとして。とは言え、堂林さんは探索者としての実力も考えて合格とした人なので、探索者としては絶対に成功させられる自信がある。そこら辺は宮本さんと同じだな。


「次は、アタシ!」

「はい、どうぞ」

「はーい! 美美香みみかでーす! 大学中退してearly bird所属の配信者になることにしました! 年齢は20になったばかりです!」

「うん、別に年齢紹介はいりませんでしたね」

「えー?」


:ちょっと頭悪そうな感じの子きた?

:草

:直球の罵倒なのか、それとも褒めているのか

:あの言葉で褒めている要素あるのか……


 美美香さん……本名は天王寺綾瀬てんのうじあやせという名前なんだが……この人は面接でとんでもない熱意を語ってくれたので採用に踏み切った人だ。どうやら、流されるまま大学に入ったがやりたいことも見つからず、グダグダした生活を送っていたら留年しそうになっていたらしい。

 大学生活中、バイトの代わりに始めようと思ったのがダンジョン探索者だった、と言う訳だ。ただし、大学内にダンジョン探索者に詳しい人なんているはずもなく、ノウハウを得ることもできずに燻っていたところに……俺の配信で募集されているのを見てこれしかないと思った、とか。


「ダンジョンに関しては全く素人です! 配信も今回初めてです! 完全新人なのでよろしくお願いしまーす!」


:うーん可愛い

:陽のものオーラが……

:ギャルかな?

:なんとなく頭悪そうなのは言葉だけだな

:地頭良さそうな気がするぞ

:なんとなく馬鹿っぽいな

:どっちだよ


 彼女を採用しようと思った理由は熱意だけではなく……中退した大学がくっそ頭のいい国公立大学だったからだ。本人は流されるままに大学入試で進学したと言っていたが、正直言って全く理解できないぐらい頭いい。多分、テストの点数で言うとずっと学年1位だった朝川さんレベルだと思う。履歴書見てマジでびびった。

 言葉は軽めだけど、面接中も所々に知性を感じさせたので採用。そして、ダンジョン探索者としての才能も充分だと俺は思っている。


「じゃあ最後」

「はい! 僕の名前は岸谷堂満きしやどうまんです! これからearly birdに所属させていただくことになりました! よろしくお願いします!」


:おー、こっちも新人くんか

:既存配信者3人に新規配信者2人か……

:如月君も入れると4人だぞ

:社長系配信者

:かわいい感じの子じゃん

:男だぞ?

:だからいいんだろ

:♂!?


 最後のメンバーは岸谷堂満さん……本名は蘆屋俊太あしやしゅんた。年齢としては宮本さんに近い23歳で、元々専業の探索者を目指して、バイトしながら探索者をしていたらしい。探索者としての実力は全然って感じで、正直ダンジョン潜る時間を全部バイトに回した方が時給いいんじゃないかってぐらい貧弱。だが、彼に関してはそもそもソロで潜るのが間違いって戦闘スタイルなので仕方ない部分もあると思う。つまり、彼は最低でも常に2人以上で潜るのがいいと思う。

 採用理由は、単純に好青年だったこと。独特でとっても面白い戦闘スタイルをしていたこと……なにより、底辺のダンジョン探索者でありながら必死に食らいつこうとしていたその熱意だ。間違いなく、彼もダンジョン探索者としての才能を持って生まれた側の存在だ。


「と、いう訳で……これから俺、アサガオさん、カナコンさん、堂々鈴々さん、美美香さん、岸谷堂満さんの6人を初期early bird所属ダンジョン配信者としてやっていこうと思います」


:初期?

:2期の予定あるのか

:前に言ってただろ

:2期の応募する人は地獄に引きずり回される覚悟をしておけって言ってたぞ


「え!? 俺たち地獄を引きずり回されるんですか?」

「やだなー、全員下層をソロで探索できるぐらいの実力にはするつもりですって言ったじゃないですか。下層で暴れるのは、想像以上に大変ですよ?」

「確かに」


:納得のアサガオ

:経験者は語る

:アサガオちゃんが強く頷くのは草

:今となっては下層で無双してるけど、最初は下層で死にかけまくってたな

:新人君たちもこうなるのか

:ご愁傷様です


「ひぇ!?」

「ばっちこい、ですよ!」

「はい! 岸谷堂満頑張ります!」

「パンダさんだけなんで逃げ腰なんですか? 先輩なんですから頑張ってくださいよ」


 正直、堂林さんはそこまで心配するまでもないと思うけどね。

 これで配信者たちの紹介も終わったことだし……次の配信はearly birdの如月司として、だな。

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