第2話 女神の友達、泉の精霊
数10回に及ぶ食材のカード化を繰り返すことで、食材のミニチュアサイズがミニサイズにすることが可能になった。
『女神にりんごが認知されました
女神がりんごの種を獲得しました』
ご飯は色々あったけどミニサイズならなんとかなったみたいね。
生物に関しては時間経過で1時間するとカードに戻ることがわかった。
出した後にはクールタイムがあるようでカードの中央に待機中のマークが図鑑に表示される。
まだ長い間は出せないみたい。
ただ、図鑑登録が済んでいるからスムーズだ。
さて生物の話に戻ろう。
𑁍𓏸𓈒𓂃𓂃𓂃𓂃🕊𑁍𓏸𓈒𓂃𓂃𓂃𓂃🕊
<1時間前>
最初に生き物を出したのは、私の近所に住んでいた飼い主が放任主義の珍しいシャムネコ。
よく私の所にエサを求めてきていたんだよね。
普通は3、4キロの大きさなんだけど、いるのは手のひらサイズということだ。
相変わらず食材同様出るものは小さい。
ただ違うのはかなりなついてくること。
写真に写ってた子はもっとツンツンしてなびかなかった。
手の上に乗りマタタビを嗅いだのかと思うほどじゃれている。
「くっ⋯⋯ちいさいぞ。しかしこんな感じなら多少危険なのも出しても平気かな⋯⋯」
『新たな価値を産み出しました
女神に種族ネコが認知されました』
『へえ~ネコっていうのね。
珍しい生き物だわ。可愛い~!!
色んな場所に置きたいわね。強いのかしら~』
ネコ知らないの?
ここの世界はどんな生物がいるのかかなり気になる。でも強さを聞いてきてるけどなんで?
『二足歩行なのは沢山いるわ。ただ四足歩行はほとんどいないわ』
たしかに料理を出した時も何の肉だって言ってたけど⋯⋯
知らないっていうか、この世界にないということなんだ。
「てか私、身を守る手段ないんですけど!」
『ああそれね。多分大丈夫よ!そとに出たら貴女にもわかるわ』
身を守る必要がないってこと?
でも確かに静かすぎるんだよね。ここ。
鳴く鳥の声や虫の声も聞こえないってこんなのおかしい。
気になって思い切って扉の外へ出てみる。
青々とした景色が広がる。大きな木のそばには一本の青い薔薇が咲いている。
おかしい…さっき出た時には花があるなんて気付かなかったのに…
でもキレイな薔薇だな~なんだかワクワクしてきたよ。
キラキラと光る先に泉に光が反射して虹がうっすらできている。
思わず私はスマホを持って虹がかかる泉を数枚撮りながらふらふらと近づいていった。
泉を覗くとなぜか見慣れない顔がみえる。
ん?誰これ?にこやかにそのかおが微笑んだ瞬間、泉に引きずりこまれる私。
やべー。これ!ちょーピンチ。
私泳げないんだよね。ゴボゴボと水を飲んでしまったみたい。
……ん?苦しくない。
遠くに光のスポットライトが照らされ精霊があらわれる。
『いらっしゃいませ!泉の精霊のスイートピーです。
本日は女神のスペシャルゲストが来るということで気合いいれましたよ!
さて泉に入られた貴方に質問です!
本日入られた貴方はどっちでしょ~?
それではシンキングターイム!!』
泉の精霊スイートピーはウインクをしながら、くるくるとステップを繰り出しずいずい近づいてくる。
私の目の前に来ると泉の精霊はノリにのっているようでサンバのような、上を向いたり手をたたく行為を繰り返している。
ちょっとこわい。
ジャジャジャン。
効果音とともに私の写真とさっき見た顔が映し出される。
なんで私の写真があるのか気になるけど、恐る恐る自分の写真を指さした。
『はい!あたりです!1名様ご案内しまーす!それでは初回ポイントのご利用ありがとうございます!
泉の秘密スイートピー渡しますね~。
甘い蜜をめしあがれ。はい!どーん!』
泉の精霊に突き飛ばされ奥の部屋に入ってしまった。
初回ポイントとはなんぞや。
奥の部屋に入ると腕に水が張り付き固定される。
『はーい!それでは手術はいります!』
手術ってなによー!
泉の精霊スイートピーがなにやら髪を触ったり、目元に触れたり唇をなぞってみたり。
でも優しい感じがして安心する。
私は目を閉じて泉の精霊に身体を預けた。
「うぅーん」
気がつくと私は泉の横で寝ていた。
かなり土まみれになっていたので、顔を洗ったんだけど、私の身体、違和感があるんだよね。
なんか服が大きい感じがするし世界が大きくなった気がする。
こうなったら確認するしかない!
