見合った転生

ぴろわんこ

第1話

おれは異世界に転生した。おれは昔は凄かった、本気を出せば凄いと酒場で息巻いていたら魔法使いのような爺さんがやって来て、そんなに凄いことができるなら異世界で発揮しないかと唆された。

何言ってんだと思ったが、いいぜやってやるよと返事をした。まさか本当に転生するとは思ってもみなかった。


普通は王様に謁見するとか、村長に会いモンスター退治を懇願されるとかあると思うのだが全くそんなものはなく、バイトのシフトを言われるように、とある男からどこどこでスライムが多く発生している。退治してこいと言われただけであった。


「え、あなたは誰なんです?何でおれに指図するのですか?」

「今度異世界から粋がっている男がやってくるので、お前が雇い主になってくれと頼まれたので引き受けただけだ。ほら地図と、ちょっとした装備品だ。終わったら戻ってこい」


戸惑いもあり、腹立たしくもあったがこの段階で逆らうのも得策ではないと判断し、地図に書かれている場所まで行きスライム退治を行った。

証拠を持ってこいと言われていたので、倒した時に出る粘液を持って男の家へと戻った。


男は礼も言わず、証拠品を受け取り簡単な食事を出してくれた。出された食事はすごく不味かった。家に泊めてはくれた。


そんな生活を我慢して一週間していたら、男が金を渡してくれた。この世界の貨幣価値はよくは分からないが、申し訳程度の小銭だなということくらいは分かった。


「あの、もう少しお金をいただけないでしょうか?」

「何言ってるんだ。お前はスライム退治しかしていないだろう。それが妥当な所だ」

「では、もっと強いモンスターを倒せばお金も、もっといただけるのですか?」

「それはそうだが、お前がやっても死ぬだけだから止めておいた方がいい」

「でもスライムを倒し続ければ、レベルが上がりいつの日か…」

「何を分けの分からないことを言ってるんだ」


おれは、はっとなった。そうかこの世界では強さはある程度、生まれつきなどの素養で決まっていてゲームによくあるようなレベル上げなどということはないのだろう。考えてみればおれのいた世界だって、害虫や小動物を倒したところで、レベルアップして虎やライオンが倒せるようになるわけではない。


「ではせめて、スライム退治をしてくれてありがとう助かりますという、礼や労いの言葉をかけてもらえませんかね?」

「これがお前の仕事なのに、何故いちいちする必要がある。お前だってスライム退治の仕事を与えていただいてありがとうございます、なんていちいち言わないだろう。それと同じことだ」


そうか単なる雑用のために、おれはこの世界に来たのか。前の世界でも世のため人のためという使命感を持って仕事をしている人は一握りだったろうが、この世界でもそれは同じということか。あの爺さんも口だけ達者のお前は何もできないだろうと、おれに皮肉が言いたかったのか。


料理は不味いし、かわいいキャラクターもいない。気の合う人もいない。仕事も単調でつまらなく稼げれない。暇をつぶすスマホもない。前の世界の方がまだマシだったな。


粋がって悪かったな。爺さんおれを元の世界に戻してくれよと、必死で呼びかけてはいるのだが全く反応はない。刑務所にいるような日々が当分の間続きそうだ。

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