全力女子との登下校 〜私はいつでも全力だよ?〜

たっきゅん

第1話 登校①

 通学路には何人かの登校する学生、その雑踏の中でも聞き間違えることのない聞き慣れた足音が少し早足で近づいてくる。


 それは全力女子な幼馴染のもので、これはキミと登下校する物語


「おはよー。今日も晴れて良かったね。って、なんでそんな嫌そうな顔してるの? あ、分かった! 今日の体育が嫌なんでしょー」


「ごめんごめん、そんな沈まないでよ。ほら、私も運動はからっきしだからさ。けど、やるからには全力だよ? それがマナーってやつだもん」


「そうだ。あそこの歩道橋まで競争しようよ。勝った方が帰りにジュース奢るってことで」


「ベタって? それがいいんでしょ。青春って感じで」


 楽しそうにゆっくりと二人は並んで歩く


「若いなって、何を年寄りみたいなことを⋯⋯、え、カバン持ってくれるの? ありがと───って抜け駆けすんなー!」


 必死に後を追う足音が響く


「はぁ、はぁ、はぁ⋯⋯。私の負けかー。キミ、やっぱり足早いから自信持ちなよ。背中を追っかけたけど距離が縮まる気がしなかったもん」


「そういえば昨日のアレ、凄かったよねー。バシュッ! って爆破して、あの芸人さんの顔、っぷ、あはは。思い出しただけで笑っちゃう」


「え? うそ、キミはまだ観てなかったの!?ごめんごめん。───けど、バラエティー番組で良かったよ。もしドラマだったら盛大なネタバレだね」


 よくある他愛もない話での穏やかな時間


「一緒に観れたら良かったって? ⋯⋯そういうところだぞ。あー、もう! こんな美人と登校できるなんて役得なんだぞ、キミは」


「ちょっと、頷かないでよ! 恥ずかしいじゃん。───けど、ありがとう」


「言葉にしないと伝わらないこともあるからさ、キミはもっと思ったことを口に出した方がいいよ。私はその方が嬉しいし」


 少し先へ行き、振り返りながらの笑顔が眩しい


「そういえば、こないだの小テストは自信あるんだー。今日の授業で返ってくるよね? 点数、勝負しようよ」


「何よ、またキミが勝つって?そんなのわからないじゃない」


 "勝負"と言ってくる時の表情は実に生き生きとしていて


「なら勉強を教える必要はないなって、そんな殺生な〜。だけど私だってキミに教えてもらったことは復習して忘れないようにしてるんだよ」


「キミに教えてもらったところ以外はどうかって? ダメね。頑張って覚えようとはするんだけど公式の意味がわからないわ」


 胸を張ってわからない宣言をされた。


「授業を聞いていればわかるだろ? わからないわよ。これでもちゃんとノートをとってはいるのだけど⋯⋯、先生の言っている意味がわからないの。けどキミは教え方が上手いし、キミに教えてもらったところなら私は間違えない自信があるの」


「だから、ね。ちゃんとキミのおかげで点数が上がったのを期待して欲しいな」


 少しだけ困った表情からのドヤ顔、そして期待してくれてるよね? と目が訴える。


「え? 勝負に乗ってくれるの? やったー! それじゃあ、罰ゲームはまたジュースを奢るで」


「キミが勝ったらジュース2本だね。飲み切れるかな〜? あはは」


 そして、楽しそうに罰ゲームを提案してきた。


「大丈夫だよ、私が勝つから。だって問題の全部、キミが教えてくれたところだったもん」


 その言葉は"絶対の自信"で溢れていた。

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