うちのピンクと敵の女幹部が互いの正体知らずに付き合ってるんだがレッドの俺は一体どうしたらいいんだ

藤ともみ

第1話 ライトレンジャーVSゴクアーク団幹部アクージョ

 俺はライトレンジャーのレッド、赤木あかぎひかる

 平和を脅かすゴクアーク団の魔の手から人々を守るため、仲間たちと一緒に戦っている。クールな頭脳派のブルー、大食いでパワー型のイエロー、そして、回復役のピンクだ。

 今日はゴクアーク団があやつる怪獣が動物園で猛獣の檻を破壊しまくったせいで、猛獣が檻から逃げ出して大変なことになった。

 人々を避難させながら、ブルーの作戦でイエローの用意した肉を使って猛獣をおびき寄せ、ピンクの回復技の応用で動物たちを眠らせて安全を確保した。

 怒ったゴクアーク団の幹部、アクージョがあやつる怪獣は巨大化し、俺たちはロボットに乗り込んで、格闘の末、四人の力を合わせた必殺技で、怪獣を撃退する。

「必殺! カルテットビーーーム!」

「ギエーーーー!」

 光のビームで、怪獣は爆発霧散して消えた。

 ゴクアーク団幹部の仮面の女幹部、アクージョの悔しそうな声が聞こえる。

「くっ、小癪な……覚えてなさい! ライトレンジャー! 美しくない貴様らを、いつかこの私がすべて滅ぼしてやる!」

 アクージョが撤退し、みんなが一仕事終えた達成感に満ちた笑顔で汗を拭う。

「今日もお疲れ様! お兄ちゃん!」

 ピンクこと妹のももが、動物園のウサギを抱っこして、太陽のような笑顔を俺に向けた。我が妹ながらかわいい。

「それにしても、アクージョのやつ、ホントに許せない。わがままで意地悪で高飛車で……心が氷みたいに冷たい奴なんだわ!」

「あぁ………うん、そうだな………」

 桃の言葉に、俺は知らず知らずのうちに気が重くなってしまう。

「……お兄ちゃん? どうしたの? なんか暗いよ」

「えっ? いや、なんでもねーよ! 腹減ったな〜と思ってさ!」

「赤木さん、おなかふいたんれふか?」

 イエローこと黄島きじま菜摘なつみが声をかけてくる……って、もう食ってんじゃねーか!! いつの間に持ってたんだコロッケ!

「黄島、食べ終わってから話せよ……」

ブルーこと青山涼介りょうすけの呆れ顔に、黄島はあわてて口の中のコロッケをゴクンとのみこんでから言った。

「それじゃあ、これからあたしの家で焼肉パーティーしましょう〜!」

 黄島の家は精肉店で、焼肉屋も経営しているのだ。

「さんせーい!」

 セイギレンジャーのメンバーとの関係は良好。ゴクアーク団から人々を守る活動も順調。

 ……だが、今の俺にはひとつ、悩みがある。

 ふと、桃がスマホを取り出して画面を見つめた。その顔が、一瞬嬉しそうにほころんで、そのあと黄島を申し訳無さそうに見る

「あ……ごめんなっちゃん! わたし、ちょっと急用が……」

「あー、九条さんとのデートでしょ〜!」

 デート、という言葉に桃は目に見えて慌てだした。

「で、デートってわけじゃ……ただ、今、ちょっと会えないかな、って連絡きて……」

 もじもじする桃に青山が言う。

「なんなら九条さんもこちらに誘ったらどうだ」

「青山ひゃん、わかってないれふね、わたひたちがいたらおじゃまれふよ」 

「お前またコロッケ食べて……まあとにかく、我々のことは気にしないで良いから。な、光」

「あ、うん………」

「ごめんみんな!また今度絶対行くからね!」

 桃は申し訳無さそうに、かつ爽やかに立ち去った。

「どーします赤木さん? あたしたちだけで焼肉で良いッスか?」

「あ……いや、俺も急用が……」

「妹のデートストーカーしたら流石に嫌われるっすよ」 

「ち、ちがうよ!!」 

 図星だったので動揺する。黄島はこういう鋭いところがある。

 どう言い訳したのか自分でも曖昧なまま、俺はこっそりと桃のあとをつけた。

 果たして、桃は九条綾香……うちの学校の生徒会長で、九条グループのお嬢様と落ち合った。

「ごめんなさい桃さん。急にお呼び立てして……」

「ううん!全然!むしろ、普段綾香が私に甘えてくれることってあんまり無いから嬉しいよ。……なんか、疲れてる?」

「あ、ええ……お稽古でちょっとね」

「綾香っていつも頑張りすぎるから心配だよ。もっと自分を大事にして」

 微笑ましい光景。

 だが、俺は知っているのだ。九条綾香が疲れているのは俺達と戦った直後だからだ。……俺は、アクージョの正体が九条綾香だと気がついている。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る