第4話  ガラスの靴

シンデレラの魔法で送り出された3人を乗せる馬車が、都城に到着した。馬車にもシンデレラの魔法の粉が降り注いでいた為、かなりの注目を浴びての入場になった。


 『まあ、素敵な馬車ね。一体どこの方かしら?…。侯爵家よりも素敵ね。最近では見たこともない馬車ね。』などという会話が漏れ聞こえてくる状態だった。


 それにもまして、3人が降り立つと、煌めいて見えた為、ため息の声さえ上がった。


「お母さま…。なんだかかなり、注目されていません事?」

「そ…そうよね。でも、シンデレラが折角、素敵に見えるように魔法をかけてくれたんだもの満喫しなくては、意味がないわ。さあさ、ヘーデル、カーラ。ダンスが始まるころよ。お相手を見つけていらっしゃい。」

「はい。お母さま。」


 2人は、嬉しそうに中央ホールへと歩き出した。


 ヘーデルは、ふと視線を感じそこに目をやると、明るいブラウンの髪色に青い瞳の男性が、真っ直ぐ見つめてくれていた。ヘーデルが軽く会釈をすると男性は、にこりと笑って近づいてきて、『踊っていただけますか?』と声を掛けてくれた。


 声を掛けられて、馬子ついているヘーデルをカーラがそっと後押しする。


「ヘーデル。早く行って来て。折角申し込まれたのよ…。早く早く。」

「えっ…。あ、うん。行ってくるわ。カーラ。」

「うん。私も誰かと踊れるように頑張るわ。」


 そう言って、その場を離れたカーラだったが、なかなかお相手は見つからない。喉が渇いたので壁際によって、グラスに手をやった時だった。同じものを取ろうとした男性と取り合う形になった。


「ごめんなさい。どうぞ。」

「いえいえ。レディ。貴方が先でした。私の方こそすみません。」


 この会話をきっかけに、カーラもこの男性からダンスを申し込まれ、ヘーデルもカーラも舞踏会を楽しむことが出来たのだった。


 3人は、とても楽しい時間を過ごしていたものの、時間だけは、かなり気になっていた。シンデレラが言った時間制限だ。その時だった、12時を告げる鐘が鳴り始めた。


「お母さま・・・カーラ。やっぱり帰りましょう。」

「ええ。そうね。何が起こるか分からないもの…。」

「分かったわヘーデル。お相手に別れを告げて来る。」


 3人は、それぞれ、楽しく過ごした相手に別れを告げて、慌てて、階段を下り始めた。


「待って。まだ、呼び名しか、聞いていない。ヘーデル。」

「ごめんなさい。もう行かなきゃ。ルド。」

「ヘーデル…。早く早く。何か変よ。馬車に乗って。」

「うん。カーラ…。あっ。」


 馬車に飛び乗り、出発した瞬間にヘーデルは、靴が片方ないことに気づいた。


「お母さま。ごめんなさい乗り込むときに靴を落としてしまったわ。」

「仕方ないわね。もう片方は、記念に飾っておきましょう。どうも、靴だけは魔法が解けないみたいね。」


 母のこの言葉で、ヘーデルもカーラもキラキラしていたドレスが、普通に戻っていることにようやく気づいたのだった。


「あの時、出てきてよかったわね。」

「ふふふ。本当に。なんかそんな予感あったものね。」


 3人で顔を突き合わせて、楽しかったと言いながら笑いあい帰路に着くのだった。


 その頃、屋敷では、シンデレラと魔王フェリペとの攻防がまだついておらず、間に入った、執事のダニエルが妥協点を探して話し合っていた。


「とにかくもうすぐ、お母さまたちも帰ってくるのよ。貴方みたいな男性がいたら、ビックリするんだから今すぐ、帰ってください。」

「我は、契約履行したいだけだ。それが終われば帰る。」

「だから、その契約はもう、いらないって言ってるでしょ。」

「フェリペ様とりあえず今夜は、お帰り頂いて、また、後日…。」

「そうよ。」

「我は、お前たちにしか見えないんだから関係ないだろう。」

「えっそうなの。それでも、嫌よ。なんで私の部屋にずっといるのよ。」


 言い合いが終わらない中、3人を乗せた馬車が帰って来た。


「ただいま!!シンデレラ。シンデレラ?」

「もう寝たのかも。静かにしましょう。お母さま…。」

「そうね。じゃあ。明日の朝、お礼と今日のお話をしましょう。」 


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