第105話
「それにしても、ダンジョンができてからこの遺跡となる文明が築かれたのか、文明が築かれて滅んでからダンジョンに飲み込まれたのか……気になるところですね」
第3の選択肢としては、そもそも崩壊した文明風のダンジョンが出来上がっているだけで、ここに人類が住んでいた訳ではないとか。歴史公証において滅茶苦茶傍迷惑な話だけど、全然あり得ない話ではないだろう。渋谷ダンジョンだって中に海が出来てたんだから、名古屋ダンジョンに文明に見える建物を作ったっておかしくないだろう……いや、冷静に考えるとおかしいな。
:端見える?
:見えない
:この階層恐ろしく広いんだけど、こんな階層も1人で全部攻略するんですか?
:深海を攻略した如月君が今更この程度で止まる訳ないだろ
「まずは階段を探すところから、ですかね……階段がないのならばこの61階層で名古屋ダンジョンは最下層ってことになりますけど」
:ここが最下層だったら熱いな
:なにが?
:目頭がやろ
:なに勝手に感動してんねん
:結局名古屋ダンジョンは如月君以外には攻略できないクソダンジョンってことには変わりないんだよな……名古屋圏に住んでるワイを誰か助けて
:え、名古屋県?
:愛知県民をキレさせる魔法のワード「名古屋県」は禁止カードだぞ
:TCGかなにか?
:レスバカードバトルやろ
うーん……空を飛んでダンジョンを見て回っているが、全く階段らしきものが見当たらない。
関係ない話かもしれないけど、この61階層……天井が滅茶苦茶高いので空を飛んで上から61階層を見下ろせてしまう。頭上にある海に突っ込まなければ、普通に快適なダンジョン攻略ができる。
:しれっと飛ぶな
:まぁ如月君だし
:神代ちゃんができるんだから如月君ができるのは何の疑問もないんだよなぁ
:そもそもできるって前から言ってなかったか?
:なんか前の配信で飛んでたような
:お前らの記憶ガバガバか?
こうなってくると、逆に頭上の海の中が気になるな。月のように淡く光り輝くものは、ただ光っているだけの水晶だったし……天后の力を借りてちょっと海に突っ込むかな。
『貴方様、下になにかが』
「んー?」
下?
しれっと空を飛んでついてきていた天后が指を差した方に視線を向けると、キラリと何かが光を反射している。
「金属?」
:レアメタルとかやろ(適当)
:巨大な原石とかじゃないの?
:レアメタルってもっと地中に埋まってたりするもんじゃないんですかね?
:ダンジョンだし
:ダンジョンだからで全部済ませようとするな
:説明放棄
ちょっと近づいてみるかと思った瞬間に、金属光沢を放っていたものが駆動音を響かせながらこちらに向かって魔力弾をガトリング砲のように連続で放ってきた。
「おわぁっ!?」
:なにあれ
:対空砲でしょ(思考停止)
:はえー、古代都市ってすごいなぁ
:誰もついていけないの草
:いや、普通に考えてダンジョンの深層に建物があるだけで理解できないのに、そこで対空砲があったら思考も停止するだろ
魔力を固めただけの弾丸がそれこそ対空火器のように連続で放たれ、ちょっとやばい。俺は神代さんみたいにとんでもない速度で飛行することなんてできないので、横に避けるにもちょっと限界がある。
「『勾陳』!」
このままだと避けきれないと思ったので勾陳による結界を展開した。ガトリングと言っても魔力弾なので、撃たれている魔力よりも密度の濃い魔力を結界として展開すれば防ぐことができる。
俺が撃たれ始めた直後に、下で待機していた沙悟浄と貴人は既に動き出している。順調に行けばそのまま対空砲を破壊してくれると思うが……流石に十二天将クラスを4体も同時に展開するとちょっと余裕がなくなってくる。通常の式神ぐらいだったら何体召喚しようともそこまで大差ないんだけどな。
:なんかこういうゲームやったことある
:それ、多分如月君の部分が戦闘機とかじゃないんですかね
:如月君は戦闘機だった…?
:空飛べます、1人で大量に戦力召喚できます、本体も強いです、バリア張れます
:ナーフしろ
:もう全部あいつ1人でいいんじゃないかな
:如月君のナーフによるバランス調整じゃなくて、探索者全員のアッパー調整しろ
:無理
通用しないとわかっているはずなのに無茶苦茶撃ってくるので、雷魔法を圧縮したビームをお見舞いしてやったら、何故か別の3方向から追加で対空砲が飛んできた。
「貴人、詳細頼む」
『詳細と言われましても……本当にガトリング砲が石畳の下から飛び出しているんです』
沙悟浄と二手に別れて同時に対空砲を破壊した貴人によると、マジで石畳の下からニョキっと対空砲が生えているらしい。残りの一つは天后が頭上の海から水を引っ張ってきて破壊していたが……これだけで終わるとは思えない。
「しばらく周囲の警戒……を……」
しようかと思ったら、古代都市の中心にあった城のような建物の上部が開いて、巨大なレールガンのようなものが飛び出してきた。勿論、照準を合わせられているのは……俺だ。
咄嗟に勾陳に最大出力で結界を張らせると、同時に俺の前方に存在する結界に魔力の塊が衝突した。火花のように魔力を散らしながら結界と魔力弾がせめぎ合っているのを見て、俺は流石に冷や汗が出た。間違いなく、生身のまま受けてたら死んでいた。
:ひぇ
:如月君死にそう
:マジでやばいダンジョンじゃないか
:ちょっとネタにできないぞ
この61階層は間違いなく最下層だ。そして、さっきからこの階層の兵器を動かしている存在が、この名古屋ダンジョンのラスボスとでも言うべき存在。まだ姿は見えないが……これだけこちらを攻撃してくるとは上等だ。確実に見つけ出してぶっ殺してやる。
「名古屋ダンジョン、完全攻略までもう少しですね」
:なんで楽しそうなの?
:戦闘狂だから
:否定できねぇ
:普通に死にそうだったよね?
:言うほど死にそうだったか?
:なんか直撃しても死ななそうな気はするよね
:いや、流石に今のが直撃してたら如月君でも死んでただろ
:うーん……わからん
:直撃してないんだからなんの問題もない
:逆にこの階層のボスがどんな存在か知らないけど、今のが如月君を殺せる最初にして最後の可能性だったんじゃないかな?
:そうだと思う
今までの相手の動きを見ていればわかるが、今回の敵は……この都市そのものという訳だ。面白いじゃないか……俺がこの古代都市を滅ぼしてやる。
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