一章 不忘蔵王と正義のミカタ 1-2
※あまりにも読みにくかったので、一話を分割しました
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蘭堂に並ぶ長身に加えてスラリと長い足、柔らかそうな髪。
一見するとどこのモデルかと見紛うばかりの美形少年である。
と言っても見た目だけだけどね。
彼の名前は黄ノ宮 水奈(きのみや みずな)。
ここ九王ノ宮の創始者である黄ノ宮 九王(きのみや くおう)爺の孫であり、あたしとはこの学校に来る以前からの付き合いもある超級の金持ちお坊ちゃんだ。
「こんな話はどうでしょう? 神と戦った、ある一人の人間の話です」
予期せぬ場所から上がった声に、あたしを虐めていた戦闘民族二人は興味を向けたらしく。
「水奈までフワに付き合わなくてもいいんだぜと寛大な心を述べつつも、そういや最後の一乙はお前だったので折角だから聞いてあげますつまんなかったらフワの暴露話な!」
「でも~なんで神災にこだわるの~?」
いえいえ、フワさんの言葉で人から聞いた話を思い出しまして。と、爽やか過ぎるスマイルで何事も無い様に言う水奈。
――おいおい。冗談だろ?
真意を測る為、二人に見えないように机の下で水奈を肘で突付く。
『お前何言おうとしてるんだ、あれはペラペラ喋るような事じゃないだろう。よく考えろ。というかお前はそんなにおバカさんだったのか? 変態なのは知ってるけどさ。』
そんな意味を思いっきり込めて。
そういったあたしの焦りなど知らない残りの二人は、水奈の言葉をきっかけに、神災についての話を始めていた。
「神災ってさ。アレだよな。暴露してみると人を超えて神の力を手に入れた超越人類とかなんとか」
「神様の力ってどういうのだろうね~? 海を二つに割ったり出来るのかな~」
それはモーセとかいうおっさんの話である。でも、神様の力って意味じゃ似てるのかな?
「ってかさ。二年の八十神先輩だっけ? あの現役歌姫やってる。あの人神災らしいぜ」
「ほんとに~? すごいね~うちのがっこう~」
「なんか興味出てきた。水奈。その話詳しく話しやがれ!」
「うちの学校ならではだね~。その神様と戦った人間ってだれ~?」
うーんまずい。ちょっと話の方向がおかしくなってきた。
「いや、あのな。今の水奈の話はたぶん軽い冗談でだな」
あたしが二人の話を静止するように椅子を押し立ち上がったところで。
「はいはい。お前らそれまで。ゲームは持ち込み禁止。見なかった事にしてやるから、お前らあたしの辰竜素材集めに付き合え。昼休みに体育館倉庫な。鍵開けとくから。ただし、あたしが行くまでクエストには出るなよ。出たら赤点つけっからな」
なんとも教師らしからぬ言葉と共に教室に現れたおっぱいバーンな担任教師に、早朝歓談は中断させられたのであった。
■
「神ヶ崎ー。神ヶ崎ユイガー」
さて、二時間目である。
少しばかり頭がたそがれ気味で寒そうな、お年頃の男性教師が生徒の名前を呼んでいた。
「せんせ~。神ヶ崎(みがさき)さんはまだ学校来てません~。一週間ぐらい~」
教室のどこか、濁して言わなければあたしの隣の席の玉兎が答える。
「一週間? なんだ? 入学式からか?」
入学式から一週間。前から四番目の窓際席に座るあたしの、その後ろの席は空席だ。
その彼女はそれだけの期間学校へ来ていないというだけでも、もう十分に異端だというのに。
「あいあいー! いるよー! 正義いますよー!」
その通る声は窓の外。校庭から聞こえた。
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