服の中からスマホを出し内部カメラに切り替える。
「!?」
私はビックリしてスマホを思わず落としてしまう。
そこには私が昔、童話で見ていたエルフにそっくりな姿が。
「カトレア・グレース」
大好きだった童話のエルフの名前である。
好奇心旺盛な小さなエルフが色んな場所に旅立って物語を絵本にしていく話。
エルフの世界は小さく全てが大きな世界と繋がってたんだよね。
これを見て私も旅をしたくなって通訳頑張ったり写真を撮ったり、図鑑づくりに、はまったんだよね。
もう一度考えてみよう。
私は世界を知りたいと願った。
たまたま女神が聞いていた。
知らない土地に来たけど大事な書斎もあるし、私は色んな場所を見たりしてきたおかげでいろんなものが図鑑にでき、写真がカード化できて食べ物だって出せる。
多分この子はカトレア・グレースで間違いないだろう。
私はこの子の世界にたどり着いてしまったみたい。
ただ違うのは私自身。
通訳をしてた私がいないのだ。
あの泉の精霊スイートピーに見せられた写真の私。
確認したけどコンプリートブックの中にないの。
確信はないけど女神に私の身体ごと世界を取られた気がする。
代わりに私はカトレア・グレースとなって世界を文字どおり、世界を撮って発展していかなければ元の世界に帰る事は出来ないのだと思う。
「大変なことになってしまった」
考えているうちにスマホが鳴る。
スマホの文字を確認してみる。
『コンプリートブックのページが増えました』
コンプリートブック《マニュアル編》
項目
評判について。【発展に必要なものを見つけることでポイントが振り込まれる】
教育について【発展に必要なものを与えることでポイントが振り込まれる】
ディストピア進捗状況。図鑑貢献度 5/100%
ディストピアで現時点で撮った写真は88枚でおおよそ16枚で1%撮っている計算になっている。
そういえば建築物はどうなるんだろ?
大きさと品質が変わるってかいてあるけど。
お気に入りの写真をコンプリートブックにセットし、
いざ発動!!
写真の中央に写っているのはコーヒー専門店、マクシムだ。
やはりこれがないとやっていけない。
サイフォン式のコーヒーを扱うお店であの淹れている時間を待つ楽しみがたまらないのだ。
店長は私の叔父さんだったからよく写真はとってたんだよね。
あとはできるだけ詳しく書いてと…
【コーヒー専門店、マクシムが女神に認知されました。中の情報提供を求めています。】
外観はコーヒー専門店そのものなんだけど中まで反映されてないってことね。
おおっ!!でたよー。
んんっ?大きさが私サイズなんだね。
とりあえず入ってみようかな。
中はまだ空間が白い空間になっていてワンフロアになっている。
中の写真をセットして図鑑に追加する。
カード化と共に周りがまぶしく光ると中の構造が変わっていく。
《女神がコーヒー専門店を理解しました。
コーヒー豆、椅子、机、内装、サイフォン式コーヒーメーカーを認知しました。○○の叔父昌三を認知しました》
叔父?えっ?
確かに脇に写ってたけど中心にはいなかったはず⋯⋯。
昌三おじさんはカップを拭いている。しかしなんか狭い。
椅子と机の幅近いし、バーカウンターにいるおじさんとの距離がほぼない。
「客か⋯⋯」
昌三おじさんは基本無口な人で無愛想な感じだけどすごく優しいんだよね。
最近は忙しくて会いにいくこともできずにいたから嬉しい。
懐かしいな。
でも今の私は財布(通貨)持ってないからこの場所であの至福のひとときは味わうことができない。
うなだれていると様子に気付いた昌三がコーヒーを淹れ始めた。
「飲むと良い。俺のおごりだ」
淹れられたコーヒーを両手でつかみ香りを楽しみながら一口味わう。
んー。うまい。
嬉しくてとがった耳がヒクヒク動く。
多分またここに来ても昌三叔父さんは私のことは覚えて無いんだろうな。
生物の記憶は引き継がないとコンプリートブックに説明が書いてあったけど、技術面でコーヒーを淹れる行為ができたことでわかった。
ただ客を相手にしているだけなのだ。
コーヒーを両手に持ちしばらくの間私はつかの間の休息を楽しんだ。
※カトレア・グレースの写真に写った景色などの紹介!!
このURLは作者が描いたイメージを紹介します。近況ノートにて載せている物を想像する為に用意しました。
今回は主人公 カトレア・グレースのイメージ紹介です。
想像のお供にどうぞ。
https://kakuyomu.jp/users/jinnaiyuan/news/16817330659495995648
その②
https://kakuyomu.jp/users/jinnaiyuan/news/16818023212117516659
女神の友達 スイートピーのイメージが見たい方はこちらへ
https://kakuyomu.jp/users/jinnaiyuan/news/16817330659547944615
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます