開門5
「初めまして。どうやら、この世界に迷い込んで来たようですね」
ニジ先生は、優しく微笑んでくれた。
長い黒髪が和風な女性を思わせたが、先生は白衣を着ていた。
理科の先生なのかもしれない。
シズクちゃんに連れられて来た街の中に、学校があった。
古い木造の校舎で、どこかの田舎に来たような。
こんな古い学校って今どきあるんだって思った。
その職員室に、ニジ先生はいたのだった。
「戻る方法が分かるまでは、この村でゆっくりしてくといいです。その間は、ここの学校にいるといい」
優しくしてくれるニジ先生だったが、ここが元の世界と違うと知って私はとっても落ち込んでいた。
そんな私の様子を見て、ニジ先生が魔法陣の話をしてくれた。
「この世界はね、魔法陣で成り立ってるのよ。多分あなたが知っている『漢字』と考え方は一緒」
漢字の話をされたので、私はちょっとだけ反応してしまった。
「部首って読んでいるものによって、漢字の性質って大きく変わるわよね?」
「はい! 知っています。先ほどシズクちゃんが使っていた、『草』のような魔法陣。草冠がポイントだと思います!」
漢字の部首の話をされて、少しだけ元気になったので答えた。
そうすると、ニジ先生は笑って頷いてくれた。
「そうね。あとは、部首じゃな部分に注目するっていうのも大事なのよ?」
部首じゃない部分。私はあまり詳しくは知らないな……。
ちょっと考えていると、ニジ先生は話を続けた。
「例えば、丁という字。これは、真っ直ぐに立ち上がる様を表しています」
ニジ先生が持っていたノートに、字を書きながら説明してくれた。
「この『丁』の字に水を表すさんずいをつけると? これはなんと読むでしょう?」
私はすかさず答えた。
「みぎわ、なぎさと読みます!」
先生は笑って答えてくれる。
「正解です。『汀』は何を表してますか?」
「さんずいなので、水を……」
そこまでしか私は分からなかった。
「そしたら、もう一歩踏み込みましょう。丁の字。部首以外の部分ですね。これは、真っ直ぐ立ち上る様を表しています。せっかくなので魔法陣にしてみましょうか」
そういって、職員室にあった黒板に丁の字を何個か書いていった。
「丁に手偏がつけば、真っ直ぐに上から打ち付ける様を表す『打』という感じになります」
魔法陣を書くと、何かが打ち付けられて黒板がドンッと音を立てて揺れた。
魔法だ。
呆気に取られていると、次の丁の字のところに字を付け足していった。
「火偏が着けば、『灯』ですね」
先生が字を書き終わると、立ち上る火柱が出てきた。
危ないという感じで、すぐに先生は火を消してくれた。
「これを見てから、最初の字。汀を書いてみましょう」
今度は、水柱があがった。
「波打ち際に上がっている水と同じです。これが魔法陣です」
私はただただ驚いていた。
「先生、凄いです……!」
そして、これを極めていけば、天空魔法というのも使えます。
実際に、外でやってみましょう。
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