第3話 異世界、時々モンスター
「空太のズボンから聞こえた音声、何だったの?」
さて、どうしたものか。
ここはスマホのない現代日本。当然、凜も見たことはない。
しかし、理解者を増やすには良い機会だ。意を決して、スマホを見せてやろう。
「実はな、これのお陰で助かったんだよ」
空太はスマホを凜に見せる。
「なにそれ? なんか四角くて、ゲーム機みたい」
「そうだ、これはスマートフォンという機械だ」
「スマートフォン? 初めて聞いたよ」
凛はスマホをじっくり観察している。
「この機械――スマートフォン、略してスマホだ」
「スマホ? 変な名前だね。これで悪人を倒したの?」
「ああ、正確にはアンノウンという奴から指示を出してもらって、その通りに動いただけだ」
「アンノウン? 信頼できる人なの?」
「人かどうかは分からないが、今のところは信用できる」
「ふ~ん」
凛は怪しんでいたが、しばらく考えた後。
「じゃあ、その、スマホ? が私達を助けてくれたんだね、感謝しないと」
「ああ、そうだな」
「それじゃあ、そろそろ学校行こうか? もう遅刻だけど」
「げっ、忘れてた」
バスジャックがあったからすっかり忘れていたが、今は登校中だったのだ。バスは実況見分のため乗客を降ろしていた。今から歩いていくと確実に遅刻だ。
「ほら空太! 早く行くよ~」
凛は既に走り出していた。
「あっ、待てよ! 置いてくな!」
なんだか疲れたが、今は学校に行くしかない。凜の後を必死に追いかける空太なのであった。
空太の通う高校は中高一貫で都内でも有数のマンモス高である。ここに通う生徒のほとんどが、大学への進学を決めている。いわゆる進学校だ。空太はなぜここに通っているかというと、家から近いというのと、単願で受験すれば筆記試験なしで合格できたからだ。
「ふう~、やっと着いたぜ・・・・・・」
空太は凜に遅れること5分後に校門前に着いた。凜は校門前で待ってくれていた。
「もう、遅いよ! 授業始まっちゃうよ!」
「悪い・・・・・・走るの久しぶりで、疲れて」
そういいながら校門をくぐろうとすると――
「遅いぞ! 貴様ら!」
怒声が響いた。声のする校門前をみると、生徒会長――
頭の後ろをポニーテールで纏め、腕に生徒会の腕章をつけている。眼はオッドアイで綺麗な顔立ちをしている。一年生ながら、生徒会長に立候補し、上級生を抑えて当選している。その手腕は風の噂で色々聞いている。
「遅刻の理由を問おう」
焔は目と鼻の先まで近づいてくると、遅刻の理由を聞いてきた。
「いや~、実はバスジャックに巻き込まれましてね~、大変だったんですよ~」
空太は事実を述べた。だが焔は信じていない。
「ふん、何を言うかと思えば、バスジャックだと? 寝言は寝て言え」
「いや、本当ですって! 警察も来たんですよ?」
「その証拠はどこにあると言うんだ? 蒼井空太?」
なぜ俺の名前を知っているんだ? そんなに何回も遅刻したわけではないし、目をつけられるようなことはしていないはずだ。
いっそスマホを見せるか――そう思ったその時。
キーンコーンカーンコーン
授業の始まりを告げるチャイムが鳴った。
「ちっ、今日は見逃してやる。私まで授業に遅れるわけにはいかないからな」
そう言うと焔は信じられない速さで校内へと消えていった。
「生徒会長に目をつけられるとは・・・・・・ツイてないな」
「いや~、大変でしたな! 空太君?」
凜が木の陰から出てきた。こいつ隠れてやがったな。
「なんで出てこなかったんだよ? 俺だけ注意されたじゃないか!」
「いや~、生徒会長に目はつけられたくないからね~」
「俺はもうロックオンされたぞ」
「まあまあ、大丈夫だよ! とにかく早く教室に行こ?」
そう言って俺の服の袖を引っ張りながら凛と教室へと向かったのであった。
キーンコーンカーンコーン
一日の終わりを告げるチャイムが鳴る。
空太は事件の疲れからか、陽が落ちるまで寝ていた。外は真っ暗だ。
「ん・・・・・・? やばっ! 外真っ暗じゃん!」
スマホを取り出し、時間を確認する。時刻は午後8時を表示していた。しかし、違和感に気づく。
なぜ誰も声をかけてくれなかったのか? 凛は?
「とにかく、帰らないと」
空太は教室の出口へ向かう、外へ出ようとドアに手を伸ばそうとした時――
『警告。直ちに左に避けてください』
アンノウンの声がした。
反射的に左に避ける――空太のいたところになにかが突っ込んできた。
ドアが粉々に破壊される。
「グルルルル・・・・・・」
唸り声をあげるなにかはこちらを向いた。牛ほどの大きさがある。大きく裂けた口、赤みがかった毛。見た目はオオカミのようだが、空太が見たどのオオカミよりも凶暴そうだ。
「なんなんだよ・・・・・・こいつ」
空太は目の前の状況が理解できなかった、ここは日本だ、ファンタジーの世界じゃない。そう思っていると、スマホからアンノウンの声がした。
『警告。次の攻撃がきます。避けてください』
「無茶いうな!」
思わず叫びながら今度は右に避ける――空太の立っていた位置になにかが突っ込んだ。あと一瞬遅かったら大けがをしているところだ。
「くそっ、どうしたらいい! アンノウン!」
『提案。対象生物を撮影してください』
「またか! やるしかないのか!?」
『撮影してください』
「くそっ! やってやる!」
空太はカメラを起動する、素早く動く何かに向けてシャッターを切る――が、動きが速くてぶれてしまう。
『連射機能を使用して、対象を撮影してください』
「頭いいな! アンノウン!」
空太はカメラを連射機能にする。
カシャカシャカシャ!
カメラの連射が炸裂する。こんなんで撮れているのだろうか。
『撮影データを確認・・・・・・ファイル照合中・・・・・・』
『・・・・・・照合完了。対象のデータを表示します』
アンノウンの解析が終わり、空太はスマホの画面を見る。そこに表示されていたのは――
『ジェヴォーダンの獣』
1764年にイギリスで出現した。UMAの名前だった・・・・・・
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