第754話 哀悼
夜には雨も止み、朝になったら快晴になっていた。
巨人の何人かにキャンプ地に残ってもらい、開拓をお願いしてロンレア伯爵領に向かった。
大体残り半分だ。オレとラダリオンはまた外れてロンレア伯爵領に向かうとする。
「なんだかモクダンが多いな」
ゴブリンどもに追われて群れでも作ったのか、三匹一組のモクダンにやたらと遭遇するよ。
「撃ちすぎて肩が痛いよ」
AUGからタボール7に持ち換え、何十発と撃っているから肩への負担が大きすぎる。ホームに戻って、何度もミリエルに回復してもらったよ。
「わたしもいきますか? アシッカも落ち着いてますし」
「そうだな。ロンレア伯爵領まであと少しだしな。ミリエルも鍛えておくのもいいだろう」
ミリエルも前に出るときもある。鍛えておかないといざってとき困るだろうよ。
「はい。では、メーとルーに話してきますね。あの二人にも休暇を与えないといけません」
「それならミヤマランにいかしてくれ。あの二人なら街でも強かに生きられそうだからな」
見た目は小さな女の子だが、中身は強かな大人だ。一人でも強いのに、二人なら無敵だろうよ。
「わかりました。お小遣いを渡してミヤマランの情報を集めさせますね」
「よろしく頼むよ」
ミリエルが戻ってくるまで休憩と銃の手入れをすることにした。
戻ってきたら簡単な武装をさせ、まずはラダリオンに出てもらってからダストシュート。続いてオレが出た。
「植生がちょっと違いますね」
「そうだな。海に近いからだろうよ」
高い山があるわけでもないのに不思議なものだ。コラウスから二百数十キロしか離れてないのにな。
「タカト。またモクダンの臭いがしてきた」
「またか。ミリエルは適当に撃って構わない。オレたちがサポートするから」
オレも銃の腕が上がった。モクダンくらいじゃビビらなくもなった。いや、ラダリオンがいるから怖くないんだけどね。一人ならビビります。ごめんなさい。
「わかりました」
度胸はオレの比ではないミリエルさん。エルガゴラさんが付与を施した416を構え、現れたモクダンに向けて連射した。
オレとラダリオンで脚を狙って足止め。ミリエルに倒させた。
倒したモクダンは血抜きをして魔石を取り出す。
「こいつらもかなり育っているな」
ゴブリンも増えて食料は減っているはずなのに、モクダンまで増えているなんてどういうことなんだ? 食うものがあるってことなのか?
「タカト。またきた」
「ハァー。もう何匹目だ?」
「少なくとも五十匹は倒している」
五十匹か。魔石が取れるのはありがたいが、これじゃ一向に先に進めんわ。
「ロンレア伯爵領の復活を邪魔されたくないしな、やるしかないか」
ここは人間の領域だと知らしめる必要がある。見逃すわけにはいかない。見つけたら即殲滅だ。
次に現れたモクダンも三匹一組であり、オレたちを認識するなり襲いかかってきた。
もう各個撃破しているようなもの。物量で押し切り、さらに五十匹近く殺した。
「それでも尽きないか」
もうモクダンの血で異変があったことは本能的に察しているはずなのに、モクダンは次々と現れる。
「もしかして、増えすぎて食料が足りないのか?」
「そうかも知れませんね。魔物は増えるときは増えて、減るときは減るの繰り返しだと冒険者だった職員が言ってましたから」
なるほど。なんらかの事情で食料は増えて子を増やしたが、その事情が消えて食料不足になってしまった、ってことだろうよ。
「それなら誘き寄せて一気に片付けるか」
飢えているなら処理肉に釣られるだろうよ。
「それがいいですね。もう十五時ですし」
ってことで少し後退。開けた場所に処理肉をばら撒いた。
「じゃあ、少し離れてホームに入るぞ」
それぞれ十メートルくらい離れてホームに入り、オレはMINIMIをつかみ、ラダリオンはAAー12をつかんだ。ミリエルはアイテムバッグに弾を補給。用意が整って窓から外を見たらもうモクダンが集まっていた。
「本当にモクダンの国でもできてそうだな」
「それなら王が立っているかもしれませんね」
「……王か……」
王なんてゴブリンだけでお腹いっぱいだが、そのことも考えて動くとしよう。
「一応、リンクスを出しておくか」
対物ライフルはそう使わないのでガレージに置いてあるんだよ。必要なときはアポートウォッチで取り寄せていたからな。
「よし。まずはラダリオン。次にミリエル。最後はオレだ。十秒間隔で出るぞ」
ラダリオンが気を引いている間にミリエルが出て、さらに動揺さしたところにオレが出るって作戦だ。
「じゃあ、いくよ──」
ラダリオンが外に出た。
416を構えながら腕時計を見るミリエル。十秒して外に出た。
オレMINIMIが重いので下げたまま十、数えて外に出た。
なんだかまた増えているような気がしないでもないが、これから死んでいく哀れな命。心の中で哀悼したがら引き金を引いた。
「くたばりやがれ!」
哀悼とは? なんて言うことなかれ。これがオレ流の哀悼なんだよ!
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