第10話・夢
自我と記憶がはっきりしだした3歳の頃から俺の人生は修羅であった。
毎日血を吐くような地獄の訓練をした。四肢が欠けるのは当たり前、命の危険に襲われたことも一度や二度じゃない。
いきなり一人で格上の悪魔相手に戦いを強いられたこともあった。
常人ならば死んで気が狂ってしまうような訓練を毎日欠かすことなく続けさせられて、俺は14歳という若さで超級陰陽師まで上り詰めた。
それでも俺は誰にも褒められなかった。むしろ俺を遠ざかって怖がった。
昔はお母さんが俺を褒めてくれた。
でも俺が6歳の時にとある悪魔との戦闘に敗れて殺された。
そういえば、それからだったかもな父の特訓が厳しくなったのは、今でこそ分かるがもしかしたらお母さんの様に俺を失いたくなかったかもしれない。
・・・・・・・・・
でも、俺は褒められたかったな。
認められたかったな。
皆から認められて褒められたかった、俺を知って欲しかったな。
いや、違うな。一人だけ俺を褒めて認めてくれた人がいたわ。
イト・・・俺の幼馴染で俺の初恋の人で結婚を約束した相手。
俺のせいで死んでしまった俺の最愛の人。
・・・・・・・・・・・・
「俺の夢か・・・」
「ご主人様大丈夫ですか?」
「フィーナ・・・、いや。何だ俺のやりたいこと分かったよ」
「本当ですか!」
「ああ。俺は俺の名前を広めて見せる。皆から認められて褒められるようなそんな人になりたい。そんでもって、大切な人を皆守れるようにもっと強くなってみせる」
これが俺の夢だ。いや目標だ。
「ご主人様ならきっと出来ます。でも本当にそれだけですか?」
「それだけ?」
それ以外にも俺の夢があるってことか?
「はい。私達サキュバスは性交を通じて相手の気持ちから深層心理まで全てが分かります。そこから感じたご主人様の夢は他にもあると思いますよ」
「いや、えっと・・・あるかな?」
「はい。あります。自分の心に正直になってください。この夢は私が言うよりもご主人様で気が付いた方が絶対に良いですから」
夢・・・他にもある夢。
皆から認められて褒められる、承認されると、皆を守れるくらい強くなる以外になにがある。
ナニが・・・ナニ・・・?
ふとフィーナを見る。ついさっきの出来事を思い出す。
あの激しい性行為を・・・とても良かったな。
ああ、なるほどね。分かったかもしれない。分かってしまったかもしれない。
俺の本当の夢。
ある程度成長した頃に生まれた俺の夢。
健全な男子ならば世界最強に並び誰もが一度は見てしまうであろう夢。
倫理的にでも法律的にも難しいし、叶えるのはほぼ不可能といっても良いくだらない夢。
そう、ハーレムだ。
「そうか、俺はハーレムを築き上げたかったんだ。いやただ単純にハーレムを築き上げるだけじゃない。色んな女性にモテて色んな女性を抱いて、色んな女性にチヤホヤされて、もてはやされたかったんだ。
そうだ。これが俺の本当の夢だ」
「素晴らしいです。ご主人様。そうです。それがご主人様の心の底から願う夢です。想いです。願いです。私はその全てを肯定しましょう。
さあ、ご主人様一緒に夢を叶えて自由に生きましょう。
ご主人様は今までそれ相応の苦労を努力をされました。これからは幸せになる番ですから」
「ありがとう。フィーナ。本当にありがとう。
そうだな。俺は自分の思うがままに自由に生きてみるよ。
何だがとっても清々しい良い気分だ」
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