第677話 大移動 *72000匹突破*

 アシッカにいく隊商や巨人が集まり出し、その準備で忙しくなった。


「かなりの数になったな」


 シエイラから渡された資料(読んでもらっています)と広場に集まる巨人を比べて呟いた。


 隊商は数が数なのでミスリムの町の広場に集まってもらっている。馬車が百台近くなるからな。


「街道整備やアシッカのことはコラウス中に広まっていますからね。この機を逃す商人はいませんよ」


 まあ、わからないではないが、馬車百台って凄い数だよ。本当にこれだけの馬車をよく集めたと思うわ。


「コラウス内の商売、大丈夫なのか?」


「多少、落ち込むかと思いますが、働く場が増えましたからね。領民にお金が溜まるのを待つ時期だと思っているのでしょう」


 上手く説明はできないが、領民に金を貯めさせて、一気に放出させるってことを考えているんだろうよ。


「かなりの物資がコラウスに流れてくるか」


「そうですね。領民がお金を持つんですから」


 金があれば使いたくなるもの。いいものを求めるもの。仕事が安定してくれば家を持つようになり、家庭を持つようになり、それらに必要となる物が求められる。商人としてはビックウェーブ到来だろうよ。


「てか、コラウスから物がなくなるんじゃないか?」


 馬車百台の他に巨人にも背負わせようとしている。どんだけの量になるか想像もできんが、かなりの倉庫が空になっているはずだ。


「入れるには出すしかないですからね。物資が不足しているアシッカなら売れるでしょう」


 確かに。人が戻り始めたアシッカなら喜ばれることだろうよ。ミヤマランからまだ流れてきてないんだからな。


「さすがに一斉に出発は無理っぽいな。巨人たちに先行してもらうか。峠越えの広場は整備したしな」


 ラダリオンとメビが指揮してもらえれば食料の問題も減る。そうしよう。


 すぐに話し合い、商人の荷物を背負わない巨人に先行してもらい、広場の環境をよくしてもらうとしよう。


 朝、ラダリオン&メビと十八人の巨人が出発していき、次の日に隊商の半分に出てもらった。


 日にちをずらして続々と出発してもらい、マンダリンを操縦できるオレとアリサたちが警戒に当たることにした。


 巨人が大人数で歩くからか、魔物の反応はなく、ゴブリンも寄ってくることはなかった。


 コラウスからアシッカまで馬車で五日とされていたが、先行する巨人たちが道を均してくれたお陰で馬車がスタックすることもなく、巨人が暗くなってもライトで照らしてくれるので、約百二十キロの道を三日まで短縮できた。


 まあ、馬に無理をさせてしまい、何頭か天に召されてしまったが、隊商としては許容内のこと。この世界の流通は馬の犠牲で成り立っており、体調不良で死ぬことなんて日常茶飯事だってことだった。


 ……死んだ馬が食料となることも日常茶飯事なのにはびっくりしたけどな……。


 巨人五十人と馬車百台ともなれば凄い数になるので、まずは森を抜けたところを開拓してもらってそこに停めてもらった。


「ラダリオン! メビ! 森の中に結構な数のゴブリンがいる! 駆除してくれ!」


 いつぞやの生き残りか、ゴブリンが集まり出していた。


「ダンは警戒を頼む!」


「おれも駆除がしたいんだが!」


「わかった! あちらのほうのゴブリンを駆除しろ! こちらに撃つんじゃないからな!」


 職員や請負員はそう連れてきてないので、ダンも出すことにした。


 オレも出たかったが、この団の代表はオレ。ほっぽってゴブリン駆除に出るわけにもいかない。ここは我慢するとしよう。


 アシッカに支店がある隊商は順々に馬車を向けさせ、巨人たちは仮の住み家を築いてもらった。


 街の巨人は職人集団なので、材料と道具さえあれば十日くらいで町を築いてしまうだろう。


 一応、小川が何本か走っているが、汲むのも大変だろうからビニールプールを設置し、仮の水場とする。


「名前がないのも困るから一番広場と名づけるか」


 そのうち二番目と三番目ができるし、単純な名前にしておくとしよう。嫌ならあとでかえてくれ、だ。

 

 切り開いたところを地を均す道具でドンドンと固めてもらい、フォークリフトを運転できるようにしてもらう。


 小麦粉を運び出し、樽に入れた芋や豆、油や塩なども出した。


「マイセンズからロンガルを運び出せないものかね?」


 マンモスみたいな生き物で、あれなら巨人に飼えるんじゃなかろうか? エルガゴラさんの魔法でなんとかならんかね?


 巨人を活用しようとしたら食料問題を解決しなくちゃならない。難問に胃が削られそうだよ。


 でもまあ、ラダリオンの腕輪と巨人になれる指輪がある分、まだマシだと思うしかないか。この地が豊かになれば食料も豊富になる。それまで堪えればオレの理想の地となるだろうよ。


 ──ピローン!


 ん? もう? 早くないか?


 ──七万二千匹突破だよ~! そんなお困りのあなたに有益な情報を一つ。ルースカルガンにマイセンズまでのルート情報を入れておいたよ。あとはガンバ!


 そう言えば、マイセンズから外に出るルートがあったな! ルースカルガンにルート情報を入れたってことはそれだけの通路があるってことか。いや、ローダーやグロゴールが入ってこれてんだからルースカルガンを手に入れたときに気づけよって話だ。


 ダメ女神に言われるまで気づかないなんて癪だが、まあ、巨人の食糧問題が一つ解決するんだ、よしとしろ、だ。


「てか、またやることが増えたな」


 ハァー。こんなんばっかりだぜ……。

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