第701話 慈悲はなし!
ワインを一本空けてしまったので、とりあえず今日は眠らせてもらうことにした。
で、朝起きてホームに入ると、シエイラからマーダたち十人が七時に館を発つ報告を受けた。
今の時間は六時前。まだ出発はしてないってことか。
「うん。ルースカルガンなら三十分もかからんだろうし、オレも乗って案内するよ」
「わかった。もう集まっているからマーダに伝えてくるわ」
オレもアルズライズに伝えるために戻り、マーダたちと行動すること、夜には木漏れ日亭に戻ることを伝えてきた。
ミサロにダストシュートをしてもらい、マーダたちに詳しく、ってもないが、ミヤマランに獣人と人間のハーフがいたこと、恐らく獣人がいることを伝えた。
「まだ確定した情報ではない。いたとしても故郷に戻りたいかもわからない。どうして助けてくれなかったと憎まれるかもしれない。それでもいくか?」
「もちろん、いくに決まっている」
覚悟は決まっている、か。厳しい環境で生きていたヤツらは本当に強いもんだわ……。
「わかった。プランデットは持ってきているな?」
獣人の耳は人間の耳と同じところにあるので辛うじてかけられるのだ。
……ちなみに獣人はエルフによって改造された人間なんだそうだ。故に子供を残せるらしい……。
「ああ。持ってきている」
「どう使うかはミヤマランに着いてから教える。ヤカルスクさん、お願いします」
ルースカルガン二号艇の
「任せろ。タカトたちの反応は常に追っているからすぐに送ってやるよ」
なんか益々ワイルドさを出してきたヤカルスクさん。この時代のほうが生きやすいんじゃなかろうか?
ルースカルガン二号艇に乗り込み、ふわっと上昇。フルスロットルでミヤマランに飛んだ。
天気がいいからか、三十分もかからず山脈を越え、四十分とかからず広場に到着してしまった。
二日かけて山脈を越えたのはなんだったのだろう? とか考えたくなるが、まあ、楽に越えられたんだからよかったと納得しておこう。
「ミヤマランの領都まで馬車で六時間だが、ニャーダ族の脚なら二時間とかからんだろう。外套を羽織ってバラバラに領都に入れ。不審な行動をしなければ門番は止めたりしないから。もし、止められたりして捕まったならオレが助けにいく。抵抗せず素直に捕まれ。その場所も知っておきたいからな」
正規に捕まえるか、極秘に捕まえるか、知っていて損はないだろうよ。
「どんな状況になろうと情報となる。ただ、無闇には殺すなよ。殺すなら情報を吐き出させてから殺せ。どう殺すかは好きにしていいから」
ニャーダ族に殺すなと言うほうが酷だ。なら、情報を吐き出させてから殺せと言うほうが自重が効くだろうよ。
「とにかく、ニャーダ族かどうかを調べ尽くせ。情報を溢れ落とすな。助けられる同胞はすべて助けるために動け。いいな?」
「了解した」
マーダが答え、他のヤツらはチカラ強く頷いた。
「よし。まずはミヤマランの領都に潜入。次にミヤマランでの暮らしを観察。民衆に紛れ込んで情報収集だ。今日の夜、木漏れ日亭に集合だ」
スケッチブックに簡単なミヤマランで地図を描いてマーダたちに渡した。
領都の出入りは東西南北にある門からなので、北もんは止めて西門から入ることにする。
全員、バラバラに広場を発ち、オレは……足がないな! パイオニア使ったら目撃情報が出るよ!
「仕方がない。ブラックリンを使うか」
上空から降りればバレないだろう。
ホームからブラックリンを引っ張り出してきて上空に飛び立ち、三百メートルくらいのところから急降下。なんだかボロ屋が建ち並ぶところに降り――たらなんかガラの悪い集団を吹き飛ばしてしまった。
「あ、ごめんなさい」
なんて謝罪も届かない。皆さん、壁に激突したり破壊したりで大怪我確定っぽいです……。
やっべ! どーすっぺ? って思ったが、蹲る獣人の子供に一瞬で罪悪感が消えてしまった。
「お前らに慈悲はなし!」
ファイブセブンを抜き、吹き飛んだヤツらを撃っていった。
完全に見た目で判断したが、顔がもうクズだった。それならこいつらに人権などくれてやらん。苦しみながら生きていくか、後悔して死んでいけ!
とりあえず、見えるヤツは適当に撃っていき、反撃がないと判断したらブラックリンを片付けた。
ファイブセブンだけでは心ともないのでМP9を持ってきた。
ガラの悪いヤツの仲間がいないことを確認したら殴られてぐったりする獣人の子に回復薬中を飲ませた。
栄養が足りてないようで、傷は回復したが、ぐったりは消えてくれなかった。
水を少し飲ませ、続いてスポーツ飲料を飲ませた。
獣人なだけに回復力が高い。ぐったりしながらもオレから逃れようと暴れ出した。
「落ち着け。お前を殴るヤツは片付けた。もう殴られたりしないから安心しろ」
大丈夫と落ち着かせ、ミリエルの饅頭を取り寄せて獣人は子に食べさせてやった。
甘いものは偉大なり。驚きながらも二個目を出すと、一口で食べてしまった。
喉に詰まらせないよう次は水を飲ませる。それで落ち着いたのか、眠りについてしまった。
「……ハァー。オレが一番自重がねーな……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます