死して尚きみ想う

羊糸羽己

プロローグ

案外人は簡単に死ぬ。じゃあまた明日なんて人は言うけど明日会える保証なんてない。道を歩いているときに上から植木鉢が落ちてくるかもしれない。あるいは石に躓いてこけたときの当たり所が悪いかもしれない。そんな感じにとっさに死んだら走馬燈も見ずに死んでゆくのか。少なくとも今の僕は少しずつ近づいてくる死に対して走馬燈を見ている。平凡だったな僕の人生。母は僕が生まれてすぐに死んだらしい。だから母の顔も知らない。それからは父と2人きりで生きてきた。普通に小学校、中学校、高校、大学と進学しこのままいけば普通に大学を卒業して普通に就職する。そんなはずだった。中身のない走馬燈も10日前に見た映画の1シーンが映し出されフィナーレを迎えようとしていた。死んだらどうなるかなんて考えたこともなかったけどできれば次に生まれてくるときは美少女で!なんて願っているうちに映画は終わりを迎えた。

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