第11話 卑弥呼の時代、いわゆる弥生の国の形が整い始めた時代
卑弥呼の時代、いわゆる弥生の国の形が整い始めた時代、君主たちはどんな政治をしていたか知っているか? 俺みたいに予言や呪術をしていたって? それはちょっと違うな。
彼ら彼女らは技術指導者だったんだ。狩猟生活から稲作に代わって、経験則の伝達から、暦の正確な把握、すなわち科学が必要になった。
それら天文学的知識で人々に指導したのが君主たちであった。
その指導により、コメの収穫量は飛躍的に増え、生活は豊かになった。しかし、貧富の差も顕著になっていく。同じ集落内、または別の集落との奪い合いが始まる。その治安維持にあたったのが、今の警察であり軍隊だった。
わかるか!! 国は豊かにする飯の種と言える技術とそれを理解させる教育、治安維持、国防力の三つで成り立つんだよ。
それがどうだ?! 先を見据えた投資的な政策が無く、付け焼き刃的な福祉政策ばかりで、痒いところに手が届くことが、いかにも大切だとばかりに目先の公平や平等を重視して競争力を育ててこなかった。
だから、後のIT時代に重大な国策を担うはずの国営企業を不平等と民営化し、IT技術の恩恵が広く国内に広がらず、世界から乗り遅れてしまい、GDPの伸び率が他の先進国に比べて十分の一以下と低迷してしまった。
通信料が高く国内のほとんどのサラリーマンが携帯を持てない平成初期、東南アジアのある国を旅行した時、繁華街のポン引きでさえ、二つの携帯で店とやり取りをしていた。
経営が情報のスピードを争う時代に日本が停滞し、他国の後塵を拝したのは当たり前だ。
それに日本の治安維持も……。警察や自衛隊はほとんど抑止力になっていない。
他国のギャングや違法滞在が横行し、スパイ天国と揶揄される。
オレオレ詐欺の被害は年間百億円を超え、万引きの被害額は年間四千五百億円を超える。オレオレ詐欺の被害は個人に帰属するが、万引きの被害や防止費用は善良な買い物客が被っることになるんだ。
消費税にして約四五〇億円の逸失だ。
被害額と同じ純利益四千五百億円上げている企業は、日本純利益額第20位の任天堂、同じく日本たばこ産業などで、その売り上げは一兆七千億円、同じく日本たばこ産業は二兆二千億円。
メーカーと違い、利益率の低い小売業ではもっと売り上げないと万引きの被害額を埋め合わせることはできないだろう。
国防は……、東京都政には直性関係ないが、隣国の恫喝になすすべ無しだ。いつ領土を蹂躙されても不思議じゃねぇ。
問題は、そうなっても日本政府の弱腰なままってところだ。頼みの日米同盟は財布以外のメリットが見いだせないアメリカにとって、すでに形骸化してしまっている。
俺も自分で言っていて、悲しくなってきた。日本人としての誇りはどこに行っちまったんだ?! 日本人の誇りと栄光を俺と一緒なら取り戻せる。
政治家っていうのは演出家だ。日本丸っていう沈没寸前の船に乗せたとしても、終幕までの航路さえみえてりゃ、国民っていう俳優を最後まで演じさせることができるんだ。
そして、一発逆転があるからエンターテイメントは成り立つんだろう!!!!
IT技術のような重要なテクノロジーは、収穫加速の法則といって、進歩が指数関数的にどんどん早くなっていく。ここ一〇年でゆっくり進歩してきたことが、たった一年であっという間に実用化されるということだ。
ここに一気に遅れを取り戻すチャンスがあるし、それこそが日本を豊かにする飯のタネだ。日本文化の十八番(おはこ)、先進国の模倣だ。昭和の時代良き時代から磨き続けたお家芸だ。
それをバックアップし、インフラとルールを確立することこそ君主(政府)の仕事だ。
一九八三年インターネットが実用化されて以来、コンピューターの演算速度が進歩するだけでなく、他のコンピューターと繋がることで、情報交換できるようになり、新しい技術やサービスに繋がっていく様を見てきたんだろう。
それを利用するためのインフラとルール作りが、日本では徹底的に遅れているんだ。
でも、ここまでは実現されたものはこれから起こる技術革命の一部ともいえる。すでに実現可能な技術は、道筋を付けてやるだけで最先端に短期間で追いつける可能性がある。
まだまだテクノロジーは進歩する。それを防げるものを排除してやる。
それが俺の覚悟だ!!
もちろん、警察などの抑止力もこのインフラとルール作りに乗せる。ツケは必ず払わせる!! 逃げ得は許さない!!
俺の政策はアメだけじゃなくムチも振るう。このムチは今まで社会負担、企業負担してきたコストを受益者本人に負担させるものだ!!」
向けられたスマホに向って、サムズアップして自信をのぞかせた町田朔。
これらの演説は後援会のネット民によって拡散された。
なにかやってくれる。都民、特にネット民は町田朔に熱狂し応援した。町田朔関係の動画の再生回数は累計で1000万回を超えた。
東京都知事選挙の投票率は80%を超え、戦後最高の投票率を記録し、町田朔は各政党推薦の候補者に大差をつけて当選した。
◇ ◇ ◇
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