ニルリティ/高木 瀾(らん) (2)
秋に死んだ知り合い……と言うか事実上の戦闘術の師匠……がオーナーだった駅ビル内のうどん屋「玄洋」では、冬限定メニューが始まっていた。
「さて……牛すきうどんと、水炊きうどん、あと鶏すきうどん……どれにすッかな? どれがオススメだ?」
「牛すきうどんだと……黒毛和牛より肥後
「お前、霜降り肉に親でも殺されたのか?」
「たっぷり食べたいんなら、赤身の方がいいだろ」
そんな事を話しながら、食券を買って席に付く。
「水炊きの方が良かったかな?」
先月まで、いわゆる「関東難民」向けの人工島「NEO TOKYO」で暮していた
「ところでさ……お前の話の通りなら、お前の親父さんの一族の本家の息子ってのは、何で、途中で修行から脱落したんだ?」
「ああ……それか……。あたしなんて、そこそこ程度の『魔法使い』に過ぎねえけど……その『そこそこ程度』になんのも結構大変なのよ」
「どう言う事だ?」
「『魔法使い』系に必要な能力とか素質ってのは、いくつも
「なるほど……」
「なんつ〜かね……スカした横文字で言うなら『セルフ・コントロール』ってヤツ?……それが出来ないと、どんなに力やセンスが有っても駄目。力だけ有っても、センスみて〜なのが無いと駄目。その正反対も駄目。あたしの師匠はマシだったからいいけど……修行方法は超体育会系なのに、脳味噌まで体育会系になったら、はい、脱落決定、なんて
「俗に『魔法』で一括りにされてる割には……武術とかの修行に近い気がするな……。私がやってた格闘技なんかの修行も、そんな感じだった」
「ま……それに近いかもな。知性が魔法に重要な能力ってのは、ファンタジーRPGの中だけの話……多分だけど」
「そう言えば……日本の伝統武術には、密教や修験道と関わりが有る流派も少なくなかったな」
「水炊きうどん大盛り、肥後
「あ、どうも」
「それで大丈夫です」
やがて、うどんをすする音に、肉や野菜を食べる音。
「
「問題は何だったんだ?」
「視えなかった。何も」
「へっ?」
「気・霊力・霊その他モロモロ……お前と同じだよ」
「ちょっと待て……力だけは有るのに、その手のモノを認識出来ないとなると……」
「そう、力は半端ねえのに……肝心の自分の力を感じ取る事が出来ねえ……。つまりは……ええっと……何て言やいいかな……ああ、そうだ、目隠しされた状態で車運転するよ〜なもんだ。発車させるまでが一苦労だし……万が一、発車させる事が出来たら……どんな事故が起きるか判ったもんじゃねえ」
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