第756話 団結 *93000匹突破*

 ──リフレッシュ休暇。


 ホワイトな企業にだけ存在する都市伝説級の休暇。オレが働いていたホワイトな工場にはなかったが、真なるホワイト企業に就職した友達には与えられたそうだ。


 セフティーブレットは企業ではなく団体だが、職員には設けてやりたい制度だ。そのギルドマスターたるオレにも設けてもらいたいもんだがな!


 ──ピローン! 


 またかい。飲んでいるときや二日酔いのときは遠慮しろや。


 ──九万三千匹突破! 順調順調。このまま突き進め! あ、でも、そろそろ北に注意したほうがいいですよ。


 あん? 北に注意しろ? どういうことだよ!? ちゃんと説明しろや!


 だが、肝心なことは言わないことに定評(オレの中でな)があるダメ女神。勝手にやれとばかりにアナウンスはなかった。


「全員起きろ! すぐに戦闘用意だ! ラダリオン! 北を警戒しろ! イチゴ、ラダリオンをサポートしろ!」


 回復薬中を飲んで二日酔いを吹き飛ばした。


「タカト、なにがあった!?」


 酒に強いマーダたちがすぐに集まってきた。


「女神からのアナウンスだ。北に注意すべきことがあるらしい。まだ時間はありそうだが、いつでも戦えるようにしておけ。オレはホームに入る」


 昨日の戦闘で使った銃は手入れしてない。まあ、今回はニャーダ族も巨人もいる。新しいAUGを買うとしよう。


 ホームに入り、中で休んでいたミリエルにダメ女神のアナウンスを伝え、オレが用意するまで外をお願いした。


「わかりました」


 すぐに中央ルームを飛び出していった。


 タブレットをつかみ、新しいAUGを買い、アイテムバックに入れた空マガジンを出して弾を込めた。


 時間がないので三本だけにし、AUGは背に回し、偵察ドローンとリンクスを持って外に出た。


「様子は?」


「まだなにも起こっていません。ニャーダ族は偵察に。巨人たちは準備中です」


「了解。ミリエルも準備をしてこい。あと、ブラックリンを出してくれ」


「わかりました──」


 ミリエルがホームに入り、プランデットをして偵察ドローンを北に飛ばした。


 しばらく飛ばすと、元集落と思われる朽ちた家屋が見えてきた。

 

「……巣?」


 みたいなものが元集落の真ん中にできていた。


 集落のサイズから巣のデカさが異常だ。あれでは巨大な生き物が巣を作っていることになるぞ……。


 辺りにセンサーを向け、その主がいないかを探す。


「……エサでも探しに出ているのか……?」


 巣の周りにはなにか巨大な骨が転がっている。


「地上の生物とは思えない骨だな」


 エサを獲りに海までいって、わざわざここまで戻ってくるのか? 手間じゃないか?


「ん? モクダン?」


 巣の周りに熱源がいくつかあり、よく調べたらモクダンだった。


「モクダンが増えた理由はおこぼれを食っていたからか」


 巣の主はそこまで綺麗に食べることはしないようだ。迷惑なヤツだよ。


 ピピッと警告音。その方向にカメラを向けたらグロゴールがいた。マジかよ……。


 マイセンズにいたグロゴールより一回り小さいが、その分、小回りが利きそうだ。


 偵察ドローンに気づいたものの、食い物と判断されなかったようで素通りされてしまった。まあ、サメみたいなものを口に咥えているのでスルーされたんだろうよ。


 モクダンもグロゴールに気づいたようで隠れているようだ。グロゴール的には残飯を漁るネズミぐらいにしか思ってないんだろうな。


 カメラをグロゴールに向けると、巣の外でサメを食らい、余ったものは遠くに投げてしまった。


 そのあとは汚れた顔を前足で拭き、巣に入って眠ってしまった。


 うるさいハエのように飛ぶのは逆鱗に触れると思って偵察ドローンを撤退させた。


 偵察ドローンの魔力消費量から約二キロか。すぐそこだな。嗅覚がよかったらこちらにきていたかもしれんな。


「タカトさん、どうでした?」


 プランデットを外すと、皆が集まっており、ミリエルが代表して訊いてきた。


「ここから二キロ先にグロゴールがいた。モクダンはグロゴールが捕らえてきたものを食っていて増えたようだ」


「排除しますか?」


「する。あんなのが近くにいたら流通に支障をきたすからな」


 ミリエルの問いにきっぱりと答えた。


「どうするんです?」


「こうする」


 と、地面に絵を描いて作戦を説明した。


 グロゴールと二度と戦いたくないとは思ったが、グロゴールみたいなのがいる世界。絶対、また遭遇するとは思っていたので対策は考えていたさ。


「ミリエルは館に戻ってエレルダスさんと相談してくれ。イチゴは連れていけよ」


「わかりました。すぐに話を纏めます」


「ああ、頼りにしているよ」


 叶うことならオレたちで倒したいが、相手は機動性に優れ、空も飛ぶバケモノ。不利と悟れば逃げるだろう。マイセンズにいたグロゴールも逃げに出たからな。


「これは命を賭けた戦いになる。無理強いはしないし、なにか損になることもない。参加は志願にする。明日の朝まで決めてくれ」


「明日の朝まで考えることもない。タカトがやるならおれらはともに戦うまでだ」


 マーダの言葉にニャーダ族(獣人)たちがマチェットを抜いて応えた。


「おれたちも付き合うぞ。外したりするなよ」


 ゴクルたちもショットガンを構えて応えた。


 一歩も引かない態度にため息が出た。あまり人数がいても面倒なだけなんだが、ニャーダ族や巨人にも活躍の場を与えて団結を築くのもいいかもしれんな。


「わかった。全員で当たるぞ!」

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