いじめられた俺、スキル《VRの身体》で実質無敵になったのでモンスターのヘイトを買いまくる簡単レベル上げを開始します~ダンジョン系Vtuberとして配信したらバズって俺をいじめた奴がファンになってて草~
ある中管理職@会心威力【書籍化感謝】
第1話 ヘイトテイカー
「やっぱり嫌だって! だから! ダンジョンなんて!」
「大丈夫大丈夫、何かあれば俺が何とかするって言ってるだろ?」
「それが、信用できないから俺は――」
「いい加減にしろよこのクソ陰キャが。さっきまで大人しかったのに急に喚きだしやがって。これ以上逆らうなら明日からお前の席ねーから」
「そんな……」
「ははは! 分かったらさっさとついてこい。いいや……ついてきなよ、影山君」
教室の隅でラノベ読んで、行事で迷惑かけないようにして、趣味の動画配信で数人のファンと話す。俺の高校生活それで良かったのに。高望みなんて一切してないのに。
まさか荒井君みたいな超が付く不良生徒が俺なんかにちょっかい掛けて来られるなんてどれだけ運が無いんだよ。
しかもダンジョンって……。
一応俺たち高校生でも同意書にサインすれば侵入はできるけど、死亡率は5割とかだったような。
俺みたいなのが潜れば絶対殺される。
スキルとかレベルとかステータス、パラメーターとか普段の生活とは全く違う要素が顕現するって言うけど、それでも……。
「それではお気を付けて行ってらっしゃいませ」
「はい! 行ってきます! 頑張ろうな影山君」
「うん……」
大人にだけいい顔して、何も問題なんて無いように影山君は笑顔を浮かべた。
その笑顔が俺にはどうしても『逃げたらわかってるだろうな』と言っているようにしか見えない。
怖くて怖くて仕方なくて、さっきみたいに勇気を振り絞って抵抗する気さえ起きなくて……俯き震えながらもいざとなれば流石に荒井君が助けてくれると信じてダンジョン1階層へ進む。
「つい、ちゃった……」
「やっぱりこの時間は人が全然いないな! モンスターも狩り放題だぞ!」
ダンジョンといえば、といったような薄暗い洞窟。
壁には辺りを照らすようにキラキラと光る石が散らばっていて、案外明るい。
「ねえ、もうついてきたんだから俺は必要ないでしょ? 俺、戦い方なんてわかんないよ」
「いいんだよ、影山君。……。今はいいか。お前はそこにいるだけで十分。それだけで……俺のスキルを十分に発揮できる」
「え?」
「――ヘイトテイカーを……ギフト」
俺の身体の周りに薄っすらと光が灯る。
すると岩場の陰からスライムが大量に顔を出し始めた。
もしかしてこのスキル……俺にモンスターが群がるようにするスキル?
荒井君は俺を餌にするためにダンジョンに俺を、どうでもいいやつを連れて来たんだ。
「ぷぺ」
「や、嫌だ」
「ぷぺ」
「く、来るな! 嫌だ! 死にたくない! 死にたくない!」
「大丈夫だ! ポーションは持ってきてるから、だからいっぱいいっぱいモンスターを引き寄せて、存分にやられてくれ! あっはっはっはっはっはっはっはっはっ!」
逃げようとする俺を荒井君はその長い脚で蹴り飛ばした。
そして尻もちを着くとその瞬間にスライムたちは一斉に襲いかかってきて……全身を覆い隠して食べてしまおうとする個体、服の中に入り皮を食おうとする個体、口や鼻などの穴から体内に入ろうとする個体、それらに俺は好き放題されていく。
そんな俺を笑いながら荒井君は群がるスライムを安全に焦らすように1匹1匹丁寧に殺し、俺のHPが少なくなればポーションを垂らした。
生き地獄。
だんだん身体の感覚はなくなり、死んだほうがいいとさえ思い始める。
こんな身体もういらない。死にたい。でも死ぬのは怖い。
だけどやっぱりずっと痛いだけの身体なんて……もう嫌だ。
痛くない、痛くならない身体が欲しい。
欲しい。欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい。
痛くない身体が欲しい!!
『影山久志(かげやまひさし)へのダンジョン初侵入サービスとしてユニークスキルを1つプレゼント致します。スキル:【VR身体】が新たにステータス欄に追加されました。このスキルは地上にいても発動できるスキルで――』
頭の中に響いたアナウンス。
これが有名なあのダンジョンのシステム。
本当に、まるでゲーム、だ……。
そうして俺はアナウンスの内容を最後まで聞くことなく、意識を奪われたのだった。
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