【第七回】 太陽と月の二人

 今回は、津川肇 様の「太陽と月の二人」をレビューします。


 作品はこちらです↓


 https://kakuyomu.jp/works/16817330658467508387



 それでは、読んでいきましょう! よろしくお願いします!



 ***



 「太陽と月」という対照的な二人の物語でしょうか。


 タグや紹介文には「相棒」とあります。この「相棒」が鍵となりそうですね。



 ***



【一話目】Prologue 太陽の戦士


 いきなりの変身シーン! 煌びやかでスピーディーな変身ですが、色やアイテム(装飾品?)のこだわりが感じられる描写ですね。“彼女”の仕草もかわいらしいです。


 視点は“彼女”を見ている誰かですね。そして“彼女”のことをよく知っている様子。


 これから戦闘が始まる予感……


 


【二話目】1 煌めく太陽の石


 この作品は「Chapter」が設けられており、前回のエピソードが「Chapter0 太陽」で、今回から「Chapter1 変身」です。

 変身ものというと、普段は何気ない日常を過ごし、突発的な事件などが発生したときに一気に盛り上がるというのが見どころですよね。この作品はどう展開していくのか楽しみです。



 “私”の沈んだ気持ちがよく伝わります。せっかく用意したものが活躍する間もなく取り残されることってありますよね。

 「今日のために買った服」、なんだか前回の変身したときの格好に似ているような……? 何か関係がありそうです。



 “私”改め永理えりの持つ石、代々受け継がれるこの石の正体とは。


 「世の理に外れるようなどうしようもないことが起きたとき」という母の言葉ですが、小さい子に話すには少し難しい言葉かなと思いました。ただ、“小さいころは意味が分からなかったけれど、今になって思い返すと……”という展開なら問題ないのかもしれません。



 石が意思を!?

 ……くだらない洒落は捨て置いて。

 退屈な日常からの脱却。そして新たな世界へ――という展開ですね。




【三話目】2 石に誘われて


 永理は行動力がありますね。興味があること、好きなもののためなら時間を惜しまず突き進む性格なのでしょう。


 でもそれが災いして、物騒なことに巻き込まれそうになっていますが……

 カフェの例えが女性らしくて良いですね。



 考えなしに行動して後悔する。それでも希望を抱いてまた首を突っ込む。そんな自分に嫌気がさす永理ですが、今回は後悔しない選択であってほしいですね。




【三話目】3 路地裏での遭遇


 石の言っていることがコロコロ変わりますね。理解するのに少し時間がかかりました。

 「……巻き込もうとして、すまなかった」とあるので、石が勘違い(?)をしていたということですね。

 永理が迷いなく走り出したので、石が“永理が事情を知っている”と思い込んだという解釈で合ってるかな……?



 目の前の非現実的なことに考えを張り巡らせながらも、バイトのことを気に掛ける永理。個人的にこういう性格のキャラ好きです。



 人型の「獏」!? 私が初めて出会うビジュアルですね。不気味すぎる……


 なんとなく永理の立場というか、境遇がわかってきた気がします。この状況は必然のものなのか、気になります。



 獏の醸し出す雰囲気はどこかダンディで、発せられる煙の色や「砂糖菓子のような甘い香り」はファンタジックですね。この男(?)の世界に引き込まれます。




【四話目】4 変身

 

 「~今日のことは忘れてしまえばいい」とありますが、ここは断定よりも推量にした方が良い気がします。「いい」と言い切ると、じゃあそうすればいいじゃんとなるので、本心である「何も見なかったふりをするなんてきっと夢見が悪い」を強調するためにも、断定を避けるべきだと考えました。



 ついに冒頭でもあったあの変身シーンですね。やはりデザインはデート用のコーディネートを模したものだったんですね。変身のテンポの良さと美しさが好きです。



 変身したら強気になれる、ありますよね笑 

 あとは最初から強いのか、戸惑いつつ戦うのか、永理の能力も注目したいポイントですね。

 

 どんな展開になるのか、面白くなってきました。




【五話目】5 紫煙の夢境


 適当に会話して思考を巡らせる作戦、いいですね笑

 緊張感がありつつも、セリフでは緩い感じがあり、そのバランスが癖になります。



 化け物の不気味さと不快さが伝わってきます。永理の一人称視点だからこそ、その感触がはっきりと表せていると思います。



 逃げる女性を見て安堵する永理。とても利他的ですね。ヒーロー(?)に変身したことでその意識が強まったのでしょうか。


 「私も逃げなけれないけない」は“逃げなければいけない”の誤字ですね。


 「お互いの顔も見えないほどの濃ゆい霧だ」ですが、“濃ゆい”は方言ですので、こだわりがなければ“濃い”のほうが良いと思います。



 化け物が特殊な能力を出してきましたね。夢幻的な獏のイメージに合っていて想像しやすいです。



 地の文とセリフの間に空行があるときとないときがありますが、どういう基準でこのような書き方をされているのでしょうか。



 新体操の経験だけでは厳しそう……永理の些細な情報が小出しされていくのが面白いですね。



 石が青年に……? 彼は何者なんでしょうか。




【六話目】


 「そして、腕には黒地に銀のふちのバングル、そして首にもお揃いのチョーカーをしていた」とありますが、二つ目の「そして」は別の言葉に変えた方が良いと思います。



 香月こうげつは石の中から出てきたのでしょうか。それとも遠くからテレポートしてきたのか……? 今後明らかになると思いますが、気になりますね。



 地の文の中にセリフが入ることが多いですが、これはテンポをよくするための手法でしょうか。個人的には多用しすぎると淡々とした文章になってしまうので、どうしても流れを崩したくないときに限った使い方をした方が良いのかなと思います。



