第662話 ブレット傭兵団
銃声からしてかなりの群れみたいだな。
「応援にいく?」
「いや、いらないだろう。カインゼルさんの指揮なら」
今からいっても邪魔になるだけ。大人しくしていようじゃないか。
「ねぇ、タカト。これって銃なの?」
メビはカインゼルさんたちのことよりパージパールのほうが気になるようだ。
「ああ。かなり強力だ。たぶん、グロゴールにも効果があると思うぞ。分厚い扉を切り裂いたみたいだからな」
遺跡の中からルースカルガンを出す際、パージパールを使った写真があった。あの威力ならグロゴールにも効果はあるはずだ。
「グロゴールにも? メチャクチャ凄すぎない?」
「メチャクチャ凄すぎるから使いどころを選ぶものだな。一発撃つのにマナック一つ消費する。一キロ先の標的じゃないと撃ったこちらに被害が出るかもしれんな」
レーザーなんて映画かアニメでしか知らん。古代エルフの造ったものがどんなものかわらん以上、標的は遠くのにしたほうがいいだろうよ。
「またグロゴールみたいなのが出るといいね」
「それは遠慮したい。もうあんなとは戦いたくないよ」
もうチートタイムは使えないし、また勝てるとも思わない。あんなのは勇者か山崎さんに任せるよ。オレはゴメンだわ。
「まだマナックはいれてないから触っていいぞ。これを使うときはオレかアルズライズ、あとはメビだろうからな」
誰彼構わず触らせていいものではない。使いどころを理解した者か、並み以上の腕前じゃないと持たせることはできないよ。
「了ー解。お、意外と軽いんだね。スコープはないの?」
「プランデットで照準を合わせる。自分のプランデットをしてみろ。こちらから操作するから」
メビがプランデットをかけたらパージパールの表示を優先させて、すぐに出せるように設定させた。
「右上にこういう文字が出ているだろう?」
スケッチブックを取り寄せて、古代エルフの文字を書いた。
「うん、ある。なんて書いてあるの?」
「プレタ。照準って意味に近いな。望遠鏡と連動している」
マナックをパージパールに入れ、必要な魔力を充填させ、オレの許可なく撃てないようロックをかけた。
「引き金を引いても撃てないようにした。高いところにいって確かめてみるといい」
「おー! 確かめてくる!」
パージパールを担いで滝を登っていった。身軽で羨ましいよ。
「タカトさん! おれら、食事にいってきます!」
作業員に声をかけられ、缶コーヒーを掲げて応えた。
滝にはオレだけとなり、滝がよく見える岩に登ってマイナスイオンを浴びることにした。
「……なんか落ち着くな……」
水属性だからか、水はオレの力となるんだよな。飲んでも魔力は回復するし、安らぎを与えてくれる。もしかして、滝に打たれたら強化できるんじゃないか?
とは思ったが、この冷たい水の中にはいるのはノーサンキュー。こうしてマイナスイオンを浴びているだけにしよう。
「ん? 銃声が止んだな」
モクダンを退治できたのかな?
それから一時間半くらい過ぎてカインゼルさんたちが戻ってきた。
「タカト、きていたのか」
「はい。十時くらいに。随分と派手に撃っていたみたいですね。結構いたんですか?」
「ああ。四十匹くらいおったよ。魔石だ。使ってくれ」
傭兵の一人がディーバッグを渡してくれ、中身を見ると魔石が詰まっていた。
「そちらの資金にしてもいいんですよ」
これだけあればしばらく給金に困らないはずだ。
「それはセフティーブレットから出してくれ。金勘定できるヤツがいないんでな」
「そういうのも集めなくちゃなりませんね。弾を数えられるヤツがいないと戦いもできませんからね」
金に苦労してきたからわかる。金さえあれば戦いは楽になる、ってな。
「まあ、これは預かりますよ。そろそろアシッカにいこうと思うので」
「わしもいきたいところだが、今回は我慢するとしよう。タカトが帰る場所を守らないといかんしな」
「ありがとうございます。来年、いつでも海にいけるよう道を造ってきますよ」
道さえできればアシッカなんてそう遠くない。朝早く出れば夕方には着くだろうよ。アシッカから海までどのくらいかは知らんけどよ。
「そうそう。またマンダリンを見つけたので五台ばかり置いていきますよ。どこに出します?」
「それならくる途中にあった根城に出してくれ。しばらくあそこを根城にするのでな」
「わかりました。あと、ブレット傭兵団として領主代理に許可を得ました。協力要請が出たら領主代理の下についてください」
セフティーは排除させてもらいました。傭兵団に強制力は働かなかったからな。
「他にもいろいろ伝えたいことはありますが、マンダリンを出したりしなくちゃならなくなるので、シエイラかジェネスク男爵から聞いてください」
「ジェネスク男爵、町長にも会ったのか」
「はい。四、五日お世話になりました。時間があったら挨拶にいってみてください。協力してもらえるようお願いしておきましたから」
「わかった。明日にでも挨拶にいってみるよ」
「そうしてください」
傭兵団がいるので酒を取り寄せてやり、メビを呼んで遺跡に向かうことにした。
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