第767話 汚物は消毒
気持ちを入れ替えて海を目指した。
水の魔石を手に入れたので、機動歩兵G兵器に乗り、斧──トマホークを両手に持って雑木が生える街道を進んだ。
巨人たちには道を整備しながら進んでもらい、オレはどんどん進んでいく。
「孝人様。魔物です」
どんな理屈かわからないが、マリンもカレンもプランデットを装着でき、コクピットにまで通じるのだ。
「殺しておけ」
「畏まりました」
これも理屈はわからないが、オレの行動を見て学習したようで、魔物を発見でき、命令したら殺せるようになったのだ。
「謎が多すぎて考えるのも嫌になるな」
まあ、答えを見つけたいわけじゃない。ファンタジーな世界で生きるには適度に脳死でいかないと理不尽に殺される。スッゴーイで流しておけ、だ。
「チェーソーでもよかったかもな」
エルガゴラさんに付与魔法をかけてもらえば刃が欠けることもなく燃料が切れるまで動いてくれる。いちいちトマホークを振るより効率的かもしれんな。
「ん? 水魔法ってこの中からでも使えんのかな?」
って試したらできちゃいました。マジか!?
「……女神製はよくわからんわ……」
自由度が高かったり変なところで制約をかけたりとよくわからんよ。このコクピットからホームに入ると、なぜかコネクトが切れて、機動歩兵G兵器にコネクトした場所に出るのだ。
「まあ、道具なんて使い方次第。状況状況で使えばいいだけだ」
道具や能力に依存はしない。あって当たり前とは思わない。使えるときと使えないときがある。だって、道具も人間も万能ではない。それ故に知恵で補うしかないのだ。
「知恵も足りてないんだけどな」
オレは凡人。高校を卒業したら勉強なんてしないほとんどしてこなかった。この世界にきてやっとエンジンがかかった男でしかないのだ。
「やめやめ。そんなこと考えても仕方がない。死なないためにがんばるだけだ」
暗い考えを振り払い、トマホークを振るって雑木を払いながら進んだ。
廃集落から街道に出て海を目指すこと五日。山の中腹からロンレアの街が見えた。
コネクトを解除して外に出る。
プランデットの望遠機能で城壁を見る。
「ここからでは城壁が破られているのは見えないな」
城壁前はかなり荒れており、人の往来している感じ見て取れない。完全に自然に還っているよ。
「ここらでは熱源や動体反応は感知できないか」
まだ十キロは余裕で離れている。プランデットの機能ではわからんか。
「孝人様。魔物です」
「またか。街に近づくに連れ増えていくな。マリン、カレン。殺せ」
オレも弾を装填してAUGを構えた。
「ラダリオン。魔物だ。そちらからわかるか?」
少し距離を取ってついてきているラダリオンに連絡を入れた。
「わかる。狼の群れだね。かなりいる」
狼か。ゴブリンがいないのはそれが原因か。狼、腹が減っているときはゴブリンを食うみたいだからな。ゴブリン以上に悪食っぽいようだ。
「了解。発見したら殺せ」
「わかった」
群れだとショットガンのほうがいいかもなと考え、ホームに入ってベネリM4装備に換えた。
出てくると狼との戦いは始まっており、マリンとカレンの背後に立ち、撃ち漏らしたのを殺していった。
戦力差はこちらが圧倒的に不利だが、火力は圧倒的にこちらが上。マリンもカレンも腕がいいので近づけさせることなく壊滅させられた。
狼も食えるらしいが、いちいち集めるのも面倒なので、血を抜いたらマリンにマナイーターを持たせて魔力を吸収させた。
「ほんと、バデット化は面倒だぜ」
なんでバデット化するかはわからんが、どうせ碌でもない理由だろうよ。ダメ女神のダメさが体現した世界だよ。
「よし。こんなものでいいか。あとは自然に還れ、だ」
コネクトとしてまた雑木を切り払いながら進んだ。
山を下りて平地に到着したらまた廃村があった。
「木造の家ばかりだから再利用もできんな。マリン、カレン、離れていろ」
薪にする価値もなさそうなので、ガソリンを撒いて火炎放射で燃やした。
「火炎放射、便利だな」
こんなとき、「汚物は消毒だー!」とか叫ぶべきなんだろうが、誰も見てなくてもそんなことを叫ぶのは大事ななにかを失いそうな気がするんで止めておいた。
「暗くなってきたな」
乾燥していたからかよく燃えくれたからすぐに鎮火した。
「ラダリオン。消火器を持ってきて消火してくれ」
コネクト解除するのも面倒なので、ラダリオンにお願いした。
「わかった」
消火器を持ってきて燃えたところにかけた。
「ラダリオン。今日はこれで終わりだ。そこを均してくれ。マリンとカレンもホームに入れるから」
パレットに載せて荷物とすればホームに入れられるのだ。
誰かがいるなら外に放置するんだが、巨人たちがここにやってくるにはまだ数日かかる。なにかあったら困るからホームに入れることにするのだ。
簡単に均してもらったらフォークリフトを出してきてマリンとカレンを載せてホームに入れ、続いて機動歩兵G兵器もパレットに載せてホームに仕舞った。
「機動歩兵G兵器用のリフトトレーラーとか売ってないないかな~?」
二百キロもないのだからなにか代用品になるものがあるはず。今日は麦焼酎でも飲みながら探してみるか。
残り火がないかを確認してからホームに入った。
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