 目の前で未知の異能バトルが繰り広げられていますね。もう少し戦闘描写を多くしても良いと思ったのですが、永理の入り込む隙がないほどの速い動きだから詳しいことは描写していない(できない)んですね。一人称視点の難しいところです。




【七話目】7 二人の始まり


 永理も女の人も助かって良かった……のですが、化け物はどうなったんですか!?

 香月との決着はどのようについたのか、描写が全くないため非常に気になります。



 結局のところ、香月はどうしたかったのでしょうか。最初、永理の力を借りて化け物を倒してもらおうと考えているように見えましたが、化け物を倒したのが香月ならば永理の力を借りる必要もないですよね。それとも、永理が香月を呼び出したタイミングでたまたま事件が起こったということでしょうか。いずれにせよ、今回の一件は香月一人でなんとかなることだったような気がします。

 永理の活躍がほんの少しでもあると、今後「私だって少しは力になれるかもしれない」という気持ちが生まれるのが自然に感じられると思います。




【八話目】8 日向家と香月家


 「ワイシャツ姿の男と寝間着の女が、傷だらけで支え合いながら歩いている姿」、シンプルだけど語呂が良くて好きな表現です。


 「洗面所に向かおうとすると」の部分ですが、今二人はどこにいるのでしょうか。最後の位置情報が駅前だったので、そこからどれぐらい時間がたったのかがわかりません。「救急箱探してくるから」や、「洗面所」とあるので永理の家でしょうか。であれば、“○○(場所)で待ってて”というように、家だとわかるワードを入れることでどこで待たせているかがはっきりとするので、“家に着いた”という表現を使わなくても伝わると思います。



 香月は治癒術も使えるんですね。万能タイプって憧れますよね。



 「ローテーブルを挟んで向かい合っていた」で、ようやく二人のいる場所のイメージができました。やはり、どこで待たせようとしていたのかということが一つあるだけで、急な場面切り替えに読者が置いていかれることがなくなると思います。



 香月が何者なのかだんだんとわかってきました。

 獏の存在も魅力的ですね。夢を食べるのは有名な話(?)ですが、目標や希望まで食べてしまうようになったというのは面白い切り口だなと思いました。



 この物語は“太陽と月の対立”ではなく、“太陽と月の協力&獏との戦い”がテーマだったんですね。



 「昼の狩りがまた始まったてこと?」は、“始まったてこと?”の脱字でしょうか。



 ここまで謎が多く散りばめられていましたが、今回のエピソードでそれらのほとんどが明らかになり、とてもスッキリしました笑

 Chapter1はこの八話目で終わりなので、ひとまずの情報の整理ができてから次の展開へと読み進められるので良いと思います。



 第一章までの感想をご希望とのことだったので、ここまでで終了とします。



 ***



 総括です! 永理の生き方に共感できるところがあったり、あるあるを取り入れたりと、地の文でクスっとさせてくれるような、細かいところにもこだわりが感じられる作品です。


 こだわりといえばまだ登場回数が少ないですが、変身シーンや敵である獏の描写などが丁寧で、色彩・装飾品・香りといったイメージしやすい表現が素敵です。


 一話の文字数は少なめなのでテンポよく読めますが、状況把握に時間がかかってしまうことが何度かあったため、もう少し情報のボリュームを増やしてみるのもありなのではと思いました。



 八話目までだとまだ永理の能力や、おそらく一番の見どころである太陽と月の協力が描かれていないので、これからどんどん物語が加速していくのでしょう。

 「相棒」と呼べる関係性も築けていないですし、ようやく準備が整ったという感じですね。



 ここまででの星は2.0です。Chapter1での永理の活躍がもう少し見たかったです。外見の描写はわかりやすいので、位置情報や展開の描写を濃くすると映像として全体が繋がるようになるかもしれません。



 

 今回は以上になります! ありがとうございました!




 参加作品のその後や、途中までしか読んでいない作品は、企画が終わった後にゆっくりとお邪魔するかも(断定はできませんが……)。

 また、本気の読み合い企画第二弾も落ち着いたらやるかもしれないので、そのときはまた遊びに来てください。


 残り2作品で企画は終了します。(一応ラスト一枠ありますがさすがに参加者は来ないと思う)

 すべてのレビューが終わった後に今回の企画をやってみてのあとがきを書こうと思いますので、興味があれば覗いてみてください。



 今日は七夕ですね。特に何もすることはないですけどね笑

 笹の葉のように薄い言葉ですが、皆さんの作品が良いものになることを願っています。

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