第574話 野生種
夜中に働くのは何度やっても慣れないものだな。
職員たちに儲けさせるためにオレは止めは刺さないが、一人寝ているわけにはいかない。
ご隠居様にグロック19の扱いを教えたら首長がいる場所に向かった。
ブラックリンは使わず、プランデットの暗視モードを使って山を登った。
ゴブリンが踏み均してくれたお陰でそこそこ登りやすくなっている。標高もそうないので一時間くらいで山頂付近までやってこれた。ふー。
水を飲んで一休みし、大きな気配を辿っていくと、タワーライトが輝いていた。
「タカトさん。すみません。半分くらい逃してしまいました」
うん。百匹以上、死屍累々だけど? 首長なんか気持ちよく眠ってるし。
「構わないよ。確実に千五百匹は倒しただろうからな」
三百万円以上プラスになった。必要経費を抜いても二百万円は儲けたのだから数百匹逃したところで問題はないさ。
「しかし、ミリエルの眠りでも死なないとか凄いな」
他は死屍累々なのに、眠っているだけって、どんな耐性があるんだろうか? ゴブリンもポケ○ンのように進化するんだろうか?
「はい。結構強めに放ったんですけど、二、三秒、抵抗されました」
「それは凄いな。首長の中では上位種なのかな?」
肌も濃い緑だ。魔王の配下だった十……なんとかはそんなに濃くなかったのに。野生種は強くなるほど濃くなるのか?
「まあ、なんでもいい。ゴブリンはゴブリンだし、首長は首長だ。ミリエル。体の大きいゴブリンを裂いて魔石があるか調べてくれ。結構長く生きてそうな体格だしな。あったら皆で捌くとしよう。オレは首長を縛るから」
「わかりました」
ミリエルが離れたら巨人になれる指輪を使って巨人化する。
首長は三メートル以上ある。さすがに一人では無理なので巨人になるとしよう。
指輪を嵌めると多少の空腹は感じるが、そこまでじゃない。十分くらいなら問題ないだろうよ。
ワイヤーを取り寄せ、テープで足首を縛り、手首は後ろ手で縛る。あとは、ワイヤーでキツく縛りつけてやった。
「叫ばれたらうるさいし、猿ぐつわしておくか」
使い古したタオルを取り寄せ、絞って猿ぐつわとした。
ふー。なんだかんだで手間がかかったな。栄養剤飲んでおくか。
「タカトさん。魔石がありました」
「ご苦労様。なかなかデカいな。十年くらい生きてんのか?」
アシッカで取り出した魔石は小石くらい。今回のはゴルフボールくらいあった。
「……湖のほうから流れてきたヤツか……?」
なんだかとんでもないことが行ってそうな予感がする。もしかして、福音よりそっちのほうを聞けばよかったか?
ま、まあ、なにがあってもいいように準備は進めている。備えあれば憂いなしの精神でやってきてるんだから恐れるな、だ。
「ミリエル。悪いが、首長を下に運んでくれ。オレは魔石を取り出すから。運んだら休んでくれ。八時に交代しよう」
「わかりました。イチゴを呼んでくださいね」
「ああ、そうするよ」
イチゴを呼んでからミリエルが巨人になり、首長の足首をつかんで山を下りていった。
「まずは首を斬るか」
傷口を作ったほうが血が抜きやすい。マチェットで首を斬っていった。
「直属の部隊だったのかな?」
どいつもホグルスゴブリン(赤い肌の上位種ね)くらいの体格があり、その近くにこん棒が落ちていた。アルズライズが五人はいないと勝てないぞ。
一休みしたら血を抜いてカラッカラにしてやる。
「……さすがにキツいな……」
地面に腰を下ろし、水を飲んで一息する。
「──マスター!」
バナナを取り寄せて食っていると、マリトとダリがやってきた。
「ご苦労さん。下はいいのか?」
「はい。村長たちと話し合って朝になってから動くことに決めて、ローガに任せてきました」
「そうか。まだ体力は残っているか?」
「大丈夫です。まだまだ動けますよ」
若いって羨ましいよ。オレはヘトヘトだよ。
「じゃあ、ゴブリンから魔石を取り出してくれ。悪いが、オレは少し休ませてもうよ。食事を用意しておくから適度に休めよ」
「それはマスターですよ。ミリエル様にマスターを休ませるよう強く言われましたよ」
「そうですよ。あとはおれらがやるんで休んできてください」
モリスの民がミリエルを様づけするならわかるが、なぜだか職員たちもミリエルは様呼びなんだよな。ラダリオンはお嬢でミサロはさんづけなのに。
なんの違いかわからんが、まあ、なんでもいい。ありがたくホームに入らしてもらった。
「まだいたのか」
ラダリオンが座椅子を持ってきて、お菓子を食べていた。夜食べると太るぞ。
「うん。終わったの?」
「職員に任せてきた。ミリエルは?」
「シャワーを浴びてると思う。タカトも浴びたら。血、ついているよ」
うおっ! 本当だ! 気をつけてたのに結構ついているじゃないか! 自分で思うより疲れているみたいだな。
「夜食になるものを持ってきてくれ。職員に出したらシャワーを浴びるよ」
「わかった」
すぐに食べ物を入れたバスケットを持ってきてくれた。
外に出て職員たちに渡し、終わったら山を下りるように伝えた。本当に悪いが、朝まで休ませてもらうよ……。
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