転生したら最強のロボット兵器だった件 ~美少女パイロットのおっぱいが当たるたび、チートモードに移行して無双する~

高橋弘

第1話 転生、そして起動

 俺の名前は鈴木大地すずきだいち

 三十三歳のサラリーマンだが、死のうと思っている。


 だってこれまでの人生で、何もいいことなんてなかったのだから。


 まず、体が弱い。数年に一度は重い病気にかかる。

 顔も喋りもイマイチで、彼女がいたこともない。

 おまけに物心ついた時から景気は悪いし、ろくに給料は上がらないってのに税金は上がる一方ときてる。


 そういうわけで、俺は死ぬことにした。

 普段は通勤に使っている電車に、飛び込んでやったのだ。


「あ゛あ゛あああああああああああああああああああああっ!」


 もちろん、こんなことをすれば各方面に多大な迷惑がかかるわけだが、それも目的の一つだった。

 長きに渡って俺をいたぶり続けた社会に、最後っ屁を食らわせてやるのだ。


 ざまみろ現世。

 くたばれ自分。


 全身がすり潰され、痛みと衝撃で意識が遠のいていく。

 ……最後に脳裏をよぎったのは、子供の頃の夢。

 走馬燈、ってやつなんだろうか。


 俺は、オモチャのロボットで遊ぶのが好きだった。

 巨大人型兵器に乗り込んで、皆を守るヒーローになりたかった。


 それが今では、皆に迷惑をかけながらくたばる肉塊となり果てている。

 

 ……やり直してえ。

 俺だって、好きでこうなったわけじゃねえ。


 もっと裕福な家に生まれてれば。

 もっと景気のいい時代に生まれてれば。

 もっと男前に生まれてれば。

 もっと健康な体に生まれてれば。


 後悔と悔恨に苛まれながら、俺は死んだ。

 惨めな終わり方だった。



 * * *



 目が覚めると、俺は格納庫のような場所で寝かされていた。

 天井には無数のクレーンがあり、たくさんの小人達が乗り込んでいる。

 

 ……どこだここ?


 声を発しようかと思ったが、それは叶わない。というか喉の感覚自体、ない。

 ひょっとして一命を取り留めた俺は、半身不随となってベッドの上に寝かされているんだろうか?

 自力で声帯を震わせることすらできないのか?


 あの小人は……幻覚か何かか?


 畜生、前より悪化したじゃねえか、と涙が出そうになっる。

 これじゃ自殺願望持ちの社畜よりなお酷い。

 寝たきり状態ってやつかよ……。

 動かない体で悔しがっていると、小人の一人が俺の胸板をカパリと開けた。


 は?


 胸板を開けるって、何。

 しかもなんで出血しないの?

 驚く俺をよそに、小人は手際よく俺の中に入り込んでくる。


 ……よく見ると俺の胸板は分厚い金属でできていて、装甲版のように見えた。

 まさか俺、サイボーグとして蘇生されたの? 日本の科学技術ってそんなに進んでたっけ?


 頭の中を疑問符まみれにしていると、小人の一人が「学習チップ入れます」と呟いた。どうやら無線で連絡を取っているようだ。

 学習チップってなんだよ……人様の体内に何入れようとしてんだよ……。

 胸の中をまさぐられる違和感がピークに達した時、それは起こった。


 俺の中に、莫大な量の知識が流れ込んできたのである。


 ――ここは銀河歴2123年の、中立コロニーに存在する軍事基地。

 人類は終わらない戦争を繰り広げており、科学技術はもっぱら闘争のために用いられている。


 そして、俺は人間ではない。

 人型決戦兵器、アーマードモビルの最新型なのだ。なんと全長は二十メートルもあるらしい。

 周りにいる人間が小さいのではなく、俺がデカくなってたというカラクリ。

 要するに俺は、巨大ロボット兵器として転生したのだった。


(……マジかよ)


 ちなみに俺の詳細なスペックはこうだ。

 データ採取目的で建造された試作機で、存在しないはずの二号機であり、条約で禁止されているパーツをバンバン埋め込み、動力部には未知の技術が用いられている。


 なんだその、主人公機にありがちな設定のごっちゃ煮は。


 あと、俺の名前は「ガイアース」というらしい。

 地球連合軍の士気高揚をはかるべく、この名がついたそうだ。

 前世は大地で、今度はガイアース。また地面みたいな名前か、とため息をつく。

 肺なんてついてないから、息出ないけど。あくまで心の中限定のため息だけど。


(……なるほど。地球連合軍は現在、宇宙移民軍と交戦中。技術力で押されていて、切り札を欲しがっていると)


 それが俺、というわけだ。

 どうりで頭のおかしいスペックなわけである。

 本体性能もエグイけど、武装もやばいしな。

 

『頭部バルカン砲×2』

 本来は牽制目的で用いられるものだが、俺の火力ならば問題なく敵機を撃墜できる。

 牽制用バルカンで殺されたら、書類には牽制死と書かれるのだろうか? 

 なんか野球用語みたいで間抜けなので、敵がかわいそう。


『腕部内蔵ビームブレード』

 伸縮式のビーム剣。出力調整が可能で、最大で50メートルほどまで延長可能。

 射撃兵器として用いることもできる。なんでも貫けると評判。


『特殊コーティングシールド』

 外宇宙から飛来した謎の金属を地球人の技術で加工した、くっそ硬い盾。なんでも防げると評判。

 それ俺のビームブレードで攻撃したらどうなるの? といきなり矛盾を感じるが、とにかく硬いったら硬い。


『なんかやばいモードへの移行』

 AI(つまり俺)と搭乗者の相性が良好である時のみ発動可能。

 300秒の間、機体性能を飛躍的に向上させる。搭乗者への負担が大きいため、多用は禁物。


 他にも自爆機能だの冷却機能だの水中適性がAだの、使い勝手の良さそうな情報がゴロゴロと出てくる。

 学習チップってのは、本当にありがたいもんである。

 俺は一瞬にして高度な知識を手に入れ、スーパーAIと化したのだから。


 ビゴンユゥン! と目を光らせ、スタンバイモードに入る。


 充電はバッチリ。燃料ゲージも満タン。

 動かそうと思えば、いつでも体を動かせる。

 俺は無人戦闘モードも備え付けられているので、パイロットがいなくても戦闘可能なのだ。


 ……が、100%の性能を引き出そうと思ったら、人を乗せた方がいいらしい。


 ふむ。

 もうじきテストパイロットがやってきて、俺の動作試験に入るようだが……。


 ウー! ウー! と警報が鳴り響く。


 だよね。

 こういう主人公機っぽいチートマシンの試験中って、かなりの確率で敵が攻めてくるんだよね。

 お約束だなあ……とアイカメラを細めて笑っていると、グラグラと基地全体が揺れ始めた。

 なんだなんだ、とセンサーを起動して周辺情報を探ってみると、東に二キロほど離れた地点に熱源反応がある。

 敵襲だ。

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