第6話 バブル崩壊から三〇余年

 バブル崩壊から三〇余年、この間、日本はどんな道を歩き、国際的な位置付けはどう変わって行ったのか?


 バブル崩壊後低迷する日本は、失われた一〇年、二〇年、そして三〇年と経済成長は低迷し、その間GDPは横ばい、そして、収入も横ばいの状態が続いている。


 GDPは日本国内で生産された付加価値の生産額の総和であり、企業でみれば粗利益に相当する。


すなわちGDPは、企業の粗利と同じように、税金や社会保障費などの社会負担、そして賃金等人件費、最後に将来への設備投資に再分配される。


当然GDP(利益)が伸びないということは、賃金は増えないということだ。


 ちなみにGDPの約60%が賃金総額だと言われているが、GDPが横ばいの中、税金等の社会保障費は増大しており、賃金等や将来への投資の割合は減少するため、賃金をみんなで分ければ、一人あたりは減るのが道理である。


 この状態はバブル崩壊後の他国も同様かと云うとそうではない。この数年間、中国のGDPは年間7%以上の伸びを見せ、日本を抜き去り世界第二位の地位に踊り出、韓国も二〇二〇年には一人当たりのGDPは日本を抜き去った。


 アジア全体でもGDPは大きな伸びを見せており、先進国でも、バブル崩壊以後、コロナのころまでには最低でも1.3倍は伸びているのだ。


 この間、日本政府は経済に関しては無策に等しい。


社会負担を強いる。そして集票のためのバラマキという名の消費の繰り返し。バラマキは決して未来への投資ではない。未来に負担を先送りしているだけだ。


さらに、すでにアドバンテージを失いつつある発展途上国にさえ資金をばら撒いているのだ。

 

 その政策は教育においても同じであった。


「ゆとり教育」と称して知識を削り「個性の重視」を唱えたが、それは子どもに好き勝手にさせることと同義語であった。


 好き勝手するのは野生であり、野生は磨かれて個性になる。こんなことはトップアスリートを見れば一目瞭然だというのに……。


 落ちぶれた芸人を次々と人気者に再生して世に送り出したカリスママネージャーが雑誌で語っていたことだ。


「まず、最初に彼らに教えることは、好き勝手やっても売れないことを気づかせることだ。売れたい成功したいと思ったら、世間に歩み寄ることだ」と


 炎上系それに迷惑系ユーチューバーに聞かせたい名言だが……。それどころか犯罪者にだって聞かせたい。

 ろくな教育も受けず野生のまま大人になって、特殊詐欺などの犯罪に手を染めてしまった若者たちにも聞かせたい。これは自らの身を守る言葉だなんだ。だって、彼ら自身も被害者なのだから……。


 社会の悪意も知らされず、安直な金儲けに手を出してしまう。

 世間に歩み寄らなければ、一時的には富を得たとしても長くは続かない。


さらに問題なのは、「ゆとり教育」は競争重視の教育に反対し、理想を掲げて実施した政策だったんだろうが、それは国際化を掲げながら世界的視点を欠く矛盾した政策でもあった。


 昭和の時代、アジア各国は貧しく、大学が少なく高等教育を受けた人材も不足していた。そういった意味では、高等教育を受けた大学生を多数輩出する日本にアドバンテージがあった。


 しかし、平成の時代になり、豊かになるためには教育が必要だとアジア各国に大学が設立され、高等教育を受けた優秀な人材が輩出されるようになると、日本の優位性は相対的に低下するようになっていく。教育の強化はアジア諸国の思惑どおり、世界に台頭することに繋がっていく。


 今はそういった地域に進出している企業と各国は貿易しているが、いずれ日本を通さずに直接それらの国と貿易するようになるに違いない。


 それどころか、教育で遅れを取った日本の若者は将来、これらの国に出稼ぎに出かけるようになるかもしれない。

 子育て支援とばら撒くだけで、教育が変わらないなら、将来、日本の若者は日本にとって不良債権になるだけだ。


 追われる立場だった日本は、国内の建前論に気を取られ、競争を放棄してしまったうちに、後進国に肩を並べられていることになりそうだ。


 競争相手は国内だけだと思いあがっているうちに……。

 昭和の右肩上がりの時代なら誰がリーダーシップを取ろうが大差ない。だけど、令和は低迷する時代、周りはその成功体験に囚われた愚者の群れ。


 その群れを率いるには強力なリーダー、世界をたった一人で作り変える天才の登場が渇望された。


◇ ◇ ◇

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