第1043話 穴熊

「ん? ゴブリン?」


 久しぶりにゴブリンの気配を察知した。まだいたんだな。


「ゴブリンがいるなら請負員にしておくか」


 いなかったからマーダ族の巨人を請負員にしなかったが、こうしているならドワーフたちを請負員にしておくか。駆除してくれたら稼ぎにもなるし、ゴブリンの情報も得やすくなるからな。


「ルディーム、マガ、ミク、ダムガ、お前たちをチームリーダーとし、ゴブリン駆除請負員とする」


 チームリーダーとはしていたが、皆の前で宣言してなかったので、高らかに宣言して知らしめた。


「リーダーの証しとしてこれを渡す」


 請負員カードを渡し、名前を登録したらDPー12を渡した。


 ドワーフと言ったらショットガンってわけじゃないが、なんかそんな流れになってしまっている。まあ、P90を使うドワーフもいるので、使いたい銃があるなら稼ぎで買ってもらうとしよう。


 使い方を一時間くらい使って教え、一人ずつ弾を装填させて撃たせた。


「マルゼ。四人を連れてゴブリン駆除に向かう。先行して足止めしてくれ。四人に駆除させるから」


「了解」


 ゴブリンのいる場所を教えると、元気よく駆けていった。


「よし。オレらもいくぞ」


 四人を連れてゴブリン駆除に向かった。


 ゴブリンは三十匹の群れで動いているようで、流れのような感じだった。


「逃げてきたか?」


 ゴブリンは勝てないと判断したらすぐに逃げ出す。セフティーブレットの面々が暴れている。魔王の手下でもなければ逃げ出しても不思議ではないだろうよ。


「お、マルゼが暴れ出したな」


 P90を持たしているので流れるように足止めしている。ほんと、あの姉弟の将来が恐ろ頼もしいよ。


「よし。あと少しだ。他の者に当たらないよう注意しながらゴブリンを撃ち殺せ」


 平和に農作業ばかりしてきたヤツらに引き金が引けるか心配だったが、命懸けの逃避行が精神を鍛えたのだろう。躊躇わず引き金を引けていた。


 一人三万円にもならんが、請負員にしたのが主で、オレが与えたものが消えないようにするのが本当の理由だ。


 それに、半年もすればゴブリンは増えるはず。請負員が美味いとわかれば進んでゴブリン駆除に働くだろう。


 請負員の特権として、稼いだ報酬でハンバーグステーキを買わせて食わせてやった。


「美味いだろう。ゴブリンを駆除すればこんな美味いものが毎日食えるし、家族を豊かにしてやれるぞ」


 なんだか詐欺師になった気分になるが、稼げば楽な暮らしができるのだからウソではない。ガンバレ、だ。


「おじちゃん、もうゴブリンいないの?」


「今のところいないな。この群れはマガルスク王国から逃げてきたのかもな」


「残念。もっと撃ちたかったな」


「なら、四人を狩りに連れてってくれるか? 周辺の地形も教えておきたいからな。印をつけながら三日くらい遠征してきてくれ」


「了解。じゃあ、高い山があるからそこを目指してみるよ」


「頼むよ」


 食料と必需品をリュックサックに詰めて四人に渡し、あとはマルゼにお任せした。


 オレは一人で戻り、ドワーフたちの護衛をする。


「タカト」


 砂浜の桟橋でのんびりしていたらガガリたちがやってきた。


「おう。コラウスに向かう人選は決めたか?」


「ああ。八人でいくことにした。いつでもいけるぞ」


「じゃあ、五日後でいいか? 今、ドワーフたちを鍛えているから」


「わかった。準備を進めておく」


「了解。タダオンたちはどうした?」


「明日には村に帰るそうだ」


 なら、解体は終わったんだな。結構時間がかかったな。


「わかった。五日後ぐらいに村に向かうよ。あ、そこのEARを持っていってくれ」


 出したまま放置したままだったわ。ガガリに持たせるとしよう。


 ガガリたちと別れ、マリワを呼んでしばらく空けることを伝えた。


「マリワも念のためEARを使えるようになってくれ」


 DPー12だけでは仲間たちを守れんだろうからな。


 何人かにも撃ち方を教えていると、マルゼたちが帰ってきた。


「ご苦労様。結構仕留めたな」


 なんだ? ネズミか? ウサギか? こんな生き物もいるんだな。


「穴熊だよ。肉は硬いけど、燻製にすると長持ちするんだ」


 穴熊なんだ。異世界の生き物は謎ばかりだよ。


「そっか。思ったより食料になるものが豊富なんだな」


「銃があるから簡単に狩りはできるんだよ。弓矢で仕留めようとしたら三十メートル離れたところから射たないとダメなヤツだからね」


 大変なんだな。この世界の狩りは。銃を取られたらオレはなにもできんな。


「マルゼ。コラウスに戻ることになった。お前はどうする? 七日もすれば戻ってくるが」


「う~ん。狩りがしたいから残ってる」


「了解。P90でいいか? アサルトライフル使うか?」


 結構、P90を撃っている。慣れたならアサルトライフルでも構わんだろう。


「うん、使う!」


 ってことで、光学照準とサプレッサーをつけたX95を取り寄せてマルゼに渡した。


 マガジン三つと弾二百発も渡しておく。欲しいときは自分で買ってくれ。


「安全第一、命大事にだからな」


「了解です」


 X95を持って敬礼した。

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