21.男爵、よりにもよってドラゴンおかわり!(したくない)
「よぉし、それじゃボーナスもらっちゃおう! どんなのが出るかな!」
ドラゴンをやっつけたら、領民志願者がたくさん現れた件。
その数、なんと十三人である。
今までが二人きりだったのを考えると、結構な人数である。
うふふ、こりゃあ、特大ボーナス待ったなしだよねっ!
「前は『のびる』でしたから、今回は『広がる』あたりじゃないですかね!」
マツはワクワクした表情である。
「まずはプリンを食べなきゃ! 疲れた体に染み渡るはずだよ!」
私はと言えば、砦の変化よりもプリンの方が気になる。
前回は透明な容器に入っていたのだが、今回も変わり種が用意されているのだろうか。
素敵なボーナスを待ってますよ、砦ちゃん!
うひひひ、涎が出てきそうだよ、お行儀悪いけど!
ぐごがぁああああああ!
そんな時だった。
私の耳に信じがたいほど大きな怒号が飛び込んできたのは。
「りょ、りょ、領主様! アークドラゴンのもっと巨大なやつが来ましたぁああああ!」
ついで、村人の人が大きな声をあげる。
は? うそ、なんで?
私、倒したよね!?
さっきの夢だったとかじゃないよね!?
「あいつよりも、もっと大きい奴ですっ!」
「ひぃいいい、こっちに来ますよ!?」
屋上に上った私たちは目を見張ることになる。
先ほど砦を襲ってきたやつの数倍の大きさのドラゴンがこちらに向かってきているのだ。
どすん、どすんと歩く様子はまさに破壊の申し子。
あんなのに襲われたら、いくらなんでも砦が破壊されちゃうじゃん!
「ひぃいいい、こんなボロ砦におっても死ぬしかない! 逃げるしかないぞいっ!」
「俺もだっ! 自称男爵のところで死にたくねぇ!」
「殺風景な砦で死ぬなんて私もゴメンよっ!」
恐れをなした村人たちは砦から慌てて逃げていく。
せっかく領民が増えたと思ったのに、なんて薄情な。
しかも、そこはかとなく私や砦ちゃんのことディスってるし。
だけど、気持ちはわかるよ。
あんなのが襲ってきたら命がいくらあっても足りない。
ひぃいいい、今まで以上に絶体絶命のピンチじゃん。
「私は残ります! 戦いがあるところに、メイメイありですよっ! ひとまず、見張ってきます!」
村人のうち、砦に残ったのはメイメイだけとなった。
彼女の体力はもう回復したらしく、元気いっぱいに屋上へと駆け出していく。
すっごい回復力。
若さってすごい。
「あのドラゴン許せませんよっ! せっかくボーナスをもらえるタイミングだったのに! ぶっ殺します!」
マツはやたらと怒り狂って、地団太を踏む。
気持ちはわかるよ、本当はのほほんとボーナスのプリンを食べるはずだったのだ。
それなのに、巨大なドラゴンと相対しなければならないとは最悪である。
毒キノコも武器も戦える人もいない、そんな極限状況で。
「……ボーナス!? もしかしたら!」
とはいえ、私は一つのアイデアに思い至るのだった。
そう、万に一つの可能性だけど、砦に何かのボーナスが発動しているかもしれないのだ。
せっかく男爵に慣れたのだ、座して死を待つなんてことはできない。
こうなったら、あがきにあがいてやるっ!
「マツ! 砦の状態をチェックするよっ!」
「えぇええ、みんな、いなくなりましたよっ!?」
「つべこべいわないのっ! 砦ちゃあああんっ、ステータスオープン!」
私はなりふり構わずに大きな声で叫ぶ。
なんせ巨大ドラゴンが迫っているのである。
遠慮してたら死ぬ。
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【サラ男爵の砦ちゃんのステータス】
ランク:ただのメイド砦(最下級)
素材:頑丈な岩
領主:サラ・クマサーン
領民:1
武器:スリングショット
防具:リボン・ヘッドドレス
特殊:なし
シンクロ率:15% (ええぞ)
※十万ゼニー獲得! 以下の武器を選ぶことができます。
1. 46センチ砲(弾:1)
2. ハープーンミサイル(弾:1)
3. 小型レールガン(弾:ゼロ)
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「変わってる! マツ、画面が変わってるじゃん!」
「本当ですね!」
私たちは大きな声を上げる。
画面に現れたのは三つの選択肢だった。
十万ゼニーを獲得したらしいのだが、その理由はさっぱりだ。
わけのわからない事態に頭がおかしくなりそう。
だが、混乱してる時間はない。
選択肢から一つを選ばなければ。
46センチ砲に、ハープーンミサイルに、レールガン。
どれもこれも聞いたことのない言葉ばかりである。
弾と記載されているところからすると、おそらくは武器なんだと思う。
ひとまず、3は却下だよね。
弾がないとかって有り得ないし。
「逆に3にするっていうのはどうですか? めちゃくちゃ、かっこいいかもですよ?」
マツは真剣な顔で言ってくるけど、却下だ却下。
弾がゼロって書いてあるじゃん!
こんな場面でかっこいいとかどうでもいい。
そうなると、1か2というわけである。
ふーむ、どっちがいいかなぁ。
「……ハープーンって何か間抜けな感じしない?」
「そうですねぇ。逆に強いかもしれませんけど、はぁ? ぷぅん? って感じですからね。匂い攻撃かもしれませんね」
「46センチ砲って言うのは、明らかに直径46センチの大きいのが出てくる感じでしょ、たぶん」
「うひひ、大きくて動くもの! それにしましょう!」
珍しく気の合う私たちである。
「ボーナスは1でお願い!」
そして、私は叫ぶ。
例の青いガラス板に向かって。
さぁ、46センチ砲。
どんなものが出るって言うんだい!?
ごくりとつばを飲み込んだ矢先、驚くべきことが起こる。
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